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TU Wien、新しい材料設計で歪のない光波

August, 13, 2015, Vienna--光波が物質を透過すると、通常は波は大幅に変わる。散乱と回折により波が重なり、材料内に複雑な光の明暗スポットができる。局所的に光を増幅または吸収することができるように特別に調整されたハイテク材料では、そのような効果は完全に抑制される。
 ウイーン工科大学(TU Wien)の計算結果では、このような材料は、あたかも波の干渉が全く存在しないかのように、材料内部のあらゆる箇所で同じ強度をもつ新しい種類の光波を可能にする。その普通ではない独特の特徴のために、波動方程式のこのような新しい解は技術的アプリケーションにとって有用となる。

障害物が波を変える
 光波が自由空間を進むとき、その強度はどこでも同じになる。しかし、障害物に当たると、波は回折する。障害物に当たることなく進んだときと比べると、空間のある点で波は明るくなり、別のところでは暗くなる。それ自身で発光しない物体をわれわれが見ることができるのは、これが理由である。
 しかし近年、特別な方法で光を変更できる新しい材料で実験が行われている。それらは、レーザと同様に、局所的に光を増幅できる、あるいはサングラスのように吸収できる。「そのようなプロセスが可能なら、われわれが通常の透明材料で使用しているものとは全く違う光波の数学的記述を採用しなければならない。この例では、非エルミート媒体のことである」とStefan Rotter教授は言う。

波動方程式に新たな解
 TU WienのKonstantinos Makris とStefan Rotterは,フロリダのZiad MusslimaniおよびDemetrios Christodoulidesとともに、この代替記述によって波動方程式に新しい種類の解が可能であることを発見した。「その結果は、空間の個々の点で光の波は同じ明るさである、まさに自由空間における波のようである。例え光が複雑な、高度に構造化された材料を透過しても同じである。ある意味で、その材料は波に対して完全に見えない、例え光がその材料を透過し、それと相互作用しても見えない」とKonstantinos Makrisは説明している。
 その新しいコンセプトは、いわゆる「メタマテリアル」を想起させる。このような材料は特別な構造をもっており、普通ではない方法で光を回折することができる。ある場合には、その構造は光を物体の周囲に曲げることができる。したがってその物体は見えなくなる。まさにハリーポッターの隠れ蓑だ」。とは言え、この非エルミート材料の原理は、全く違うものである。光の波は物体の周囲で曲がるのではなく、完全に物体を透過する。しかし、材料が波に影響する仕方は、増幅と吸収の注意深く調整された相互作用によって相殺される。最終的に光の波は、まさに物体が空間のどこにも存在していなかったかのように明るい。
 そのような材料がごく普通に製造されるまでには、まだいくつかの技術的な問題が解決されなければならないが、研究者たちはすでにそれに取りかかっている。現在、発表されている理論的な成果は、メタマテリアルの他に型破りな方法で波を操作するもう1つの極めて有望な方法である。「われわれの研究で扉が開かれた。その背後に、たくさんの新しく素晴らしい洞察が見つかると考えている」とKonstantinos Makrisはコメントしている。