コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

初のシリコンチップ上円偏向光ディテクタ

October, 29, 2015, Nashville--初のシリコンチップ集積円偏向光ディテクタ発明により、小型、ポータブルセンサーの開発に道が開かれる。このようなセンサーは、潜在アプリケーションの中でも、薬剤スクリーニング、監視、光通信、量子コンピューティングへの偏向光利用を拡大する。
 この新しいディテクタは、ヴァンダービルト大学の機械工学Jason Valentine准教授が指導する研究チームは、オハイオ大学の研究チームと協力して開発した。
 Valentineによると、光の偏向状態は、目に見えないが多くの貴重な情報を提供する。しかし、従来の検出法はサイズが大きく、小型化が難しかった。研究チームはメタマテリアルを利用することでその限界を回避した。
 偏向光には直線偏向と円偏向とがある。非偏向光では、個々のフォトンの電界はランダムな方向に向いているが、直線偏向の光ではすべてのフォトンが同じ面上にある。円偏向光(CPL)では、電界は360°連続回転する面にある。そのため、CPLのタイプには、右回りと左回りの2つのタイプが存在する。
 人の眼は光の偏向状態を直ぐには区別できないが、「p-vision」処理をする種はたくさん存在する。例えばイカ、シャコ、ハチ、蟻、コオロギ。
 イカは、皮膚上に様々な偏向光パタンを作り出し、捕食者や獲物が検出できない秘密の通信チャネルとしてこれを使うのではないかと研究者は仮説を立てている。CPLは、適切なディテクタを持たないものには見えない偏向チャネルを含むことによって光通信の安全性を高めるために使用できるのではないかと提案されている。
 非偏向光と違い、CPLでは分子の右手バージョンと左手バージョンとの違いが検出できる。正に手や手袋のように、ほとんどの生体分子は鏡像対になっている。この特性は対掌性と言われている。例えば、細胞は左手型アミノ酸だけを持つが、代謝するのは右手型糖類だけである。
 生物活性が利き手に関係していることが多いので、対掌性は薬剤では非常に重要になる。今日使用されているキラル薬物の数は推定で2500、開発中のほとんどの新薬は対掌性をもつ。
 「安価なCPLディテクタを薬剤製造工程に組み込むと、薬剤のリアルタイムセンシングに使用することができる。ポータブルディテクタは、病院やフィールドで薬剤の対掌性判定に使用できる」とヴァンダービルト大学博士課程学生、Wei Liはコメントしている。
 偏向光を検出するために研究チームが開発したメタマテリアルは、光学的に厚い銀プレートに固定した非常に薄いアクリルシートに極微小ジグザグパタンで作製した銀ナノワイヤでできている。このメタマテリアルは、ナノワイヤ面を上にしてシリコンウエハの底に取り付けている。
 ナノワイヤは、無数の電子を生成し、それが「プラズモン」密度波を作り、シリコンウエハを透過するフォトンからのエネルギーを効率よく吸収する。その吸収プロセスが「ホット」、つまりエネルギー電子を作り、電子はウエハに上り詰めて検出可能な電流を生成する。
 ジグザグパタンは、右手型か左手型のいずれかにすることができる、右手型の時、その表面が右手円偏向光を吸収して左手円偏向光を反射する。左手型の時には左手円偏向光を吸収して右手円偏向光を反射する。両方の表面パタンを含むことにより、センサーは右手と左手の円偏向光を区別できる。
 固体偏向光ディテクタ作製で、これまでに2件の研究があった。Liによると、1つは空気中で不安定な対掌性有機物質を用い、狭い範囲の波長でのみ動作し、出力範囲も限られていた。もう1つは、もっと複雑な多層デザインで、低温でのみ動作した。
 プロトタイプの効率は0.2%であり、低すぎて商用化できない。しかし研究チームはアプローチの実現性を証明したので、一般的なフォトディテクタに匹敵するベルまで効率を上げるアイデアはたくさんある、と説明している。