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NIST、低消費電力ローコストの光検出材料を開発

April, 23, 2015, Gaithersburg--ネブラスカ大学リンカーン校の研究チームは、NISTと共同で、太陽電池では問題となる電荷をトラップする欠陥が高感度光ディテクタの設計で役立つことを示した。
 Advanced Materialsに発表された報告によると、そうした欠陥を活用して低消費電力の光センサを作製し、イメージング、分光計、その他の産業、科学応用に利用できる。
 過去数年、研究者たちは有機金属三ハロゲン化ペロブスカイト(OTPs)膜を太陽電池に利用する研究を進めてきた。これは、OTPsにはいくつかの魅力的な性質があるからである。
 一つは、相対的に加工が容易であること。材料溶液を高速回転ディスクに流し込むことができる。回転ディスクが、余剰分と溶液を放出すると一般的なペンキの被膜よりも遙かに薄くなり、それを乾燥させる。膜が数100ナノメートル(nm)厚であっても、それに当たるほとんどの光を吸収することができる。
 これまで、他の溶液加工可能な材料は、光によって生成された電荷を伝導すること(キャリア移動度)ができなかった。しかし、OTPsのキャリア移動度は結晶シリコンに匹敵する。これは大変革をもたらす可能性がある。光を利用するハイパフォーマンスデバイスがローコストで実現できるからである。
 感光性物質によってフォトンが吸収されると、エネルギーが負に帯電した電子に移動し、励起状態になり、その後に正に帯電したホールが残る。太陽電池や光ディテクタで、その吸収されたエネルギーを利用するには、これらの逆帯電のキャリアがそれぞれ反対方向の異なる電極の方に流れなければならない。電子またはホールのいずれかをトラップする材料欠陥はキャリア移動度を低下させ、デバイスのパフォーマンスを劣化させる。
 研究チームが確認したところでは、バルク材料におけるトラップ状態は太陽電池ではよくないが、OTPsの電極に近い表面欠陥やトラップは光検出性能を強めるように設計することができる。
 NISTのAndrea Centroneによると、デバイスのエネルギー障壁を効果的に下げると、適切な電圧を印可したとき、材料の光感度は最大500倍向上する。
 トラップ状態が増幅効果を持つのは電極近傍においてであり、材料全体ではない。その大きな増幅にOTPsで必要となる電圧は非常に低い(約1V)ので、この高感度ディテクタには、時計などで使われているボタン電池で電力が供給できる。
 NISTの研究チームは、光熱誘導共鳴(PTIR)と言う技術を利用して、硬化中にナノスケールでOTP膜の表面分解を調べた。
 取得したデータは、硬化中に金属イオンクラスタがOTP膜表面に残っていることを示唆するものだった。