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JSTフェア2018開催
科学技術によって未来の産業を創造する

生越由実氏

September, 10, 2018, 東京--科学技術による未来の産業創造展「JSTフェア2018」が8月30日(木)と31日(金)の両日、東京ビッグサイト(東京都江東区)において開催された(主催:科学技術振興機構〈JST〉)。
 この展示会は、未来の産業創造を目指してJST発の研究開発成果を一堂に集めるとともに、将来の社会・経済に貢献する革新的基礎研究事例や産学連携成果による製品化事例などを広く紹介するというもので、期間中は研究開発型企業の開発担当者や大学・公的研究機関との共同研究や委託開発を通じてイノベーションを目指す企業関係者など、多くの人々が訪れた。

サステイナブル・デベロップメント
 JST理事長の濵口道成氏は主催者挨拶の中で、世界の科学技術は今大きく動き始めており、IoTやAIによる社会構造の変化や「持続可能な開発目標(SDGs)」など、人類社会の存続をかけた発展、サステイナブル・デベロップメントが必要になっていると指摘している。
 また、JSTは時代に合致する科学技術政策実施機関として、国の科学技術基本計画に基づいた改革を着実に進めて来たが、科学技術外交、人材育成、地方創生、ファンディング(研究資金の配分)などの各種事業の実施にとどまらず、従来の運営の殻を破り、世界最先端のネットワーク型研究所にふさわしいものへと発展させるため、組織をあげて事業に取り組んでいると述べ、特に昨年創設した「未来社会創造事業」は、あるべき社会の実現に向けて明確なターゲットを見定め、チャレンジングな研究開発を果敢に推進するもので、これをさらに拡充し積極的に展開して行くとした。
 JSTは、2015年にSDGsのタスクフォースを立ち上げたそうだ。濱口氏は、その目標は単に美しい科学道徳を作るというのではなく、科学技術の果たす役割を見極めながら、全ての人にとって安全で希望に満ちた生活を、科学技術を通じ少しでも前に進め実現することだと述べている。

JSTの多彩なプロジェクト
 JSTの実施しているプロジェクトは、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)、戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)、未来社会創造事業(MIRAI)の他、戦略的創造研究推進事業としてはCREST、さきがけ(PRESTO)、ACCEL、ACT-I、ALCA、ERATO、RISTEXがあり、さらには研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)、産学共同実用化開発事業(NexTEP)、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)、戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)、大学発新産業創出プログラム(START)、社会還元加速プログラム(SCORE)、センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)など、多岐に渡る。この他にも、会場では府省・分野を超えた横断型プログラム、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)も出展していた。
 当然ながら、これらの中には光関連のプロジェクトも数多くある。ほんの一例を紹介すると、CRESTでは情報通信機構・成瀬誠氏による「光で創造する意思決定の世界:人工知能の基盤を担う次世代フォトニクス」、ACCELでは京都大学・野田進氏による「高輝度・高出力フォトニック結晶レーザ」、A-STEPでは富士ゼロックスの「超高速光リンクのための超高速面発光レーザの開発」や信州大学・井上直人氏の「紫レーザ励起蛍光分析による穀物の一粒分析・分別装置の開発」、S-イノベでは宇都宮大学・杉原興浩氏による「フォトニクスポリマーを用いた次世代光インターコネクトシステム」と石原産業の「量子ナノフォトニック情報通信技術の開発」、COIでは東京大学・湯本潤司氏の「コヒーレントフォトン技術によるイノベーション拠点」、SIPでは理化学研究所・緑川克美氏の「レーザーを用いたトンネルの状態計測」等々。この他にも、光関連のプロジェクトはめじろ押しだ。
 日本を代表する国立研究法人、宇宙航空研究開発機構、量子科学技術研究開発機構、情報通信研究機構、海洋研究開発機構、産業技術総合研究所、理化学研究所、日本医療研究開発機構、日本原子力研究開発機構、防災科学技術研究所、農業・食品産業技術総合研究機構なども出展して、それぞれのアクティビティを紹介していた。

伝統技術を新製品開発に生かす
 期間中は、セミナーも数多く開かれたが、31日には「新製品開発に生かす伝統技術」と題し、東京理科大学の生越由美氏(写真)が基調講演を行った。生越氏は、日本人は明治維新や第2次世界大戦の敗戦といった時代の節目において、それまでの日本文化を否定してきたのではないかと指摘した。
 さらに、世界における生産量シェアでは2.5%に過ぎないスイスの時計産業が売上高シェアでは50%を超えているという実例を示しながら、イタリアやドイツなどで成功している伝統技術のブランド化が日本においても必要不可欠だと説いた。
 生越氏は、現状での日本における伝統技術の応用例を数多く紹介しながら、さらなる応用の推進が必要と指摘、価値を理解し、因数分解をして、新製品開発に活かすことがとても重要だと述べていた。

注目の大学発ベンチャー
 別会場で同時開催された大学見本市&ビジネスマッチング展示会「イノベーション・ジャパン2018」(主催:JST、新エネルギー・産業技術総合研究機構〈NEDO〉)では、毎年恒例の大学発ベンチャー表彰が行われた。
 光関連では、ナノルクス(代表取締役社長:祖父江基史氏)の赤外線カラー暗視カメラが新エネルギー・産業技術総合研究機構理事長賞を受賞した。同社は、産業技術総合研究所の永宗靖氏の発明をもとに設立された産総研発のベンチャー企業。これまでモノクロでしか捉えられなかった、まっ暗闇での映像を赤外線のみでカラー撮影できる世界唯一の汎用映像技術の開発と製品化に成功したことが評価され、今回の受賞となった。

 資源の少ない日本にとって人材は命だ。人材は人財とも称される。そこから生み出される研究開発成果こそが、今後の日本の国力の源泉となる。それだけに、質の高い支援プロジェクトに対する期待は、ますます高まっている。
(川尻 多加志)