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デューク大学、光で遺伝子を制御

March, 11, 2015, Durham--デューク大学(Duke University)の研究チームは、研究室のディシュ内の特定のどんな場所でも、どんなパタンでもスイッチ1つで遺伝子を活性化する方法を考案した。
 光を使って特定の場所で遺伝子を活性化できることで、研究チームは遺伝子の機能の研究が進行し、組織を成長させる複雑なシステムを造り、恐らく最終的にはSFのような癒しの技術を実現することができるようになる。
 論文の筆頭著者、PhD学生Lauren Polstein氏は、「この技術によって、どんな染色体のどんな遺伝子でも取り出して光でそれをON/OFFできるので、遺伝子工学でできることが変わる可能性がある。光で行うことの利点は、迅速かつ容易に遺伝子を何時ON/OFFするかをコントロールできることであり、光強度を変えることで活性化するレベルを制御できる。また、光に特殊パタンを照射、例えば光をステンシルに通すことで、遺伝子をONにする場所を狙うことができる」と説明している。
 この新技術は、CRISPR/Cas9という新しい遺伝子工学システムを用いて特殊な遺伝子を標的にしている。バクテリアが侵入者を特定してそのDNAをスライスするシステムとして発見され、研究者が特定の遺伝子配列を正確に標的にするためにそのシステムが選出された。
 デュークの研究チームは、進化樹の別のブランチを利用してそのシステムを光で活性化するようにした。
 多くの植物では、2つのタンパク質が、光があるとしっかりと組み合わされ、植物が1日の長さを感じ取ることができる。これは、開花のような生物学的機能を規定する。CRISPR/Cas9システムをこれらのタンパク質の1つに付加し、遺伝子活性化タンパク質を別のタンパク質に付加することで、研究チームは青色光を細胞に照射することでいくつかの異なる遺伝子をON/OFFできるようになった。
 研究者は染色体DNAの自然の位置から遺伝子の活動レベルをしっかりと、正確にコントロールする。これによつて、遺伝子の役割を一層正確に解釈できるようになる。光誘導システムは、幹細胞培養がどのように多様なタイプの組織に分化するかもコントロールできるようになる。また遺伝子表現の異なるパタンを創ることによって、そのシステムが組織エンジニアリングで使えるとこの研究プロジェクトのリーダー、生体医療工学准教授、CharlesGersbach氏は見ている。
 「現状で、組織エンジニアリングの限界の1つは、一般的な方法が多数の骨、軟骨、筋肉を作り出すことであるが、それは組織の自然の姿ではない。われわれは、たくさんの細胞の中で、異なる組織が形成される場所を空間的に制御したい。その方法が、正常な生理学をよりよく表現する多組織構成物を作り出す」とGersbach氏は説明している。
 同氏によると、将来的には皮膚を通して細胞を理解し、細胞がしていること、血管を成長させたり組織を再生させたりすることをコントロールできるようになる。さらに先になると、Star Trekで見られるように、光を傷に当てるだけで傷が癒えるというようなデバイスが想定できる。