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TOPTICA、レーザのスタートアップから 成熟企業への進化

August, 24, 2022--アンドレアス・ソス

 1998年、数年後にノーベル賞を受賞したテッド・ヘンシュ氏(Ted Haensch)の持つ技術ノウハウにより、独トプティカ社(TOPTICA Photonics)は
誕生した。トプティカグループの従業員数は現在、約450 名。同社は意図せずして、テクノロジーの夢をビジネスの成功に変えるという学術的スタートアップのロールモデルになった。トプティカ社の共同創業者であり社長のウィルヘルム・カエンダース博士(Wilhelm Kaenders)とトーマス・レナー博士(Thomas Renner)に、創業と継続的な成長を実現した同社のサクセスストーリーを聞いた。

―どのように起業したか?
 ウィルヘルム博士:実は、会社設立は2 番目のステップだった。最初に私は、医療市場向けのエキシマレーザのメーカー、TuiLaser 社にアプローチしたが、ここには半導体レーザの開発が期待されていた。しかし、私には理化学系レーザに取って代わる他のアイデアがあった。大学時代からの友人に電話をして、「自分自身で作ったものを買ってみないか」と持ちかけた。
 実のところ、我々はガレージではなく、浴室で起業した。小さなアパートの浴槽が最初の倉庫だった。日本や韓国を中心に数件の見込み客があり、さらにドイ
ツの長距離干渉計の研究プロジェクトに我々のレーザが組み込まれた。

―どのような成長を思い描いていたか?
 ウィルヘルム博士:5年以内に500万ドイツマルク(現在は250 万ユーロ)の売上達成という夢があった。野心的な目標で勇気があったものだ。ところが、思いがけない出来事で、事態が急展開した。我々の技術に関連したものにノーベル賞が授与された。さらに、SDL 社のような半導体レーザ企業が市場から撤退し、我々にチャンスが巡ってきた。
 理化学市場だけでなく、1998 年のスタートと同時に、光データストレージ用のテスト機器の分野にも参入した。これは、日亜化学工業に近づくきっかけとなった。日亜が青色窒化ガリウムダイオードでこの市場に参入するのに協力させてもらった。日亜は、当社から非常に柔軟性の高いテスト装置を購入し、その副産物として、この新しい青色発光ダイオード(青色LED)を、まず理化学製品に、次に産業向け製品に取り入れた。科学の世界で、光データストレージ製品のクロスマーケティングを実施した。まもなく予想をはるかに超える成果を上げた。今はユーロで数えているが[1 ユーロ=1.96 ドイツマルク]、5 年後には500 万マルクを超えた。

―トーマス博士は、大企業であるRofin-Baasel 社からトプティカ社に転職した。なぜ、大企業から小さな会社に移ったのか?
 トーマス博士:多くのアイデアを持っていても、それを実行に移せないと、どこか不満が残り、別の機会を探してしまうものだ。そんなとき偶然、スタートアップのトプティカ社に出会った。その企業哲学と文化を気に入った。私がトプティカ社に入社した2005 年当時、従業員数は約50名、売上高は約1,000 万ユーロだった。現在ではその10 倍の規模になったが、今でも企業文化はそのままだ。
 ただ今は、自分自身の最初のモチベーションを時々思い出さなければならない。今は、若い人たちの意見に耳を傾け、励まし、手助けすることが求められているからだ。


図1 2022年にデザインが一新されたトプティカグループのロゴマークを紹介するウィルヘルム ・カエンダース博士(左)とトーマス・レナー博士(右)

―ウィルヘルム博士、トプティカ社と同規模のレーザ企業のほとんどは、この20年の間に売却されている。今までに撤退を考えたことはあったか?
 ウィルヘルム博士:トプティカ社は私にとって夢の実現であり、この24年間で素晴らしい会社に成長した。我々は、常に新しいアイデアを生み出すことで、自力で再生できる成長を目指してきた。確かに、昔に比べてイノベーションを組織的に行うようになった。しかし、このまま撤退して大企業の傘下に入るのは、時期尚早とみている。

