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産業革新に貢献する光応用プロセス
多元技術融合光プロセス研究会、2019年度の第1回研究交流会を開催

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July, 26, 2019, 東京--7月9日(火)、産業技術総合研究所・臨海副都心センター別館(東京都江東区)において、光産業技術振興協会・多元技術融合光プロセス研究会(代表幹事:理研・杉岡幸次氏〈写真〉)の2019年度第1回研究交流会が開催された。
 同研究会は光源、光学系、材料や構造、形態、物理化学反応、前後工程、制御技術や計測・分析技術など、これまで出会うことのなかった多元的な技術を効果的に融合し、有効な光プロセス技術を開発するための議論の場を提供することを目的に活動を続けており、年度ごとに5回、斯界のエキスパートを招いて講演を中心とした研究交流会を開催している。
 今回の研究交流会では、ImPACTプログラムで開発された超小型レーザ(会場でも展示)を始め、光応用プロセスに関する注目の先端技術や5月に広島で開催された国際学会「LAMP2019」の報告などが行われた。

注目の光応用プロセス
 挨拶に立った代表幹事の杉岡幸次氏は冒頭、6月24日に亡くなられた東大名誉教授の渡部俊太郎氏に対して哀悼の意を捧げた。渡部先生は、この3月にも同研究会において講演をされたそうだ。杉岡氏は同研究会の現況紹介の中で、会員数は昨年に比べ若干の増加を見ていると述べ、今回の研究交流会にも61名の参加があったことを紹介した。

 講演の最初は、佐野雄二氏(分子研)による「ImPACTにおける超小型レーザーの開発とTILAコンソーシアムによる産業展開」。 内閣府のImPACTプログラムで開発した超小型・高出力サブナノ秒Nd:YAGレーザの概要と製品化状況、応用技術・システムの開発状況が紹介された。
 分子研の開発した高出力マイクロチップレーザは、レーザ媒質と冷却基板の常温接合技術によって排熱問題を解決、20mJを超える出力を達成した。浜松工業技術支援センター内のプラットフォームでユーザーが利用できるようになっている。
 佐野氏は、応用としてTHz波を用いた危険ガス検出システムなどを紹介するとともに、この4月に分子研に設立された「小型集積レーザー(TILA:Tiny Integrated Laser)コンソーシアム」と、その取組みについても紹介。コンソーシアムにおける産学官金(金融機関)連携によるレーザ技術の産業展開・イノベーションについて解説した。コンソーシアム会員は現在18社で、レーザ加工、THz、接合技術などに関するワーキンググループを作って、基盤技術開発やシステム化、実証を行っていくという。

 続いて登壇した奈良崎愛子氏(産総研)は、「LAMP2019報告」の中で、この5月に広島で開催されたThe 8th International Congress on Laser Advanced Materials Processing(LAMP:レーザ先端材料加工国際会議)の概要とレーザ精密微細加工に関する注目の発表を紹介した。
 会議を構成する二つのシンポジウムの内、ミクロ加工を扱うLPM(レーザ精密微細加工国際シンポジウム)では、「Laser synthesis and processing in liquids」の口頭発表が最多の22件(平衡プロセスでは難しいコア‐シェル粒子や合金粒子の合成報告が多数)、続いて「Ultrashort pulse laser processing」が17件(高出力超短パルスレーザの産業応用を見据えた光パルスエネルギー/高繰返し、バーストモードでの加工挙動に関する報告が増加)、「Direct writing & LIFT」が10件(次世代AM技術として金属原料、インク材料、タンパク質担持材料のレーザ転写(LIFT)が報告され、技術トレンドは堆積サイズ・位置の高精度化など)という順になっている。
 一方、マクロ加工を扱うHPL(高出力レーザ加工国際シンポジウム)では、レーザ光の強度分布や波長を変化させて、溶接のスパッタ低減や高品質化に対応する流れが主流であったとのことだ。

