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Science/Research 詳細

EPFL、操作可能ソフトロボット、医療アプリケーションを強化

February, 3, 2023, Lausanne--光ファイバ製造で使われる方法を借用し、EPFLとインペリアルカレッジ(Imperial College)の研究チームは、先進的な動作制御を備えたファイバベースソフトロボットを構築した。これには、他の機能、電気および光センシング、液体の標的へのデリバリなどが組み込まれている。

過去数10年で、カテーテルベース手術は医療を変革した。医者は、侵襲性の少ない方法で、ステントの設置や腫瘍標的から組織サンプルの抽出、医療イメージングのための造影剤のデリバリまで、何でもできる。今日のカテーテルは、高度に設計されたロボットデバイスであるが、ほとんどの場合、それらを身体の介入箇所に押し込む作業は手動で、時間がかかる処置である。

機能性ファイバの開発進捗とスマートロボティクス開発を統合することで、EPFL工学部、フォトニック材料&ファイバデバイス研究所の研究者は、多機能カテーテル形状ソフトロボットわ構築した。これらは、カテーテルとして使う時、その目的箇所へ遠隔誘導し、半自律制御で進む道を見つけることさえできる。「そのような拡張性があるソフトカテーテル構造を作るのはこれが初めてである。これは、複雑な機能を組み込み、潜在的に体内で操作可能である」と、研究の主席研究者、Fabien Sorinは説明している。研究成果は、Advanced Scienceに発表された。

研究チームは、光ケーブル製造で一般に使用される熱線引きプロセスでそのファイバを作製した。フォンデュから長いチーズストリング引は、それを固くさせるのと類似である。材料の選択が重要であった。伸ばすと元の形状に戻るエラストマー、エラスティックポリマは、好まれる候補である。柔軟になるだけでなく、それらは繊細な身体組織で病変を最小にできるほどソフトである。とは言え、論文の筆頭著者、Andreas Leberは、「歴史的に、熱線引き工程は、固い材料に限られていた。幸い、われわれのグループは、線引き後、エラストマー特性を維持できる一種のサーモプラスチックエラストマーを確認していた」と話している。

運動制御、センシング、薬剤デリバリ組込
その全長で多チャネル特性を備えた長いファイバを作製するためにチームは、線引きプロセスパラメタを微調整しなければならなかった。プロセスの重要な特性は、ファイバの連続線引きができる材料の粘性と、ファイバ内のチャネル崩壊の原因となる表面張力との相互作用だ」(Fabien Sorin)。

材料の特性、線引き速度、温度を適切にすることでチームは、マイクロメートルスケールでファイバ内に慎重に配置された連続チャネルを確実に作ることができる。これによりファイバにそのロボット機能が附与される。例えば、モーターを使ってチャネルに導入された1本あるいは複数の腱を引くことで医者は、身体の中でそれを誘導するためにファイバ端の方向を制御できる。これは、スマートカテーテルでは、確立されたアプローチである。

チャネルの他に、熱線引きプロセスを利用して、ファイバには様々な素子が取り付けられている。「腱だけでなく、ファイバは光ガイド、電極、マイクロチャネルを組み込むことができる。これらにより薬剤デリバリ、イメージング、電気的記録や刺激を可能にする。またロボットや医療アプリケーションに一般に使用される他のツールも組込可能である」とLeberは説明している。

これら機能素子は、自律的ファイバ形状ロボットへの扉も開く。「組込光ガイドによりファイバは視覚をもつ。通り道の障害孔などを全て自分で検出、回避できる」(Leber)。この取組に不可欠なものは、高度な制御アルゴリズムとソフトウエアユーザインタフェース。これらは、チームがラボで最初から開発した。

拡張性の高い製造
複雑に聞こえるかもしれないが、これらマルチマテリアルファイバは、製造は非常に簡単である。「われわれは光ファイバ製造技術利用する、これは非常に拡張性が高い。一晩で数100kmの光ファイバを製造できる。結果、われわれの製造アプローチは、新しい拡張性の高いアプローチで、前例のない先進的な機能を統合した、ソフトなカテーテルのような構造を作ることができる」とSorinは、話している。

遠隔制御カテーテルは、この新しいクラスのファイバベースソフトロボットが可能にする多くの既存の潜在的アプリケーションの一つにすぎない。「動作制御の腱ベースアプローチは、熱引きスマートカテーテル開発の最初のステップである。次のステップは、電気あるいは磁気作動モードに進む必要がある。また、そのようなファイバを臨床応用に一歩近づける絶好の機会である」と、Imperial CollegeのHamlyn Center for Robotic Surgeryグループリーダー、論文の共同執筆者、Burak Temelkuranは、話している。

スマートマットレス、ソフト人工装具、産業用ロボット
ソフトロボットファイバは、人間の身体外にも多くのアプリケーションがある。マットレスは、それらを装備して、睡眠品質をモニタできる、あるいは感知した圧力や生理学的パラメタに反応して材料特性を変えることができ、ユーザは睡眠の質を改善できる。そのファイバは、硬くなることで、関節への過剰な機械的ストレスに反応するソフトプロテーゼになる。また、産業あるいは環境センシングアプリケーションは、自己誘導ソフトロボットを実装することで、組込熱センサ、触覚センサ、視覚用の電気および光学系に基づいてナビゲートする。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)