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バークリー研究所、マイクロリングレーザキャビティでブレイクスルー

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November, 10, 2014, Regensburg--米国エネルギー省(DOE)のローレンスバークリー国立研究所(Berkeley Lab)とカリフォルニア大学(UC)バークリ校は、レーザ技術における大きなブレイクスルーを報告した。
 バークリーラボとUCバークリー校の共同任命物理学者、Xiang Zhang氏をリーダーとする研究チームは、前例のないマイクロリングキャビティを開発した。このリングキャビティは、従来のマルチモードレーザキャビティからでもシングルモード発振を可能とする。このように、要求にしたがってシングルモード発振できることは、光計測、干渉計、光データストレージ、高分解能分光計、光通信を含む幅広いアプリケーションに影響を持つ。
 「オプティクスでは一般に損失は望ましくないが、パリティタイム(PT)対称性という概念をベースにした光損失と利得間の相互作用を意図的に活用することで、利得スペクトラム帯域によらず、本質的にシングルモード発振するマイクロリングレーザキャビティを設計した」と同大学バークリー研究所材料科学部門のZhang氏は説明している。
 レーザキャビティ、つまり共振器は、内部で光が何度も反射してある共振周波数、つまりモードで定在波を生成するレーザの鏡面コンポーネント。レーザキャビティは、その寸法が光波長よりもはるかに大きいので、一般にマルチモードをサポートしている。モード間の相克が光利得の大きさを制限し、結果としてランダムな振動になり、出力レーザビームが不安定になる。
 「多くのアプリケーションで、安定動作、優れたビーム品質、操作のしやすさの点でシングルモード発振が望ましい。シングルモードレーザからの光放出は、位相ノイズ、強度ノイズとも低い単色性であるが、シングルモード発振を得るに足る変調光利得と損失を実現することが課題だった」。
 シングルモード発振を達成するためにモード操作と選択手順が開発されたが、これらの手順の各々は特殊構成にしか適用できなかった。Zhang氏のグループが開発したマイクロリングキャビティは、一般的設計で最初に成功したコンセプトである。この成功の鍵は、パリティタイム(PT)対称性の破れという概念を用いること。PT対称の法則は、系の空間的な構成が、鏡像のように反転しても、あるいは時間の方向が逆になっても、光ビームのような系の特性は同じままであることを指している。研究グループは、「閾値のないPT対称破壊」という現象を発見した。これは、同グループのマイクロリングレーザキャビティの共振モードに前例のない制御を与える、つまりこれはレーザ物理学とアプリケーションにおける重要な発振制御である。
 「閾値のないPT対称破壊とは、一度利得/損失コントラストが導入されると、それがどんなに大きくても、われわれの光ビームが対称破壊を経験すると言うことである。言い換えると、PT対称破壊にとっての閾値はゼロ利得/損失コントラストである」と論文の筆頭著者、Liang Feng氏は説明している。
 研究チームは、独自のマイクロリングレーザキャビティを作ることで閾値のないPT対称破壊という検証を利用することができた。このキャビティは、InP基板上のInGaAsP化合物でできたマイクロリングレゾネータの上に方位角方向に周期的に並んだクロム/ゲルマニウム(Cr/Ge)二層構造で構成されている。マイクロリングの直径は9µm。
 「このマイクロリングレゾネータに導入した回転対称は連続的であり、無限システムを真似たものだ。直観に反するわれわれの発見は、システムが回転対称であるとき、極微特質/損失変調でもPT対称性は有効でないことだ。これは以前の1D PT変調システムでは観察されなかった。そうした有限システムは、連続対称動作をサポートしなかったからだ」とFengは説明している。
 閾値のないPT対称破壊を容易にするためにマイクロリングレーザキャビティの連続回転システムを使用する。
 研究チームは、究極的にシングルモード発振させるために、そのような方法で光利得と損失を微妙に操作することができる。
 「PT対称性破壊とは、光モードが発振で利得優位にできると言うこと、それに対してPT対称性では全てのモードがパッシブのままである。われわれのマイクロリングレーザキャビティでは、PT対称破壊で所望のモード容易に作るが、他の全てのモードはPT対称のままに維持する。PT対称破壊そのものはシングルモード発振を保証しないが、全ての他のモードのPT対称とともに動作するとき、それはシングルモード発振を容易にする」とZhang氏のグループの院生、Zi-Jing Wong氏は説明している。
 Scienceの論文で研究チームは、PT対称破壊によるシングルモード発振は、通信やコンピューティング向けの次世代オプトエレクトロニックデバイスに道を開くと示唆している。つまり、現在のシステムを悩ますクロストーク問題なしでマルチレーザビームを独立操作できるからだ。このマイクロリングレーザキャビティコンセプトは、一般的なマルチモードレーザキャビティの光モード設計に用いて所望の発振モードや放射パタンを作ることもできる。
 「われわれのマイクロリングキャビティは、今日ラボや業界で一般に使用されている大きなレーザを置き換えることができる。さらに、利得スペクトラム帯域にかかわらず、実証されたシングルモード動作は、異なる周波数で数兆の上方信号を運ぶレーザチップにもなり得る。これは、巨大なデータセンタを小さなフォトニックチップに縮小できることを意味する」とFeng氏はコメントしている。