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成長を続けるレーザ加工
多元技術融合光プロセス研究会、平成30年度の第2回研究交流会を開催

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September, 25, 2018, 東京--光産業技術振興協会・多元技術融合光プロセス研究会(代表幹事:杉岡幸次氏(理研)、写真)の平成30年度第2回研究交流会が8月30日(木)、産業技術総合研究所・臨海副都心センター別館(東京・江東区)において開催された。今回のテーマは、AM(Additive Manufacturing)や自動車への応用を始めとした「レーザー加工技術の最新動向」。参加者は多数に及び、関心の高さがうかがわれる会合となった。

成長は毎年10%
 挨拶に立った代表幹事の杉岡幸次氏は、今回の研究交流会には前回(7月)同様の高い関心が寄せられ、結果として76名もの参加申し込みがあったとした上で、レーザ加工分野の生産額はこの5~6年、毎年10%という高い成長を遂げており、光産業技術分野の中でも有望な領域であると述べた。
 次に企画趣旨説明を行った第2回研究交流会担当幹事の三瓶和久氏(タマリ工業)は、レーザ加工はメインである溶接や切断の他、最近では材料表面への付加加工(AM)や短パルスレーザの高出力化によって除去加工(アブレーション)が進展、産業適用の一歩手前まで来ていると指摘した。

 講演トップバッターは、ホンダエンジニアリングの下田章雄氏。「レーザーによる金属粉末積層技術の自動車部品用金型への適用」を講演した。同社は本田技研工業に生産設備や金型を供給しているが、形状自由度を有するAM技術を用いることで、機械加工では実現できない冷却回路を持ったアルミ鋳造金型の作製に成功、生産性向上を実現したと述べた。
 同社では金属 AM 技術の一種であるSLM(Selective Laser Melting)方式を採用しており、造形速度の高速化と造形サイズの拡大を可能にする独自のSLM設備を開発、低コスト金型製造を実現した。下田氏は、SLMのさらなるコスト削減に向けて、造形費を現状の1/5にするとともに、焼結用廉価鉄粉と合金成分微粉を混合した材料費1/4の廉価ブレンド粉末を開発して、レーザ処理によって「3D造形」と「合金化」を同時に行う技術開発を目指すと述べた。

 「最新AM技術の現状とその適用展開」を講演した三菱重工業の石出孝氏は、商品化の加速している各種バインタジェット方式を紹介。その技術ポイントはバインダ・サポート材、収縮率予測を含む造形ソフト、表面加工の3点だと指摘した。
 また、LPBF (Laser Powder Bed Fusion:レーザ粉末床溶融)方式のAM技術を各種製品に適用する上での共通的な技術課題は、粉末材料の管理技術、造形条件の設定方法とサポート材の最適設計、品質管理における造形シミュレーションと品質モニタリングだとした上で、それぞれの開発課題と解決策として、粉末管理基準の策定と粉末の低コスト化(高収率ガスアトマイズ技術)、造形条件設定プロセスの構築と造形時の姿勢最適化、造形条件最適化のためのシミュレーション技術と造形中の異常監視技術(フリンジプロジェクションによる表面状態モニタリングと溶融池温度モニタリング)などが重要との認識を示した。

 「TNGA エンジンへのレーザ加工技術の適用」を講演したトヨタ自動車の谷中耕平氏は、レーザクラッドバルブシートの採用で高速燃焼による高熱効率と高出力を両立したTNGA(Toyota New Global Architecture)エンジンを開発できたと述べた。
 レーザクラッドバルブシートは、バルブシートの小型化とポート口周辺の設計自由度を向上させ、さらに熱伝達が良くなるのでバルブ冷却性能の向上を実現できる。具体的には、半導体レーザと同軸ノズルによるツール回転システムやビーム形状と粉供給パラメータの最適化で品質確保を実現、エネルギー消費と設備占有面積を大幅に改善してグローバル生産を可能にしたという。さらに、自動車用燃料にエタノールなどを用いる国を含めたグローバルな燃料種環境下で性能を確保するため、クラッド材料をCu-Fe系合金で設計して耐摩耗性と耐割れ性を両立させ、NbC添加によって耐摩耗性と被削性を両立させた。谷中氏は、今後使用量が増える銅や軽量素材の加工、異種材料の接合などにレーザ加工の適用を期待すると述べた。

