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MIT、ドローンの空中衝突を防ぐアルゴリズム

April, 27, 2023, Cambridge--MITの研究者は、ドローンが同じ空域で協働し、常に安全な経路を選択できるようにする軌道計画システムを開発した。

多数のドローンが同じ空域で連携して活動していると、トウモロコシ畑で殺虫剤を散布しているような場合、互いに正面衝突するリスクがある。

こうした高コストの衝突回避に役立てるためにMITの研究者は、2020年にMADERシステムを提案した。このマルチエイジェント軌道計画は、ドローングループによる適切な、衝突のない軌道策定を可能にする。各エイジェントは、その軌道をブロードキャストする。仲間のドローンに飛行経路を知らせるためである。するとエイジェントは、相互の軌道を考慮して、確実に衝突しないように軌道を最適化する。

とは言え、チームが実際のドローンで同システムをテストしたとき、あるドローンが仲間のドローンの軌道について最新情報を持たない場合、衝突するような経路を不注意に選択する可能性があることがわかった。研究チームは、そのシステムを改良し、今度はRobust MADER、マルチエージェント軌道計画を立ちあげた。これは、エイジェント間の通信が遅れても、衝突のない軌跡を生成する。

そのアルゴリズムは、遅延チェックステップを組み込んでいる。その間、ドローンは、一定時間待機し、その後で新しい、最適化された軌道を採用する。遅延期間中に、それが仲間のドローンから付加的軌道情報を受け取ると、新規の軌道を放棄して、再び最適化プロセスを始める。

航空学、宇宙航行学の院生、Kota Kondoとチームが、シミュレーション、実際のドローンによる飛行実験の両方でRobust MADERをテストしたとき、衝突フリー軌道生成で100%の成功率を達成した。ドローンの飛行時間は、他のアプローチで行うよりもわずかに遅かったが、他のベースラインは、安全性を保証することはできなかった。

「安全に飛行したいなら、注意深くなければならない。したがって、障害物にぶつかりたくなけば、目標に達するには時間がかかる」(Kondo)。

研究論文は、International Conference on Robots and Automationで発表される。

軌道計画
MADERは、非同期、分散型、マルチエイジェント軌道プラナーである。つまり、各ドローンが、それ自身の軌道を策定する。全てのエイジェントは、各新規軌道に合意しなければならないが、同時に合意する必要はない。したがって、MADERは、他のアプローチよりもスケーラブルになる。数千のドローンが、同時に一つの軌道で合意するのは極めて難しいからである。その分散型性質により、同システムは、ドローンが中央コンピュータらか離れて飛ぶような実世界環境で優れた機能を発揮する。

MADERでは、各ドローンは、他のドローンから受け取った軌道を組み込んだアルゴリズムを使って新しい軌道を最適化する。新しい軌道を連続的に最適化、ブロードキャストすることで、ドローンは衝突を回避する。

しかし、恐らく一つのエイジェントが、数秒前に、その新しい軌道をシェアしたが、通信が遅延していると、仲間のエイジェントは、それを直ぐに受け取っていない。実世界環境では、他のデバイス、あるいは嵐の天候のような環境要因による干渉で、信号は遅れることがよくある。この不可避の遅延により、ドローンは、気づかずに、衝突に至る新しい軌道を取ることがあるかも知れない。

Robust MADERは、そのような衝突を阻止する、各エイジェントが2つの軌道を利用できるからである。それは、安全であることがわかっている一つの軌道を保持しており、それは、すでに潜在的な衝突をチェックしている。その元の軌道を辿っている間、そのドローンは新しい軌道を最適化するが、遅延チェックステップが完了するまで、それは新しい軌道を利用しない。

遅延チェック期間中、そのドローンは、一定時間を使って、繰り返し他のエイジェントからの通信をチェックし、新しい軌道が安全かどうかを確認する。潜在的な衝突を検出すると、それは、その新規の軌道を放棄し、繰り返し最適化プロセスを始める。

Kondoによると、遅延チェック期間の長さは、エイジェント間の距離、通信を阻む環境要因に依存する。例えば、エイジェントが何マイルも離れていると、遅延チェック期間は、さらに長くなる。

完全な衝突フリー
研究チームは、人工的に導入した通信遅延の中で、数百のシミュレーションを行い、新しいアプローチをテストした。各シミュレーションで、Robust MADERは、衝突フリー軌道の生成に100%成功だった。一方、全てのベースラインは衝突を引き起こした。

研究チームは、6機のドローンと2つの空中障害も作製し、マルチエージェント飛行環境でRobust MADERをテストした。この環境でMADERのオリジナルバージョンを使うと、6回の衝突を確認したが、Robust MADERは、いかなるハードウエア実験でも一度も衝突しなかった。

「実際に、そのハードウエアを飛ばすまでは、何が問題の原因かはわからない。シミュレーションとハードウエアの間の差があることは分かっているので、実際のドローンで機能するように、われわれはそのアルゴリズムを堅牢にした。また、それが実際にそれを見て、非常にやりがいと感じた」(Kondo)。

Robust MADERによりドローンは、3.4m/secで飛行できるが、ベースラインよりもわずかに長い平均飛行時間だった。しかし、あらゆる実験で、完璧に衝突フリーの方法は他になかった。

今後、研究チームは、Robust MADERの屋外テストを考えている。多くの障害やノイズタイプが通信に影響するような場所である。さらに、視覚センサをドローンに装備することを考えている。他のエイジェントや障害を検出して、それらの動きを予測し、その情報を軌道最適化に組み込むためである。