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光による加熱と冷却で超高速DNA診断

August, 11, 2015, Berkeley--UCバークレイ(UC Berkeley)の生体工学研究者が開発した新技術は、光のスイッチで遺伝しサンプルの加熱と冷却を加速することで実験室の有用ツールをより安価に、ポータブルに、何倍も高速にする見込みがある。
 Light: Science & Application誌に掲載された論文によると、このターボチャージ温度サイクリングは、結果が数時間ではなく数分で得られることから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)テストの臨床的、研究応用を著しく促進することになる。
 PCRテストは、DNA配列のシングルコピーを増幅して数千から数百万のコピーを作るが、これはクローン研究から法医学分析、親子鑑定まで、遺伝学的アプリケーションで必須になっている。PCRは、遺伝病や伝染病の初期診断で使われている。また、ミイラやマンモスの古代DNAサンプルの分析にも使われる。
 UCバークリーの研究チームは、LEDsを使うことで、金箔とDNA溶液の界面で電子を加熱することができた。その溶液の加熱速度、1秒に55°Fを記録。冷却速度も同様に素晴らしく、1秒に43.9°Fだった。
 従来のPCRテストのスローダウンは、DNA溶液の加熱と冷却に時間がかかるためである。PCRテストは、反復的に温度を変える必要があり、遺伝子配列の増幅には3つの異なる温度で平均30温度サイクルが必要になる。プロセスでは、二重鎖DNAを壊して単一ストランド(鎖)を適合するプライマーと結合させる。個々の加熱-冷却サイクルで、DNAサンプルの量は二倍になる。
 この熱サイクルのスピードアップのために研究チームは、金属表面での光と自由電子との相互作用、プラズモニクスを利用した。光を当てると自由電子が励起され、共鳴を始め、熱を発生する。光がOFFになると、共鳴と加熱は止まる。
 金は、非常に効率的に光を吸収するので、このプラズモニック光加熱には評判のよい金属であることが分かっており、また別のメリットとして生物系に不活性であるので、生体医療アプリケーションで使うことができる。
 実験には、研究チームは120nm厚、狂犬病ウイルス程度の厚さの金箔を用いた。金はマイクロ流体ウエルでプラスチックチップ上に堆積し、DNAサンプルを持つPCR混合物を保持する。
 光源は市販のLEDsで、PCRウエル下に置いた。青色LEDのピーク波長は450nm、これが最も効率的な光と熱の変換が得られることが分かった。
 研究者は、131~203°Fまで5分以内に30回反復することができた。
 フォトニックPCRシステムがDNAサンプルを増幅する能力をテストし、結果は従来のPCRテストに比肩するものであることが分かった。
 「このフォトニックPCRシステムは、高速、高感度、ローコストで、現場での実利用のために開発しており、超高速遺伝子診断チップに統合できる。この技術はPOC結果を出すので、アフリカの農村から病院ERまで幅広い環境で使うことができる」と生体工学教授、Luke Lee氏はコメントしている。