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ナノテクノロジーでLEDを改善し安価に

October, 3, 2014, Philadelphia--プリンストン大学の研究チームは、LEDの輝度、効率、鮮明度を向上させる新たな方法を開発した。
 電気工学教授、Stephen Chou氏をリーダーとする研究チームは、新しいナノ構造を使い、有機材料で作製したLEDの輝度と効率を57%改善した。また、この方法は、今日最も一般的に使われている無機(シリコンベース)材料でできたLEDも同様に改善できると報告している。
 また、この方法はLEDディスプレイの画像鮮明度を従来アプローチと比べて400%改善する。
 Chou氏によると、新しいナノテクノロジーによって光を操作する仕方のルールを変えることができる。
 現在のLEDにはデザイン的な課題がある。その中でもまず、LEDの構造内に捉える光の量が減ること。LEDは効率で知られているが、実際にはLED内部で生成された光のほんのわずかな量しか外に出ない。
 実際、初歩的にLEDは生成した光のわずか2~4%しか放出しない。捉えられた光はLEDを薄暗くし、エネルギー非効率にするだけでなく、トラップされた光がLEDを熱くするのでLEDsが短命になる。「今日のLED製造の究極目標は光の取り出しである」とChou氏は言う。
 この問題への対処で、金属リフレクタ、レンズあるいは他の構造を加えることでLEDの光取り出しを増やすことができる。従来のハイエンド、有機LEDではこれらの技術で約38%光取り出しが増やせる。しかしこの技術ではディスプレイが周辺光を反射するようになり、コントラストが低下し、画像がかすむ。対策として、ディスプレイに光吸収材料を加えると、この材料がLEDからの光を吸収し、輝度や効率が半減する。
 Chouのチームが提案しているソリューションはPlaCSH (plasmonic cavity with subwavelength hole-array)というナノテク構造の考案である。研究チームによると、PlaCSHは光取り出し効率を60%向上させる、従来のハイエンド有機LEDよりも57%高い効率だ。同時に、PlaCSHはコントラストを400%改善する。高輝度にすることで熱の問題も解消する。
 PlaCSHの背後にある物理学は複雑であるが、構造は相対的に簡単である。PlaCSHは約100nm厚の発光材料の層を内部キャビティに持つ。片面は薄い金属膜で作られている。キャビティのもう1つの面は、微小サイズの金属メッシュでできている。これは15nm厚。個々のワイヤは約20nm幅、中心間が約200nm離れている。
 PlaCSHは、LEDから光を外に導く働きをするので、視聴者に集まる光が増える。このシステムは従来の壊れやすい透明電極と置き換えることもでき、現在のほとんどのディスプレイと比較して遙かに柔軟である。
 メーカーにとってのもう1つの利点はコスト。PlaCSH有機LEDはナノインプリントでできている。これによって新聞を印刷するようにナノ構造を作製することができる。