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最先端のフォトニクス技術・製品が一堂に会したAll about Photonics 2018

November, 22, 2018, 東京--10月17日(水)から19日(金)の3日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)において最先端フォトニクス技術・製品総合展示会「All about Photonics 2018」が開催された。本展示会は、光デバイス・レーザ関連製品が一堂に会する「InterOpto 2018」と深紫外市場とLED応用技術・製品展「LED Japan 2018」、さらに今年からスタートした、画像処理・イメージング技術展「Imaging Japan 2018」の3つの展示会で構成されている。
 展示会では、車載・自動運転からメディカル・バイオテクノロジー、ロボット、航空宇宙、農業までの広範なアプリケーションに必須のフォトニクス関連技術・製品が一堂に集結、同時開催の「MEMS SENSING & NET WORK SYSTEM 2018」と「CEATEC JAPAN 2018」との相互入場によって、最新のフォトニクス技術・製品・アイディアを幅広い産業界に向けて発信できる展示会となっている。
 主催者発表によればAll about PhotonicsとMEMS SENSING & NETWORK SYSTEMの合計で294社、297小間の出展があり、来場者数は3日間の合計で4,570人となった。なお、この数字はCEATEC JAPANからの来場者数を除いたもので、会期中はCEATEC JAPANからも多くの人々が会場を訪れていた。

多彩なセミナー
 期間中は、光産業・技術関連の多彩なセミナーも開催された。
 恒例の光産業動向セミナーと光技術動向セミナーの他、今年の特別セミナーのテーマは「AlN基板上265nm深紫外LEDの実用化に向けた取り組み」であった。この他にも、テラヘルツビジネスセミナー、次世代自動車セミナー、医療×最先端技術セミナー、光×製造×IoT未来技術セミナー、最先端Imagingセミナー、初心者向けレーザー講習セミナー、JLEDS(LED照明推進協議会)セミナー、注目される光技術セミナー、応用物理学会フォトニクス分科会セミナー、産総研・北陸プロジェクトセミナー、レーザー輸入振興協会(JIAL)セミナー、出展社プレゼンテーション、スペクトラ・フィジックスレーザー微細加工ソリューションセミナーなど、盛りだくさんのセミナーが開催された。MEMS展関連でも各種シンポジウムやセミナー、研究開発プロジェクトの成果報告会などが開かれ、4展示会の合計で130ものセッションが行われた。

