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MPQ、分子フィンガープリント領域に周波数コム新技術

February, 25, 2015, Munchen--マックスプランク量子(MPQ)オプティクス/ルートヴィッヒマクシミリアンズ大学ミュンヒェンのDr. Nathalie Picquéは、中赤外領域で広帯域光周波数コムを実現する信頼性の高い新技術をNature Communicationsに発表した。
 リソグラフィで造るシリコンナノワイヤ導波路では、短パルスレーザのスペクトルが著しく広がる。パルスエネルギーが低くても、オクターブ-スパニング位相コヒレント周波数コムが生成される。
 2000年代初め、マイクロストラクチャ光ファイバで短パルスレーザのスペクトラル広がりにより初めての極端に広い「スーパーコンティニウム」スペクトルが実証された。スーパーコンティニウム生成は、フォトニック科学で重要なアプリケーションを見いだすことになる。例えば、光コヒレンストモグラフィ(OCT)、光通信、蛍光顕微鏡など。スーパーコンティニウム生成は、初のオクターブ-スパニング周波数コムの実現の決め手にもなる。周波数コムのスペクトルは、多数の均等間隔スペクトルラインで構成されている。そのような周波数コムは、光周波数と原子時計の周波数(RF)との単純で直接的な比較ができるので、光周波数の正確な計測ができる。分子分光学では、全てのコムラインを同時に使って、複雑な広帯域スペクトルを迅速に高感度測定できる。
 現在、周波数コムは、可視光と近赤外スペクトル域で市販されている。しかし中赤外域(2-20µm)は、まだ市販されていない。この領域は、ほとんどの分子の強い基本振動遷移と2つの大気透過ウインドウを含んでいる。したがって、この重要なスペクトル域のフォトニック技術開発は活発に行われている。分光計、材料科学、セキュリティ、工業プロセス制御、あるいは化学、生物、医療センシングにおける多くのアプリケーションが、ハイパフォーマンス中赤外フォトニックデバイスの恩恵を受けることになる。残念ながら、低閾値オクターブ-スパニング位相コヒレントスペクトル拡張に適した光学材料はほとんどなく、設計も困難である。
 MPQの研究チームは、中赤外周波数コム生成の新たな方法を詳しく調べ、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)チップ上のCMOS適応シリコンナノフォトニック導波路を採用した。分散設計ワイヤの高い非線形性により、ナノフォトニック導波路は位相コヒレントオクターブスパニング(1500-3300nm)のコムスペクトルを記録することができた。従来のアプローチと異なり、この導波路は化学的に安定している。数ヶ月後でも、スーパーコンティニウムスペクトルの特性が全く変化しないことが観察された。さらなるシステム開発により、シリコン技術は8500nmまでの中赤外スーパーコンティニウムを生成できる室温動作プラットフォームとなる可能性がある。さらに先には、そのような微小ワイヤが化学センシング用のオンチップ周波数コム分光計の一部になる可能性も考えられる。