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さらなる新波長を求めるトレンドに応える、フローサイトメトリーレーザ

January, 26, 2022--さらなる個別化医療に対するニーズが高まる中で、新しいレーザ波長と、複数の波長が統合されたレーザライトエンジンが、高い性能を備える高次元アナライザの実現につながることが、研究者らによって見出されている。

 長期化する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、個別化医療に向けた動きが一層促進されており、それによって、研究と臨床の両方の分野を対象とした、さらに高度なフローサイトメトリー装置の必要性が高まっている。具体的には、いわゆる高次元、または、マルチパラメータのフローサイトメトリーにおいて、より大きなデータセットを提供するためにより多くのレーザ波長を使用することにより、より多くの異なる種類の細胞を単一の装置で測定することが求められている。レーザメーカーは現在、UV、可視域、近赤外域(NIR)の新しい波長と、メーカーによる装置開発を効率化する、マルチ波長のレーザライトエンジンによって、この要求に対応している。

フローサイトメトリーの基礎
フローサイトメーターは、血液サンプル中のさまざまな種類の細胞の数を数えることのできる装置である。血液サンプルを最初に凝集し、複数の蛍光色素の混合物でそれを処理することにより、これが行われる。蛍光色素とは、標的とする細胞表面上の特定のタンパク質にそれぞれ選択的に結合する、蛍光化学物質である。処理後に細胞は装置に注入され、1つずつ1列に並んだ1つのフローストリームとしてレーザ相互作用ゾーンに供給される。複数の異なる波長のレーザビームをこのストリームに照射することにより(図1)、蛍光と光散乱が生じる。各蛍光色素はそれぞれ異なる波長で蛍光を発するため、それによって個々の細胞を識別することができる。
 光学系はバンドパスフィルタを使用することにより、蛍光信号を収集して波長ビンに分類する。光信号は、検出器(光電子増倍管[photomultiplier tube:PMT]、または、アバランシェフォトダイオード[APD])によって、定量的に測定される。
 臨床用装置では一般的に、最大4つのレーザ波長と最大10個の検出器が使用される。最新の研究用装置では、最大9つのレーザ波長と60個の検出器が使用される。どちらの種類の装置も高速で、一般的に1秒あたり数百個の細胞を分析することができる。

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図1 フローサイトメトリーでは、1つずつ1列に並んで、細長いフローストリームとして通過する細胞が、1つ以上のレーザビームによって励起される。

高次元サイトメトリーの課題
 蛍光信号は必ず、レーザ励起波長よりも長い(ストークスシフトされた)波長に存在する(図2)。このシフトにより、バンドパスフィルタとカットオフフィルタの組み合わせを使用して、蛍光を散乱レーザ光から効率的に分離することができる。理論的な最大信号雑音比(S/N比)は、励起曲線のピークで蛍光色素を励起し、その蛍光をできるだけ多く検出することにより、達成される。
マルチパラメータフローサイトメトリーの任意のアプリケーションにおいて、試薬パネルは、すべてが異なる励起および蛍光スペクトルを持つように慎重に選択された、複数の蛍光色素で構成される。これは、装置が信号を分離して、それによって、各蛍光色素が各細胞にどれだけ結合しているかを判定できるようにするために、非常に重要である。それができれば、その装置によって細胞の種類を明確に判定することができる。
 ここでの課題は、励起と蛍光の両方の発光スペクトルが、かなり幅広で裾野が長いために、いくらかのクロストークが避けられないことである。また、特定のタンパク質をどれだけ発現するかについては、細胞の種類によって自然なばらつきが存在する。装置設計者や、試薬パネルを設計するエンジニア/科学者は、クロストークに加えて、最終データの変動係数(Coefficient of Variation:CV)を最小限に抑える必要がある。
 一般的に採用されている方法(図2)は、励起波長と蛍光検出ウィンドウを交互に配置するというものである。各検出ウィンドウ内の信号は、「散布図」を生成するように、互いに対してプロットされる。既知と新規の両方の種類の細胞の検出を目的とした研究アプリケーションでは、プロットが手作業で作成されることがよくある。臨床実験では、検査量が多いためにこのような監視型の分析は非実用的で、代わりに多変量コンピュータ解析が、各細胞の種類の自動判別に使用される。

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図2 各レーザ波長が、蛍光色素の吸収ピークに近ければ、最大の蛍光発光が得られるため、理想的である。また、レーザ波長と蛍光ピークが十分に離れていれば、バンドパスフィルタによって両者を分離することができる(a)。実際のシステムでは、蛍光色素の吸収ピークから離れた波長で発光するレーザが使われるために、発光が低下する場合がある。また、特定のスペクトル範囲内でより多くのレーザを使おうとすると、励起と発光の間にかなりの重なりが生じ、信号の分解は難しくなる(b)。

