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Science/Research 詳細

イオン液体でグリーンライトをオレンジに変換

February, 17, 2023, New York--イエロー-オレンジレーザ光の高エネルギー短パルスは、多くのアプリケーションに最適である。中でも、視力矯正手術、特定の皮膚状態の治療などの医療処置に適している。とは言え、そのようなレーザ光は、実現が難しい。レーザから直接であろうと、別の波長の光に非線形光学プロセスを適用しても、実現が難しい。

今回、米国の研究者が、そのようなパルスを効率的に生成する方法を示した。これは、グリーンの光をイオン液体を含む管を通すだけである
(Phys. Rev. Appl., doi: 10.1103/PhysRevApplied.19.014052)。研究者によると、その技術は、可視光から赤外波長域で、高エネルギーパルスの生成に使用できる。.

ラマン散乱を活用
研究は、米国ブルックヘイブン国立研究所(Brookhaven National Laboratory in Upton, NY, USA)でのハイパワーCO2レーザ研究に起因する。そのレーザは、レーザ駆動粒子加速器や大に放射源を含む先端加速器技術の研究に使用される。しかし、そのビーム品質と繰り返しレートは、現在それをポンプするために使用されている非効率放電によって制約されている。

ブルックヘイブンのRotem Kupferとチームは、その放電をオレンジのレーザパルス源で置き換えようとした。これは、グリーンの光と組み合わせると、光励起に必要な中赤外放射を生成する。そのアイデアは、グリーンのレーザ光をラマン散乱によりオレンジに変換するためにイオン液を活用するというものであった。これは非弾性プロセスで、入力フォトンがエネルギーを特定分子振動に失うことに関与し、明確な周波数低減に至る。

研究チームの説明によると、ラマン散乱は、光を固体に向けることで達成可能である。原理的には、これは散乱分子の高密度を保証するが、関連する集団振動は難しく、エンジニアリングにコストがかかる。一方、散乱媒体として気体を使うと複雑さ低減となるが、波長変換の効率も下がる。

液体は、その二つを円満解決し、比較的高密度で存在する単一分子からの直接的散乱に関与する。特にイオン液体は、付加的利点がある。その構成分子が、所与の周波数により光をシフトするように設計できる。そのような液体は、室温融解塩、つまり人工的に構築された特定の陽イオン(カチオン)と陰イオン(アニオン)の組合せである。

イオン液で効率向上
まず、ブルックヘイブングループは、12の異なるイオン液を用意し、次に、ラマンシフトと光透過スペクトルの両方を計測することで、どの物質が、その仕事に最適であるかを立証した。勝者は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(EMIM DCA)だった。

その液体をテストするためにKupferと協力者は、63-㎝長のチューブをそれで満たし、10 ns、115mJのエネルギー、波長532nmのレーザパルスを液体に当てた。次に、ビームプロファイル、入力ポンプパルス、603nm出力ストークスパルスを計測した。

研究チームは、水で練習も繰り返した。水は、便利なレファランス液として使用した。水と比べて、EMIM DCAは、ポンプからのエネルギーをストークスパルスに、少なくとも3倍効率的に移転できた。チームは、粘性の高いイオン液が、音波としてのエネルギー浪費が著しく少ないことを示した。一方で、液体の光透明性の広い領域により、近赤外で他のポンプ光源の利用ができることを示した。

さらに、研究チームは、ラマンシフトが異なる2つの他のイオン液をテストした。一つは、ビストリフリミドアニオンを含んでいた。これは、化学的安定性と低粘度を附与する。もう1つは、代わりに、ピリジニウムカチオンを含んでいた。両方の場合、散乱プロセスは、数桁のストークスシフトを生み出した、これは大きな散乱断面積とレーザ波長の効率的な変換を示唆している。

より実用的で、毒性なし
Kupferとチームは、その新技術が、既存レーザシステムからの実用的、効率的な方法になると主張している。また、(光パラメトリック増幅の場合のような)正確な位相合わせが不要であり、有毒物質(溶剤に溶解した染料)の関与もないと指摘している。「この方法により、様々な科学および医療応用において有用なスペクトル領域で高エネルギーレーザ放射を柔軟、便利に生成できると予想している」。

とは言え、研究チームは、そのシステムへの取組が必要なことを認めている。チームによると、潜在的な改善に含まれるのは、レーザ光路長の最適化、グリーンレーザの周波数からオレンジレーザの周波数を引き算して、CO2レーザの光励起に必要な中赤外放射を生み出すことの実証。さらにチームは、より小さなチューブでセットアップをテストする計画である。目的は、チューブを満たすために必要なイオン液のコストをカットすることである。

(詳細は、https://www.optica-opn.org)