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多元技術融合による光プロセスの革新
多元技術融合光プロセス研究会、平成30年度第1回研究交流会を開催

杉岡氏写真

July, 20, 2018, 東京--光産業技術振興協会の多元技術融合光プロセス研究会(代表幹事:杉岡幸次氏(理研)、写真)の平成30年度第1回研究交流会が7月5日(木)、産業技術総合研究所臨海副都心センター別館(東京・江東区)において開催された。
 同研究会は光源、光学系、材料や構造、形態、物理化学反応、前後工程、制御技術や計測・分析技術など、これまで出会うことのなかった多元的な技術を効果的に融合し、有効な光プロセス技術を開発するための議論の場を提供することを目的に平成17年度に設立された。以後、年度ごとに5回、斯界の第一人者を招き、講演を中心とした研究交流会を開催している。
 今回のテーマは「光応用プロセスの基礎と先端技術」。いま注目の光応用プロセスの最新動向が紹介された。参加申し込み者は80名を越えたそうで、過去最多との声も上がっており、その関心の高さが窺われるものであった。

光応用プロセスのホットな話題
 講演開始にあたって、代表幹事の杉岡氏は6月末に英国・エジンバラで開催されたLPM2018(The 19th International Symposium on Laser Precision Microfabrication:杉岡氏がGeneral Chair)の報告を行った。同シンポジウムには約350名が参加して250件ほどの発表があったそうだ。レーザプロセスではマイクロ加工やナノ加工が注目を集めたとのこと。中でもトピックスはGHzアブレーション加工だったそうだ。通常フェムト秒レーザ加工で繰り返し周波数が上がってくると、熱影響によって加工品質が低下するが、周波数をGHzまで持っていけばアブレーション・クーリング現象によって高品質・高効率な加工が可能になると、いま世界的に注目を集めているという。
 さて、講演のトップバッターは「超短パルスレーザーによる付加加工:多光子重合と多光子還元」を講演した寺川光洋氏(慶大)。超短パルスレーザは相互作用時間が短いため熱影響が極めて小さく、ピーク強度が高いために非線形相互作用を誘起しやすい。それゆえ多光子重合による高分子材料や多光子還元による金属の造形法では、微細な三次元構造を容易に作製できる。寺川氏は、その基礎を紹介するとともに自身の取り組む、多光子重合によるソフトマテリアル内部への金属微細構造の作製や多光子重合と多光子還元同時励起によるポリマー/金属複合構造の一括作製の研究を紹介した。
 「空間位相と偏光を同時制御したフェムト秒レーザー加工」を講演した早崎芳夫氏(宇都宮大)は、空間光変調素子に表示される計算機ホログラムを用いた並列レーザ加工技術(ホログラフィックフェムト秒レーザ加工)は、高い加工スループットと光利用効率を有していると述べた。空間光変調素子は空間的な光の位相制御に加え偏光制御も可能で、フェムト秒レーザパルスの偏光制御は異方性を持つ分子の選択的励起や異方的な構造の生成を可能にするとして、レーザパルスの空間位相と偏光を同時に制御する2台の空間光変調素子を用いたレーザ加工システムを紹介した。
 「パワーデバイス用レーザーアニール最新技術」を講演したのは川﨑輝尚氏(住友重機械工業)。パワー半導体の低損失化は急速に進み、エネルギー効率は大幅に改善されている。川﨑氏は、低損失化進展の要因の一つとしてウェハの薄板化技術と熱処理技術の革新を挙げ、レーザアニーリングはレーザ照射面を局所的に加熱するプロセスとしてウェハの薄板化が進むパワー半導体製造プロセスで不可欠な熱処理技術として、ダブルパルスレーザアニーリングや2.5μm以上の深さ領域へのレーザアニール実施事例、品質管理のためのオンラインモニタリング技術等を紹介した。
 「透明材料の超短パルスレーザー加工」を講演した下間靖彦氏(京大)は、ガラス等の透明材料に超短パルスレーザを集光照射すると、偏光方向に依存したナノ周期構造が自己組織化され、この光誘起構造は光学異方性だけでなく電気、磁気、熱的な興味深い性質を示すと指摘。超短パルスレーザの照射によってガラス内部で光誘起された構造やその機能性について、石英ガラスや多成分ガラス等における研究を紹介するとともに、石英ガラス内部に書き込んだ情報を3億年保存できるという具体的な研究成果も披露した。
 「炭素繊維強化樹脂のレーザー加工における数値計算」を講演したのは大久保友雅氏(東京工科大)だ。CFRPは、熱伝導率が高く除去に必要な温度も高い炭素繊維と、伝導率が低く除去に必要な温度も低い樹脂との複合材料。そのためレーザ照射した場合に樹脂は除去されやすく、炭素繊維は除去されにくいという相反性を有し、複雑な熱的影響領域が形成されてしまうという問題を抱えている。大久保氏は、材料の表面と断面に与えられる熱影響に関する数値計算を紹介、パワー密度の制御や熱影響の除去タイミングを制御することで、熱影響の低減が可能であることを示した。
 最後の講演は、新井武二氏(中大)による「レーザー加工の基礎-新しい流れとその展望-」。新井氏は、レーザ加工の多くは応用事例が先行し、基礎的な現象解明が疎かにされてきた帰来があり、多くの未解決課題も残っていると指摘。講演ではレーザビームの走行速度によって加工材料の表面で発現する熱源形状が異なることを明らかにするとともに、ファイバーレーザによる薄板の高速切断時で重要な切断フロントにおける熱源関与の割合を紹介。IoTによるオール光工場等、今後のレーザ加工の展開と将来も展望した。

広範な分野を包含
 同研究会の取り扱う分野は非常に広範囲だ。これまでも様々な切り口で話題を提供し、多様な分野間の技術交流による「多元光技術融合」を図ってきた。研究会では、今後も会員の意見を聞きながら、多元的な光技術を包含するテーマを適時、発掘・設定して運営して行くとしている。
 なお、次回の研究交流会はマクロ加工やAMを中心としたレーザ加工技術の最新動向をテーマに8月30日(木)、場所は同じく産業技術総合研究所臨海副都心センター別館にて開催される。
(川尻 多加志)