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EPFL、フォトニックチップで光増幅

December, 23, 2022, Lausanne--EPFL研究チームは、シリコンチップ上で新しい光増幅原理を実証する光集積回路を開発した。それは、LiDAR、海洋横断ファイバ増幅器、あるいはデータセンタ通信などの光信号に利用可能である。

光ファイバ内光信号の量子限界増幅を達成する機能は、ほぼ間違いなくわれわれの情報社会の根底にある最重要技術の中に入る。光通信では、1550nm波長帶の選択は、石英光ファイバの最小損失だけではない(2008年ノーベル物理学賞で認められた開発)。それとともに、これらの信号を増幅する方法の存在であり、これは大洋横断光通信達成にとって極めて重要である。

光増幅は、実質的に、通信など全てのレーザベース技術で重要な役割を担っている。例えば、データセンタでは、サーバ間の通信、また大陸間の大洋ファイバリンク、新興技術コヒレント周波数変調連続波(FMCW) LiDARで使われる。FMCW LiDARは、遠くの物体を高速、以前よりも高精度に検出、追跡できる。今日、エルビウムなどの希土類イオンベースの光増幅器、III-V半導体は、実世界のアプリケーションで広く用いられている。

これら2つのアプローチは、光遷移による増幅に基づいている。しかし、光信号増幅の別のパラダイムが存在する。進行波パラメトリック増幅器である。これは、小さなシステム「パラメタ」、伝送ラインの容量、あるいは非線形性などを変えることで信号増幅を達成する。

光パラメトリック増幅器
光ファイバの本質的な非線形性も進行波光パラメトリック増幅器に利用できることは1980年代から知られていた。その利得は、原子的、つまり半導体遷移とは独立である。それはブロードバンドであり、実質的にどんな波長でもカバーできる。

パラメトリック増幅器は、微小入力信号の影響を受けない、すなわち、単一の設定で、最弱信号と大きな入力パワーの両方を増幅するために使える。最終的に、利得スペクトルは、導波路形状最適化と分散エンジニアリングにより調整可能である。これは、標的波長とアプリケーションにとって膨大な設計柔軟性となる。

非常に興味深いことに、パラメトリック利得は、従来の半導体あるいは希土類ファイバでは届かない、普通ではない波長帯で得られる。パラメトリック増幅は、本質的に量子限界であり、ノイズレス増幅さえ可能である。

シリコンの限界
その魅力的な特性にもかかわらず、ファイバのパラメトリック増幅器は、シリカの弱いKerr非線形性のために度を超す非常に高い励起パワーを必要としている。過去20年、集積フォトニックプラットフォームの進歩が、シリカファイバでは達成できない、効果的なKerr非線形性を著しく強めた。しかし、連続波動作増幅器は達成されていない。

「連続波領域での動作は、単なる‘学問的業績’ではない」と、EPFLのフォトニクス&量子計測研究所長、Tobias Kippenbergは言う。「実際、どんな増幅器の実用的な動作にも、それは重要である。いかなる入力信号でも増幅できることを意味するからだ。例えば、光エンコードされた情報、LiDARからの信号、センサなど。時間とスペクトルの連続性では、進行波増幅は、現代の光通信システム、光センシングや測距の新興アプリケーションにおける増幅器技術の実装成功にとって極めて重要である」。

フォトニックチップのブレイクスルー
 KippenbergグループのDr Johann Riemensbergerをリーダーとする新しい研究は、連続波領域で動作するフォトニック集積回路をベースにした進行波増幅器の開発により、その課題に対処した。「われわれの成果、集積非線形フォトニクスとかつてない低導波路損失における10年以上の研究取組の頂点である」とRiemensbergerは、面としている。

研究チームは、サイズ3×5 mm2のフォトニックチップ上に初の進行波増幅器を構築するために2メートル長を上回る、超低損失SiN PICを使った。チップは、連続領域で動作し、通信波長帯で7dBネットゲイン・オンチップ、2dBネットゲインファイバ・ツー・ファイバである。SiNのオンチップ・ネットゲインパラメトリック増幅は、先頃、Victor Torres-Companyとチャルマーズ大学(Chalmers University.)のPeter Andrekson グループも達成した。

将来、研究チームは精密リソグラフィ制御を使って200nm以上のパラメトリック利得帯域の導波路分散を最適化する。また、SiNの基本的吸収損失が非常に低い(0.15dB/m)ので、さらなる製造最適化により、チップの最大パラメトリック利得は、励起パワーわずか750mWで、70dBを超え、最良のファイバベース増幅器のパフォーマンスを超える。

「そのような増幅器のアプリケーション領域は際限がない。一般的な通信帶を超えて信号を広げることができる光通信から、中赤外、可視光レーザや信号増幅、LiDARあるいは、古典的信号、あるいは量子信号のプローブ、センシングや調査まである」(Kippenberg)。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)