日本の光産業動向
 最終日の19日(金)に行われた光産業動向セミナーでは、2017年度の光産業動向調査を基にした光産業全体と各分野別の全出荷額、国内生産額、市場動向が報告された。また、今年の特別講演では、データセンターの最新動向が取り上げられた。
 光産業技術振興協会・副理事長兼専務理事の小谷泰久氏は、「主催者挨拶」の中で、光産業の全出荷額と国内生産額は増加傾向にあるとした上で、太陽光発電は相変わらず調整局面にあって下がってはいるが、残りの光産業はおおむね好調で、底は脱したのではないかとの見方を示した。
 次に「光産業全体の最新動向」を講演した青山学院大大学院法学研究科教授の菊池純一氏は、日本の光産業全体の最新動向とIOA(Inter­na­tional Optoelectronics Asso­ciation)の報告の中から、世界の光産業の最新動向を解説した。
 菊池氏は、光産業の全出荷額において次第に光部品の占める割合が上がってきていることを取り上げ、サプライチェーンの多様化の中で日本の光部品の足腰は強くなってきており、産業構造の再構築が行われているのではないかと指摘。2017年度で全出荷額が上がる見込みが示された点についても、決して瞬間風速で上がったのではないとして、その上で2020年の東京五輪後をどうするのか、そろそろ考えなければならないと述べた。
 菊池氏は、2010年代前半から後半にかけての構造変化期が終わり、光産業を始めとして日本の産業の足腰ができつつあるのではないかと述べる一方、太陽光発電分野を除く日本の光産業規模がここ数年拡大していないのはキャパシティ・ビルディングが不足しているからだとして、足腰の強くなった光部品を起点にしてキャパシティ・ビルディングを行う必要があるが、これを民間企業だけで行うのは難しく、政府が参画して指導することが必要だと述べた。菊池氏は結論として、光産業は底打ちをしてプラスに転じており、そろそろ次のステージに入るのではないかと講演を締めくくった。
 「情報通信分野の最新動向」を講演した茨城大工学部教授の那賀明氏は、情報通信分野の全出荷額はおおむね安定に推移しているが、機器・装置は国内通信キャリアの投資抑制が続くため、2018年度も厳しい状況が続くと述べた。光部品類は2017年度の在庫調整で減少したが、光ファイバと関連部品・機器は増加する見込みで、2018年度は海外市場を中心に引き続き増加が見込まれる光ファイバに牽引されて増加すると予測した。
 「情報記録分野の最新動向」を講演したソニーストレージメディアソリューションズ・オプティカルメディア部シニア事業推進マネージャーの品川隆志氏は、光ディスク再生装置は大きな海外生産シフト期を経て、安定期に入っていると指摘、記録・再生装置は業務用が高成長すると述べた。光ディスク媒体は、高い技術が必要な多層媒体は国内生産に限定され、業務用はクラウド比率の低い中国やAI系の絶対に消せないデータやコールドデータの増加によって高成長を遂げるとした。
 「入出力分野の最新動向」を講演した東京工業大工学院教授の奥富正敏氏は、光学式プリンターとMFP(複合機)の全出荷額は若干の減少、国内生産額は大幅減少が見込まれ、海外生産比率はさらに高まり、買収による業界再編も起こっていると述べた。また、日本の大手カメラメーカーがミラーレスカメラに本腰を入れてきたとする一方、レンズ交式のデジタルカメラは高機能化・差別化を進め、これに対抗するようにスマートフォンもマルチカメラ化と画像処理で性能を飛躍的に向上させているとした。イメージセンサは、スマートフォンが市場をけん引するとともに、セキュリティカメラ、車載カメラの需要増で全出荷額、国内生産ともに順調に増加する見込みだ。
 特別講演として「集約型からエッジへ拡大と進化を続けるデータセンタのインフラとサービス動向」を講演したTAK・アナリティクス・リサーチの取締役主席アナリスト市田丈人氏は、エッジコンピューティングや新技術を高速・低コストで提供するクラウドサービスの登場によって、データセンター(DC)のアーキテクチュアが進化を求められていると指摘。オフプレミス・クラウドサービスやマルチテナントDCサービスなど、DCを利用したサービス市場動向やDCコンピュート、DCネットワーク、DCインターコネクト、DC向け光トランシーバなど、DCを支えるITインフラにおける市場動向を解説した。
 「ディスプレイ・固体照明分野の最新動向」を講演した東北大大学院工学研究科教授の藤掛英夫氏は、ディスプレイ装置の全出荷額が2017年度に増加する見込みの理由として、景気の回復、テレビの4K化・大型化による単価上昇、冬季五輪や東京五輪による買替え促進などを挙げた。ディスプレイ素子の全出荷額も増加の見込みで、固体照明分野の全出荷額は微増を見込んでいるとのことだ。
 「主力電源となる太陽光発電システムの現状と展望」を講演した資源総合システム・代表取締役社長の一木修氏は、世界では太陽光発電のコストが2セント/kWhを切り、在来型電源と同レベルに達したと指摘。2017年の導入量は100GW目前で、導入は特定地域から世界全体に広がり、パリ協定発効も追い風となって太陽光発電システムの導入は世界潮流となっていると述べた。第5次エネルギー基本計画がスタートした我が国においては、太陽光発電は自家消費および地産地省に移行、エネルギー貯蔵技術の革新が必要だとも述べた。
 「レーザ・光加工分野の最新動向」を講演したレーザーシステム・川崎研究所 所長の浅川雄一氏は、2013年度以降、この分野は毎年10%の成長を持続、2017年度の全出荷額は前年比16%増になったと述べた。ファイバレーザのシェアは増加しているが、他のレーザも出荷額は増加、各種レーザ加工装置やランプ露光装置、3Dプリンティング装置の最新動向を紹介した。レーザ・光応用生産設備は、ほぼ100%国内で生産され出荷されているが、固体レーザは海外製のレーザ発振器が多く使用されていると述べた。
 「センシング・計測分野の最新動向」を講演した東京農工大大学院工学研究院教授の岩井俊昭氏は、この分野は国内光産業生産額の約2%という規模だが、光通信を中心に、生産ラインや医療などの現場の計測機器など、生活の場における「安全・安心」を支えるシステムの基盤分野だと述べた。全体としては緩やかに成長して、IoTの推進や5G移動通信システムの導入で、関連分野は大幅増が見込まれ、「安心・安全」を支えるカメラと関連画像処理システムの成長も見込まれるとした。

(川尻 多加志)