―純粋なアカデミック精神と企業のビジネスには大きな違いがあると思う。製品やビジネスの成功に向けて、若い博士たちの心を挫折させることなく変えていくには、どのようにされているのか?
 ウィルヘルム博士:当社は最先端技術を求めているので、技術専門家は大学から直接入社することが多い。しかし、研究室で長く過ごすうちに、彼らは他の人生のあり方があることに気づき始める。そして、企業が収益を上げることが悪い慣習ではなく、自分自身の創造性や自己啓発のための前提条件でもあるのだと、考えるようになる。アプリケーション、プロダクトマーケティング、そして非常に高い鑑識眼を持つ顧客層へのセールスサポートといった役割も、選択肢の1 つになる。そしてもちろん、キャリアアップすることで研究所の日常から抜け出すこともできる。技術的な役割を失いたくない社員のためにトプティカ社フェローになるキャリアパスを設けたし、グループのマネージメントを任される社員もいる。
 トーマス博士:博士号取得者は多いが、全員が大学からの直接入社というわけではない。すでに2、3 社、起業している社員もいる。新入社員には、最初の段階でコーチをつけて、スタートダッシュをサポートする。これは、同規模の他の企業とは少し違うかもしれない。我々は、会社トップ経営陣にすべてを丸投げしてはいけないと、かなり早い段階で気づいた。そこで、第2レベル、第3レベルを設定しているが、どのレベルかを問わず、能力とチャンスを重視していることを社員に伝えている。またこれらの基準が、明確に外部に分かるようにしている。トップ経営陣が常に会社全体で均一な支援を行う必要はなく、貢献している社員全員に自分自身の成長に十分な支援を与えている。

―中堅企業として、イノベーションで勝負していると思う。どのアイデアに投資価値があるのかをどのように判断されているのか?
 ウィルヘルム博士:当初、技術的なビジョンが明確だった。最高品質のレーザ光源で原子/イオン冷却の分野をサポートし、育成することだ。これは現在、いわゆる「量子革命」である「量子2.0」の実質的な部分を担っている。我々は、これをバイオフォトニクスやテスト&メジャメントといった他の市場にも拡大することができる。
 25 年近く経った今、当社は世界の他の企業と同じようにイノベーションを組織化している。アイデアが少なすぎるからではなく、多すぎるからだ。その多くは外部からのもので、選定したプロジェクトのみを対象とする当社のコミットメントを必要とする。このようなコミットメントは、常に潜在的な市場や顧客と共有し、優先順位付けに役立てている。
 トーマス博士:プロセスは3 段階から構成される。第1 段階は、アイデアを受け入れることの大切さを伝える。当社ではこの段階を「グリーンフェーズ」と呼び、あらゆることが可能になる。既成概念にとらわれない発想をするようにとも促す。そうしないと、型にはまったアイデアしか出てこない。第2段階は、より正式なプロセスで、発案者全員が自らのアイデアを評価パネルに売り込む必要がある。どの企業も似たようなことをやっていると思う。当社は非常にシンプルな方法をとっている。つまり、基本的な数字に基づく指標を示して売り込むだけである。
 第3段階は、個人的なメンタであるCarl Baasel氏から学んだことだが、物事を複雑にしすぎないということだ。5年後の予測ではどうせ計算を誤るのだから、下1ケタの計算には踏み込まない。直感から始まり、完全に合理的な議論で終わる、というシンプルな手順を使うことである。

―3年前、量子技術の市場機会について調べていた際に、ウィルヘルム博士は、今日では企業対政府の市場に過ぎないと言っていたが、現在、量子技術に持続可能な市場があると考えているか?
 ウィルヘルム博士:最終的な判断を下すのは時期尚早だと思う。そして、企業対政府の市場という私の見解は、今でも有効だと思う。政府出資の研究は、応用ニーズがあるものに限られる。残念ながら、今は国益が重視されすぎるため、輸出規制や国家の優先順位によって、量子技術の市場拡大が妨げられているのかもしれない。量子を成功させるためには、グローバルな知的パワーを総動員する必要がある。
 トーマス博士:基盤技術はかなり開発されている。あとは使い勝手の良さだ。例えば、光学テーブル上に量子コンピュータがあるが、将来的にはハンズオフの量子コンピュータが必要になる。それが次の課題だ。
 ウィルヘルム博士:量子ビットは50個で十分なのか、それとも1,000 個必要なのか。環境要因を補正するためだけなら、それほど多くの量子ビットがなくてもエラー訂正ができるのだろうか。量子センシングは、人々がお金をかけてもよいと思うような付加価値を提供できるのだろうか。これらの疑問は、まだ解決が困難だ。現在、量子力学において、グローバルなエンジニアリング力を取り入れることは、非常に良い取り組みだと思う。
 トーマス博士:現時点ではまるで「解決方法が問題を探している」ように見えるかもしれないが、レーザ市場がどのように発展してきたかを知っているので、不安になることはない。


図2 最大規模のブースでのパーティーを開催し、それはトプティカ社の企業文化を担うものに。

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著者紹介
アンドレアス・ソス( Andreas Thoss)は、寄稿記者であり、独ソス・メディア社(THOSS Media)の社長。e-mail:th@thoss-media.de https://thoss-media.de