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Science/Research 詳細

深紫外光を透過する新たな電極材料を開発

January, 5, 2023, 東京--東京都立大学大学院理学研究科の廣瀬靖教授、東京大学大学院理学系研究科の長谷川哲也教授(研究当時)、長島陽大学院生、筑波大学数理物質系の関場大一郎講師らの研究グループは、ルチル型の結晶構造を持つ二酸化スズ(SnO2)と二酸化ゲルマニウム(GeO2)の固溶体に微量のタンタル(Ta)を添加すると、深紫外光に対して優れた透明導電性を示すことを明らかにした。
 さらに、実用的な深紫外LED材料である窒化アルミニウム上に低抵抗な薄膜を形成することにも成功した。これらの成果は、深紫外光エレクトロニクスデバイスの高効率化や産業応用につながると期待される。
 研究グループは、代表的な酸化物半導体で、実用的な透明電極の母材料の一つでもある二酸化スズ(SnO2)に、結晶構造が同じでより大きなバンドギャップをもつ二酸化ゲルマニウム(GeO2)を固溶することで、深紫外光に対する透過率を向上できると考えた。はじめに、パルスレーザー堆積法により、SnO2とGeO2の混合比を変えた薄膜をサファイア基板上に成長したところ、GeO2の割合が70%以下の範囲でルチル型結晶構造をもつSn1-xGexO2薄膜が成長した。また、期待していた通り、GeO2の割合が増えるにつれて深紫外光に対する透過率が上昇することを確認した。
 次に、この固溶体薄膜に電気伝導性を付与するためのドナー不純物として、微量のタンタル(Ta)を添加したところ、GeO2の割合が約30%以下の薄膜において高い電気伝導性が発現した。添加するTaの量を最適化したSn1-xGexO2薄膜の深紫外光に対する透明導電性は、スズ添加酸化インジウムやアンチモン添加酸化スズなどの実用的な透明電極よりも優れており、既知の材料の中でも最高レベルだった。

透明電極材料を光エレクトロニクスデバイスに応用するためには、デバイスに用いられる半導体の上に高性能な薄膜を形成する必要がある。研究グループは実用的な深紫外LED材料である窒化アルミニウム上にTa添加Sn1-xGexO2薄膜を成長することを試みた。窒化アルミニウム上にTa添加Sn1-xGexO2を直接成長した場合、結晶性が悪く電気伝導性の低い薄膜しか得られなかったが、厚さが約10 nmのSnO2膜をシード層として挿入することで、サファイア基板上と同程度の透明導電性を示す薄膜の成長に成功した。

研究の意義と波及効果
 Ta添加Sn1-xGexO2は、深紫外光に対する透明導電性が優れていることに加えて、実用的なLED材料である窒化アルミニウム上にも形成できる点が特長。研究成果によって、LEDをはじめとする深紫外光エレクトロニクスデバイスの高効率化と、衛生・医療・半導体加工などの産業応用につながることが期待される。
(詳細は、https://www.tmu.ac.jp)