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新しいメタマテリアルで屈折率ゼロ

October, 23, 2015, Cambridge--ハーバード・ジョンA. ポールソン校、工学・応用物理(SEAS)の研究チームは、屈折率ゼロのオンチップメタマテリアルを初めて設計した。
 この新しいメタマテリアルは、Eric Mazur研究室で開発された。
 Mazur氏は、「光は一般に圧縮されたり操作されたりしないが、このメタマテリアルにより光を1つのチップから操作し、圧縮し、曲げ、捻り、ビーム径をマクロスケールからナノスケールに縮めることができる。これは、光を操るための注目に値する新しい方法だ」とコメントしている。
 この無限の高速性は相対性の法則を破るかに聞こえるが、そうではない。宇宙では、情報を持つ光よりも速いものは存在しない。アインシュタインは依然として正しい。しかし光は別の速度を持っている、つまり波の山(クレスト)がどの程度速く進むかによって計測される、これは位相速度として知られている。光のこの速度は、光が透過する材料に依存して増減する。
 例えば、光が水中を進むとき、その位相速度は、波長が長くなるにしたがって再び増速する。ある材料の中で光の波のクレストがどの程度減速するかは、屈折率として表現される。屈折率が高ければ高いほど、その材料は光の波のクレストの伝搬とますます多く干渉する。例えば水は、屈折率が約1.3である。
 屈折率がゼロになると、実際に奇妙な面白いことが起こり始める。
 ゼロ屈折率の物質では、位相の前進はなくなる、つまり光は空間を進む一連の山と谷、動く波として振る舞わない。代わりにゼロ屈折率の物質は定常相、全てが山か全てが谷となり、無限に長い波長になる。その山と谷は、空間ではなく、時間の変数としてのみ振動する。
 この均一な位相により、光はエネルギーを失うことなく、伸びたり縮んだり、捻れたり曲がったりする。チップに搭載したゼロ屈折率の物質は、特に量子コンピューティングの世界では、素晴らしいアプリケーションになり得る。
 「集積フォトニック回路は、標準的なSi導波路の中では、弱く非効率な光エネルギー閉じ込めによって妨害されている」と論文の筆頭著者、Yang Liは言う。「このゼロ屈折率メタマテリアルは、多様な導波路構造の電磁エネルギー閉込めに対するソリューションを提供する。その内部の高位相速度が、材料の構成にかかわらず、完全伝送を生み出すからである」。
 そのメタマテリアルは、ポリママトリクスと金箔内のクラッドに埋め込まれたシリコンピラーアレイでできている。それはシリコン導波路と結合して、標準的な集積フォトニックコンポーネントやチップと相互作用することが可能。
 「量子オプティクスでは、位相の前進の欠如によって、ゼロ屈折率キャビティ、導波路の量子エミッタが、相互に常に同位相のフォトンを放出する。それは量子ビット間のエンタングルメント改善ともなり得る。光入力が効果的に広がって無限に長くなり、遠くの粒子さえもエンタングルが可能になるからである」Philip Munozは説明している。
 「このオンチップメタマテリアルは、ゼロ屈折率物理学と集積オプティクスのアプリケーション研究に新たな扉を開く」とMazur氏は話している。