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ハーバード大、ナノワイヤで特定の光波長を吸収

July, 28, 2015, Cambridge--ハーバード大学の研究チームは、将来コンピュータエレクトロニクスから太陽光パネルまでのアプリケーションになりうるナノワイヤを実現するための、今までに類を見ない方法を開発した。
 その技術は、以前から分かっていた2つの原理を利用する。一つはプラトー・レイリー不安定性(Plateau-Rayleigh instability)で、これは一筋の水流が小さな液滴に変わる理由を説明する流体力学的な見方。もう1つは結晶成長に関係する。
 プラトー・レイリー不安定性は、1870年に発見されたが、最近ではナノワイヤに同様の現象が認められている。温度限界まで加熱するとナノワイヤは固体から周期的な間隔の一連の液滴に変化する。
 研究チームは、新しいタイプのワイヤを作るために、従来通りに成長したナノワイヤを真空チャンバ内で変態点直下まで加熱した。次にワイヤ上に自発的に結晶化したシリコン原子を投入した。
 原子は、均一なシェルを形成するのではなく、規則的間隔の構造になった。これは、高温でナノワイヤが分解する時に現れる液滴に類似している。液滴と異なる点は、このプロセスが高度に制御可能である点。
 Charles Lieber研究室の院生Bobby Day氏によると、温度や圧力を変えることでこの構造のサイズや間隔を制御することができる。「われわれに分かったことは、条件を変えれば、これらの構造をどのように作るかを調整できることだ」。
 直径20~100nmのナノワイヤでそのプロセスを繰り返すとともに、研究チームは、シリコンやゲルマニウムなど、いくつかの材料の組合せを用いるプロセスを実証した。ナノワイヤのローブ間の距離を調整できることに加えて、ワイヤの横断面の調整も可能であることをテストは示している。
 Max Mankind氏によると、横断面を調整してもっと丸いワイヤとか四角、板状のワイヤを作ることができる。
 「ナノワイヤは、サブ波長サイズであるので、このサイズの構造は光を非常に効率的に吸収する。まるで光アンテナのように動作し、光をそこに送り込む。これまでの研究では、異なる直径のワイヤは異なる光波長の光を吸収する。例えば、非常に小さな直径は青色の光をよく吸収し、直径がそれよりも大きくなると緑色の光を吸収する。構造とともにこのような調整ができると、2つの異なったそれぞれの長所を手に入れることができ、同じ構造で両方の波長を吸収可能であることをわれわれは示した」とDay氏は説明している。
 さらに、結晶構造間の間隔を縮小することで、ワイヤは特定の波長で光を吸収するだけでなく、スペクトルの他の部分からも光を吸収することを研究チームは示した。
 「間隔を400nm以下に縮小すると、それはいわゆるグレーティングモードになる。赤外に大きな吸収ピークがあることが分かっている。つまり、このナノワイヤで、厚さが100倍の従来のシリコン材料と同等の量の赤外光を吸収できると言うことである」と同氏は説明している。
 「以前は、ナノワイヤを緑と青の光の光検出に用いようとすると、2つのワイヤが必要だったので、これは素晴らしい発見である。今や、一つのワイヤで多機能を持たせることによって、デバイスの占める空間サイズを縮めることが可能になっている。いずれ、もっと効率のよい、より小さなデバイスを作ることができるようになり、場合によっては、均一な直径のワイヤではあり得ないこの調整から得られる新たな特徴を利用することができるようになる」とMankind氏はコメントしている。