 クリーンレーザージャパンの本村孔作氏は「レーザークリーニングの最新アプリケーション2018」を講演した。同社の親会社である独・クリーンレーザーシステム社は、20 年以上に渡ってインダストリアル仕様のレーザクリーニング技術の開発・製造を行っており、世界中で1,000 台を超える導入実績を持っているという。
 レーザクリーニングの加工原理はアブレーションで、集光したレーザスポットエネルギーを汚れに吸収させて除去を行う。非常に強く短いパルスを用いているので、母材への熱影響は最小限に抑えられ、除去が終わって母材がレーザ光を反射した時点でプロセスが終了する仕組みになっている。同社の製品は、金型クリーニングや溶接・接着の前処理、酸化膜除去などの溶接後処理、オイル除去、コーティングや塗装の除去に用いられ、原子力発電所や空軍の基地、工場内設備や建築物などで活躍しているとのことだ。

 「超短パルスレーザーを適用した計測・プロセス技術の展開」を講演した名古屋工大の小野晋吾氏は、超短パルスレーザで作製した微細構造形成で発現する物質表面における摩擦低減などの効果を解説するとともに、モスアイ型のテラヘルツ波反射防止構造の作製や超短パルスレーザアブレーションによる表面炭化と炭化物ナノ粒子製作について報告。
 この他、雰囲気制御が困難なフッ化物薄膜作製に威力を発するパルスレーザ堆積法(PLD:Pulsed Laser Deposition)で作製した薄膜を用いた真空紫外光源(固体蛍光体を使用した発光素子では世界最短波長とのこと)、真空紫外光源モニタリング用光センサ、多光子吸収・多光子蛍光による発光材料評価、シンチレータと光検出器を用いた放射線検出器、LA-ICPMS(レーザアブレーション誘導結合プラズマ質量分析)による元素分析について報告を行った。

 講演の最後は、会員からの話題提供としてパラダイムレーザーリサーチの鷲尾邦彦氏が「LPM2018 第19回レーザー精密微細加工国際シンポジウム報告」を講演した。LPM2018は6月25日から28日まで、英国はスコットランドのエジンバラ・カンファレンスセンターで開催された。
 プログラム上で集計した論文件数はオーラル講演が189件(プレナリー講演3件、招待講演26件、一般オーラル講演160件)、ポスターが60件で合計249件、この件数はLPMとしては過去最大だそうだ。参加国数は24カ国、有料参加数は343名で、開催国・英国からは120名、ドイツ48名、日本43名、リトアニア31名、中国22名、フランス17名、米国からは14名が参加した。国別論文件数ではドイツが50 件、英国41 件、日本33 件、リトアニア23 件、中国20 件、フランス15 件、米国9 件、等々。
 講演数が多いセッションカテゴリーを見てみるとLaser Surface Micro/Nano Structuringが25件、Beam Shapingが13 件、LIFT(Laser-Induced Forward Transfer )と3D Micro/Nano Fabricationが各12 件、Laser Micro/Nano AMが各11件といった具合だ。オーラル講演を光源のパルス幅別で見てみると、フェムト秒が45.2%、ピコ秒23.5%で、超短パルスが多い。照射対象材料別で見ると、ガラスまたはサファイアが22.5%、樹脂が11.1%で、金属も32.9%あるが、非金属が多いという感じを受ける。鷲尾氏は、プレナリーセッションやファイナルセッション、スペシャルセッション、一般テクニカルセッションなどにおける注目の発表も紹介した。

次回のテーマはインテリジェント化技術
 講演終了後は場所を移して恒例の交流会も開催され、多くの人々が参加して会員相互の交流、講師や幹事とのディスカッションを行っていた。なお、次回の研究交流会は11月6日(火)、レーザ加工におけるインテリジェント化技術をテーマに、会場は同じく産総研・臨海副都心センター別館で開催される。詳しくは下記URLを参照されたい。
http://www.oitda.or.jp/main/study/tp/tp.html
(川尻 多加志)