Science/Research 詳細

サブテラヘルツ波が水とタンパク質のミクロな混合を加速

May, 24, 2023, つくば--産業技術総合研究所(産総研)細胞分子工学研究部門 今清水正彦主任研究員、ナノ材料研究部門 杉山順一 主任研究員、分析計測標準研究部門 田中真人研究グループ長、佐藤大輔主任研究員は、サブテラヘルツ(sub-THz)領域の電磁波の照射により、タンパク質の周囲にある水分子集団の運動を励起し、水和状態を変化させる現象の観測に成功した。
この観測のためにサブテラヘルツ波照射中での高感度なマイクロ波帯の誘電率測定技術を開発し、水素結合でネットワーク化した水分子の動きやすさを評価した。
また東京大学大学院 薬学系研究科 徳永裕二助教、竹内恒教授、筑波大学 数理物質系 菱田真史 助教(研究当時、現:東京理科大学 理学部第一部化学科 准教授)と共同で、この観測の妥当性をNMR分光法(東京大学)とテラヘルツ分光法(筑波大学)で検証した。その結果、共同研究グループは、通常は長い時間を要するタンパク質の水和変化が、サブテラヘルツ波の照射によって大幅に加速されることを発見した。
この発見は、タンパク質の構造や機能の発現に不可欠な水和現象をサブテラヘルツ波によって制御できることを示唆している。研究成果は、タンパク質の水和の新たな知見であり、酵素反応の活性化や飲食料品の保存や熟成の技術、タンパク質異常疾患の研究などに貢献が期待される。

この内容の詳細は、2023年5月22日(日本時間)に「Nature Communications」に掲載された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp)