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太陽光発電は主力電源になれるのか?
PV Japan 2018 エグゼクティブセミナーで見えたその課題

July, 12, 2018, 東京--6月20日(水)から22日(金)までの3日間、太陽光発電に関する総合イベント「PV Japan 2018」がパシフィコ横浜で開催された(主催:太陽光発電協会)。
 来場者数は3日間で21,881人(PV Japan 2018と第13回再生可能エネルギー世界展示会の合計)に及んだ。期間中は様々なセミナーが設けられたが、20日と21日の両日にはエグゼクティブセミナーが開催された。本稿ではこのセミナーの内、初日に行われた経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 再生可能エネルギー推進室長の杉山佳弘氏(写真)による講演「再生可能エネルギー政策の今後の展望」をレポートする。

四つの課題
 杉山氏は、再生可能エネルギーをコスト競争力のある主力電源にし、その大量導入を持続可能にするためには、発電コスト、事業環境、系統制約、調整力の四つの課題を克服する必要があると指摘した。
 2012年7月の固定価格買い取り制度(FIT)開始以降、再生エネルギー比率は10%から2015年度には15%へ拡大した。その一方で賦課金は約2兆円増え、2030年度目標である24%になった場合は、さらに約1兆円増えると言われている。
 再生可能エネルギーは、世界的には導入拡大の中で発電コストの低減が進み、他電源と比較してもコスト競争力のある電源となり、さらなる導入が拡大するというサイクルが生じている。一方、我が国では導入は急速に進んだものの、例えば太陽光発電コスト(kWh当たり)はドイツの9円に対し24円といったように、国際水準に比べて高いのが現状だ(風力発電ではフランス10円に対し22円)。我が国において、再生可能エネルギーをコスト競争力のある電源とするには、中長期の価格目標の設定や入札制の導入などが必要だと指摘されている。
 太陽光パネルの製品寿命(25~30年)を経て、事業が終了する2040年頃には大量の廃棄物が排出されると言われている。その際には、太陽光パネルが廃棄処理費用の工面をされずに放置(有価物であると称して撤去を行わない)されたり、不法投棄されるのではないか、さらには不適切な廃棄処理によって有害物質が流出・拡散したり、大量の処分で最終処分場がひっ迫しないかという点が危惧されている。
 杉山氏は、発電事業者による廃棄等費用の積み立てを担保するための施策の検討や、現行のFIT制度の執行強化(認定事業者の公表制度や毎年の報告義務に廃棄物費用等の積み立て計画・進捗状況に関する項目を追加する他、積み立てが計画通りでない認定事業者には報告徴収・指導・改善命令を行う等)に取り組むべきではないかと述べた。
 系統制約に関しては、発電事業者から「つなげない」(送電線の平均利用率が10%未満でもつなげない)、「高い」(接続に必要な負担が大きすぎる)、「遅い」(接続に要する時間が長すぎる)といった不満の声が上がっている。これらを解決するには、新しい系統利用ルールの創設が必要だ。
 対応の方向性として、杉山氏は次の「五つの柱」を挙げる。先ずは、実際に利用されていない送電枠の「すき間」のさらなる活用を目指す「日本版コネクト&マネージ」の徹底。この他、費用負担の見直し・分割払い、コスト削減の徹底(接続費用のコスト検証、託送制度改革)、手続きの迅速化、情報の公開・開示の徹底(事業の予見性向上)等が重要だ。
 再生可能エネルギーの出力制御を可能な限り回避するための調整力確保には、グリッド・コード(系統連係技術要件)の整備が求められる。調整用電源としては、既存の火力発電とともに新規接続の火力発電が満たすべき最低出力や変化速度等の要件化が重要で、再生可能エネルギー自身にも供給安定の責任を負う事が重要になってくる。海外では風力発電の先行事例がある。我が国でも調整機能を有する風力発電に関して、制御機能を具備するためのルール作りが検討されている。
 調整力確保には、市場整備も重要だ。めったに動かない調整用電源は投資回収が難しい。このような状況の中で新規の調製用電源を造ってもらうためには、発電事業者が投資回収をしやすい仕組みとして、容量(供給力)市場や調整力市場の創設が必要になってくるという。

革新的な技術開発を
 再生可能エネルギーの主力電源化と大量導入は揺るぎない方針だ。電源のコスト競争力と長期安定化には、FITからの自立化と電力システム改革との融合が求められている。ネットワークについては、人口減少によって電力需要が伸びない可能性がある中での系統投資が求められる。
 杉山氏は、2030年までに先ずは日本版コネクト&マネージによる既存系統の有効活用を行うと述べ、2050年を目指して電力システム改革と効率的増強を行い、調整力の低コスト化を実現するために、カーボンフリー化も視野に入れつつ、革新的な技術開発に取り組んでいくと講演を終えた。
(川尻 多加志)