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レーザアブレーションと同位体分析で海の酸性化を評価

February, 26, 2015, Kiel--海洋研究キールセンタGEOMAR (GEOMAR Helmholtz Centre for Ocean Research Kiel)の研究者は、UK、カナダ、USの研究者と協働して先端技術を使い、19世紀末以来の、北太平洋のpH値を高分解能で再現することができた。この研究により、酸性化の傾向だけでなく、強い季節的変動も明らかになる。
 地球温暖化の次に、現在海洋の酸性化が第2の主要な二酸化炭素(CO2)問題と見なされている。大気中の二酸化炭素が増えると、海水に溶け込む気体の量も増加する。それが炭酸を形成し、海のpH値を下げることになる。研究は基本的な問題に直面している。海のpHの計測が始まったのはわずか数十年前、場所によっては数年しか経っていない。100年、200年あるいは1000年前に、生物が対処していたpH値は何だったか。
 研究グループは、1ヶ月の分解能で過去120年にわたる北太平洋の海のpH値再現に成功した。レーザ技術と同位体分析を組み合わせる画期的な方法でサンゴ藻のサンプルを分析した。「取得データは、海の酸化の潜在的な影響を評価するために重要である」とDr. Jan Fietzkeは語っている。また、「われわれが使用した技術は環境復元に新たな可能性を開くものである」と付け加えている。
 この情報を解析するために研究グループは、レーザアブレーション技術を利用した。特殊レーザが、予め明確に定義された位置から材料に照射される。「1個のサンプル点は、1㎜の1/10の幅しかない」とDr. Fietzkeは言う。取り除いた材料は自動的に質量分析計に送られる。そこで、同位体比の違いが計測できる。現在の研究には、ホウ素の2つの同位体を使った。これらの関係は、海水のpH値の信頼できる指標であると考えられている。
 研究グループは、北太平洋のpH値が19世紀後半以来、実際に下降していることを見いだした。これは、水が酸化していることを意味する。「このトレンドは、大気中の二酸化炭素レベルの上昇とよく一致している」とPortsmouth大学の生物学者、Dr. Federica Ragazzolaは指摘している。同時に、この解析の正確な1ヶ月の分解能は、一年のうちでpHが強く変動することも明らかにした。研究グループは、サンプルを採った地域に大きな昆布の森が成長したためであると見ている。「春や夏に昆布は大量のCO2を消費する。つまり、水中のCO2が少なくなり、pHが上昇する」と生物学者、Dr. Federica Ragazzolaは説明している。
 こうした研究は始まったばかりである。「同じようなタイプのサンゴ藻が高緯度の全ての海に存在する。それらは何千年も成長することができる。レーザアブレーション技術を使うことで将来、他のサンプルを使って過去に戻り、pHや他の環境パラメータを再現することができる」とFietzke氏はコメントしている。