 休憩を挟んで、「ディスプレイ製造用レーザーアニール技術の現状と将来」を講演した後藤哲也氏(東北大)は、スマートフォン等のディスプレイ駆動素子の回路製造では、ライン状エキシマレーザを用いたガラス基板上のシリコン薄膜結晶化アニール(ELA)技術が欠かせないものになっていると指摘。一方で、駆動素子の特性にばらつきが発生してしまうことや、大型ガラス基板に対応できないことが課題であると述べた。
 後藤氏は、第10世代の大型基板にもELAが可能な、TFT領域のみに照射する局所レーザアニール(SLA)技術を開発、スキャン方向やスキャンピッチ等のパラメータ設定の自由度が高いことに加え、低温ポリシリコン(LTPS)TFTの欠点である特性ばらつきの原因となる結晶粒径制御においても、従来のELAに比べ有利だとして、今後のディスプレイの高性能化や生産性向上において重要な技術になると述べた。

 飯島康裕氏(フジクラ)は、「パルスレーザー蒸着法(PLD法)を用いた高温超電導コーテッド線材の開発状況」の中で、高温超電導の線材化と薄膜技術の進展について解説した。
 PLD法は、GW/cm2級のパワー密度で紫外パルス光をターゲット上に集光する精緻な組成制御を要する多元系酸化物薄膜の蒸着法。一方、希土類系超電導体(RE-Ba-Cu-O)は材料学的要請から全長に渡って単結晶膜に近い構造でフレキシブルな線材の実用化が期待されており、PLD法はその目的に適した製法として進歩してきた。
 飯島氏は、PLD法を中心に気相成長技術を用いた希土類系超電導線材の量産技術の展望を紹介するとともに、超電導材料応用として現状で9割以上を占める医療用MRIマグネットの他に、リニア新幹線車載コイル、強磁場NMR、小型核融合実験炉、液体ヘリウムフリーのMRIコイルなど、今後の展開が期待される応用事例を紹介した。

 伊藤佑介氏(東大)は、「ガラスの局所高電子密度化による超高速微細精密レーザー加工」の中で、電子機器や光学機器の高性能化・低コスト化実現のため、ガラス材料の微細加工を高速かつ精密に施す技術が求められているとする一方、フェムト秒レーザ加工はガラスの微細加工手法として注目されているものの、加工能率の低さと精密加工の難しさが課題だと指摘した。
 伊藤氏は、フェムト秒レーザの多数パルス照射時に生じるクラックの形成は、応力波通過時の引張応力によって形成されることを発見、フィラメントのみに選択的に透過波長の連続波レーザを吸収させるフェムト秒レーザ誘起加工法を開発して、従来手法の5,000倍以上の加工速度とクラックのない精密加工を実現した。また、加工メカニズムにおいては約2,250℃が光吸収の閾値温度になるとして、この温度を超えるとダイナミックに加工が進展すると述べた。

 最後に登壇した藤本准一氏(ギガフォトン)は、会員からの話題提供として「ArF Immersion リソグラフィ用レーザ GT6XAシリーズの紹介」を講演。その中で「エキシマレーザ技術を指導していただいた」と、亡くなられた渡部先生に哀悼の意を捧げた。
 2005年に製品化された同社のインジェクションロック式のArFエキシマレーザは、市場に広く受け入れられ、2008年に第1回のレーザー学会産業賞を受賞している。同社のGTシリーズはその後も改良を重ね累積稼働台数は500台を突破、今年第11回のレーザー学会産業賞を受賞した。藤本氏は、その歴史と最新技術、将来の技術動向を解説した。

次回の研究交流会
 講演終了後、場所を移して行われた交流会にも多くの人が参加して、講師とのディスカッションや会員の相互交流も賑やかに行われた。なお、次回の研究交流会は8月30日(金)、建設分野へのレーザ応用やAMなどをテーマに、会場は同じく産総研・臨海副都心センター別館で開催される。詳しくは下記URLを参照していただきたい。
http://www.oitda.or.jp/main/study/tp/tp.html
(川尻 多加志)