波長の増加が性能の向上に
 最小限のクロストークで分析できる、パラメータ(タンパク質)と細胞の種類の数を最大限にするには、励起レーザ波長をかなり均等な間隔で配置するのが、理想的である。そして、装置によって測定可能なスペクトル帯域幅が広いほど、各波長の間の間隔を大きく保ちつつ、より多くの波長を含めることが容易となる。ここでは、可視域を超えてUVやNIRへと範囲を拡大することが有効である。
 しかし従来は、使用可能なレーザ波長が原因で、そうした理想的な構成を実現するのは困難だった。例えば、488nmの波長(当初はアルゴンイオンレーザによって得られていた)は、イオンレーザがフローサイトメトリーに使われることが稀になった今でも、フローサイトメトリーにおける事実上標準の青色レーザ波長である。同様に、当初はダイオード励起固体(Diode Pumped Solid State:DPSS)レーザで得られていた532nmと561nmの波長も、緑色と黄色の波長として今でも推奨されている。
 波長と出力の両方がスケーリング可能な、2つの新しいレーザ技術が存在する。サイトメトリー装置は一般的に、各波長で100〜200mWの出力が必要であるため、波長と出力のスケーリングは重要である。2つの技術とは、ダイオードレーザと光励起半導体レーザ(Optically Pumped Semiconductor Laser:OPSL)である。
 その両方の技術を利用することにより、レーザメーカーは現在、可視域からNIRにわたる多数の新規波長と従来波長における高出力レーザ源を提供して、古い種類のレーザにあった波長の隙間を埋めている。例えば、552nmのOPSLが現在、黄色域の561nmの波長に代わって使用可能で、それによって、橙や赤色励起の蛍光色素とのクロストークが低減される可能性がある。また、458nmのダイオードレーザは、緑色励起の蛍光色素とのクロスト ークを低減するため、ゆくゆくは488nmに代わる標準の青色波長となる可能性がある。
 つまり、ダイオードレーザとOPSLの両方のスケーラビリティは、装置設計者に、従来から使用可能だった固定波長ではなく、装置全体の性能だけに基づいてレーザ波長のパネルを選択する自由をもたらした。DPSSレーザが設計者の選択肢に加わったことで、UV域での動作も可能になった。その1例が、新たに使用可能になった複数のUV励起の蛍光色素に最適にマッチする、349nmの波長である。
 実用的な観点から、根底にあるレーザ技術とは関係なく、自社のレーザを共通のインタフェースを備えた共通のプラットフォームにパッケージ化するメーカーもある。これにより、異なるシステムにおいても、装置全体で単一のインタフェースを使用する設計が可能となり、具体的にどのような種類のレーザ源が最終的に接続されるかを気にする必要がなくなるため、装置構築者の作業は簡素化される。

マルチ波長のレーザエンジン
 単一装置内のレーザの数が増加するにつれて、ビームアライメントの課題も増加する。各レーザビームを、細長い楕円形に集束および成形して、フローストリームに照射する必要がある。これにより、フローストリームの中心にない細胞も、同量のレーザ光によって励起されることが保証される。また、すべての楕円をミクロン単位の空間精度で、フローストリームに対して一列に並ぶように、個別に位置調整する必要がある。
 一般的な4レーザのサイトメーターの場合は、4セットの集光/成形光学系と、4セットのビームデリバリ光学系のすべてを、密閉密集状態の装置空間内で完璧に調整しなければならない。また、集光/アライメントには、現場での頻繁な保守を必要としない、安定性に優れたオプトメカニクスが必要である。そのすべてが、設計と製造における重大な課題となる。
  米コヒレント社(Coherent)は、「CellX」というマルチ波長のレーザエンジンを開発することにより、この課題を大幅に緩和している。CellXは、コンパクトな筐体の中に搭載されたOBISレーザによって、最大4本の個別に調整可能な楕円形のビームを出力する(図3)。
 装置の組み立てと試験を行う間は、カバーを一時的に取り外すことにより、各ビームの指向と集光を個別に高い精度で調整することができる。その後、カバーを取り付けて、光学系を各位置にしっかりと固定することにより、現場における長期的なアライメントを維持する。つまり、この統合型レーザエンジンは、装置の設計と組み立ての簡素化と、市場投入時間の短縮につながる。また、冗長な電源と制御電子部品をなくすことにより、システムコストも削減する。
 このレーザエンジンでは、多くの臨床試験で使われている、405nm、488nm、561nm、637nmという標準的な組み合わせの最大4つの波長が利用可能である。また、OBISシリーズによって提供される、25種類を超える任意の波長を利用することもできる。研究用装置の構築者は現在、8つの異なる可視波長を得るために、このエンジンを2つ組み合わせることもある。続いて、スタンドアロンのUVを追加するのが一般的である。それらのレーザは、求められる出力レベルにおいてややフットプリントが大きいためである。9つすべてのレーザが、同一のインタフェースによって制御されるため、電子的および論理的な設計と製造の課題も簡素化される。
 高次元のサイトメトリーは、より多くのパラメータを一度に測定する能力を備えるため、研究者と臨床科学者の両方に対し、貴重な追加データを提供することができる。レーザメーカーは、次の3つの方法でこのトレンドに対応している。すなわち、複数のレーザ技術を共通のインタフェースを備える共通のフォーマットにパッケージ化することによって、装置設計の作業を簡素化すること、装置の感度を高めて範囲を拡大するための新しい波長を開発すること、そして、おそらく最も重要なのは、統合型のマルチ波長レーザエンジンによって、システムの構築と保守の両方を簡素化することである。

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図3 フローサイトメトリー用のレーザライトエンジンは、最大4本の楕円形ビームを供給し、各ビームを個別に調整することができる。

著者紹介
ダン・カレン(Daniel Callen)は、米コヒレント社(Coherent)の製品マネージャー。マティアス・シュルツェ(Matthias Schulze)は、同社のマーケティング、OEMコンポーネント、計装を担当するディレクター。e-mail: daniel.callen@coherent.com, matthias.schulze@coherent.com URL: coherent.com