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マイクロプラズマから広帯域テラヘルツ空中放射

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May, 22, 2015, Rochester--ロチェスタ大学オプティクス研究所の研究チームは、空中でマイクロプラズマを生成するレーザが、広帯域テラヘルツ放射の光源として使用できることを示した。
 論文の著者、Fabrizio BuccheriとXi-Cheng Zhangは、空中で強いレーザパルスを使ってテラヘルツ波を生成するアプローチは、これまでは非常に難しかったが、遙かに低いパワーレベルで達成できることを実証した。論文の筆頭著者、Bucheriは、基本的な物理学を生かしてプラズマ生成に必要なレーザパワーを抑制したと説明している。さらに同氏は、爆発物や薬物モニタリングなどのアプリケーションで改善の見込みがあると指摘している。
 テラヘルツ放射のアプリケーションは2つのカテゴリ、イメージングと分光学に分けられる。テラヘルツ波を使用するイメージングは、X線を使用するイメージングに似ているが、X線とは異なりテラヘルツ波はイオン化放射ではない。例えば、テラヘルツイメージングを使うと塗料(絵の具)層の下を見ることができる。イメージング応用には、狭い範囲のテラヘルツ周波数が必要になる。これは、ダイオードやレーザなどの特殊テラヘルツデバイスを用いて生成される。しかし、分光応用では、食品の毒物、バッゲージ内の薬物や爆発物の分析では、可能な限り広帯域のテラヘルツ放射が有用である。つまりテラヘルツレンジに、多くの異なる周波数の波を含んでいることだ。この用途では、プラズマが必要とされる。
 分光学は、ある物質がどの周波数を吸収するかを見ることによって機能する。違う材料は違うスペクトルを持つ、つまり異なる周波数でピークと谷を持つ。しかしスペクトル分解能次第では、この特徴は、材料が違っても非常に似通って見える可能性がある。
 これまでは、プラズマをブロードバンドテラヘルツ光源として用いるアプローチは、違う周波数の2つのレーザビームを組み合わせて生成する、引き伸ばしたプラズマが一般に用いられていた。この技術は、通常「2色」アプローチと言われており、強力で高価なレーザを必要とする。「1色」アプローチはシングルレーザ周波数を用いてプラズマを生成する。これは1993年、Harald Hamsterのチームが開発したが、非常に高いレーザエネルギーを必要とし、BuccheriとZhangの最近の論文が出るまでは研究されていなかった。
 Buccheriは、光の偏光に関心を持ち、その利用法を研究してきた。同氏が関心を持ったのは光ビームに存在するある偏光状態、アジマス偏光と放射偏光。これらの状態では、電界は放射軸に対して垂直であるか、あるいは各点で放射状であるかのいずれかである。「このような変わった偏光状態の一つで、一つのレーザでプラズマを造ると、より効率的なテラヘルツ放射を実現することができるかどうかを見たかった」とBucchri氏は言う。「それはうまくいかなかった。しかし、それがうまくいかない理由が分かると、その根本の物理学が本当に理解できた」。同氏によると、その物理学を生かすことによって、空中でブロードバンドテラヘルツ波の生成が可能と以前考えられていたよりも低いレーザエネルギーを利用することができるようになった。秘訣は、長く引き伸ばしたプラズマを、数㎜~数㎝の長さ、マイクロプラズマで置き換えることだった。同氏の考えでは、使うレーザタイプを精密調整し、空気を別の気体に変えることで、もっと低い動作パワーが可能になる。
 テラヘルツ放射への、この「1色」アプローチのメリットは、テラヘルツ波が、レーザビームまで1方向に伝搬することである。これは、テラヘルツ波を、例えばマイクロチップなどの導波路に結合することが楽になることを意味する。