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LIDAR技術でヨーロッパの自然保護

April, 22, 2015, Vienna-- ヨーロッパの広大な自然保護域をモニタすることは極めて難しかったが、ウィーン工科大学(TU Wien)が開発したコンピュータアルゴリズムによって、航空機とレーザ技術を使うことでこれが可能になっている。
 「自然保護域のNatura 2000ネットワークのルールは、少なくとも6年ごとに保護域の保護状況の検証を要請する。これはリモートセンシングの助けを借りなければ不可能である」とTU WienのNorbert Pfeifer教授は言う。
 高度500~2000mで飛行機を飛ばし、300~800m幅でスキャンする。50万回/秒の赤外レーザパルスを使用して1平方メートルあたり約10点をサンプリングする。パルスは反射されて飛行機に戻ってくる。その走時から飛行機と地面との正確な距離が計算でき、地形の詳細な3Dマップが作成される。
 Norbert Pfeifer氏は、「われわれのチームは特殊分類ソフトウエアを開発した。このデータを使って植生の様々なタイプを区別することができる。例え、雑草や車輌などの攪乱要因でも識別できる」と説明している。
 レーザパルスによって得られた3Dマップは、単なる航空写真よりも遙かに多くの情報を含んでいる。森をスキャンすると、全てのレーザ光が木の上方から反射されるわけではない。草木の低い層も同様に測量される。生態学的に健全な森林は多様な木と灌木層だけで構成されているわけではなく、草本層も存在する。こうしたサブキャノピーレベルが存在するかどうかは赤外データから数学的に推定できる。
 「環境観察のためにリモートセンシングデータを処理するとき、容易に引き出せる非常に特殊なパラメータに注目するのが普通だ。われわれのアプローチは全く違う。われわれは、そのデータを使って、同じパラメータを正確に計算で求める。これらは、生態学者が現場の観察で収集できるものと同じである」。したがって、そのデータはEUの規則に適合しており、過去のデータと直接比較することができる。
 新しい方法の力を考えると、さらに一歩前進が可能である。「われわれの考えでは、現場観察のパラメータに集中するのではなく、むしろ高所から簡単に得られる新しいパラメータを定義することで、地域の生物の多種多様性の特性評価をよりよく行うことが可能になる」とPfeifer氏は言う。
 新開発のコンピュータアルゴリズムは、Ágota-puszta, Püspökladány (ハンガリー)自然保護領域でテストされた。この領域は、塩草原、黄土草原、沼地で構成される。フィールドデータの一部をアルゴリズムの調整に使用した。データの残りで、この方法の検証を行った。「われわれのデータと現場での観察との間で80~90%の一致を達成した。これは大きな成功である」とNorbeert Pfeifer氏はコメントしている。
 「この研究は、リモートセンシングと生態学界保護との間のギャップを埋めるにあたって、大きな前進である。ローカル生態学の専門家が設計したルールに正確にしたがって、リモートセンシングによってNatura 2000保護状況をモニタできることを示した」とAndrás Zlinszky氏は語っている。