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Caltech、針形状のレーザによるイメージング技術

December, 20, 2022, Pasadena--光音響顕微鏡(PAM)は、レーザ光を使って組織で超音波振動を誘導する比較的新しいイメージング技術。これら超音波振動は、それらを処理するコンピュータとともに、超音波イメージングと全く同じように組織の構造画像を作成するために使える。

過去数年、医療工学、電子工学Bren教授、Lihong Wangは、PAM技術を開発してきた。これは脳の変化する血流をイメージングし、ガン組織を検出、さらに個々のガン細胞さえ特定できる。

しかし、高分解能(光分解能)PANの一つの制約は、狭い被写界深度だった。一度に、組織の薄い層(1~2nm分解能で約30µm)にフォーカスできるだけである。デバイスが見ている面の上または下の何かを見るには、その面の上または下に再びフォーカスする必要がある。

Nature Photonicsの論文で、Wangと研究チームは、PAMの新しい変種、針形状ビーム光音響顕微鏡、NB-PAMの開発について説明している。これは、以前に達成可能なよりも約14倍被写界深度は大きい。つまり、NB-PAMは、リフォーカスすることなしにサンプル3D画像を生成でき、凹凸面のサンプルの画像も優れている。

「顕微鏡スライドを使う必要なしで組織サンプルを研究するなど、アプリケーションによっては、高い空間分解能で凹凸面のイメージングを必要とするものもある。従来のPAMは、分解能と被写界深度間のトレードオフに取組み、これは、われわれの新しい技術によって克服された」と論文の筆頭著者、医療エンジニアリングポスドク研究助手、Rui Caoは説明している。

NB-PAMは、長くて細い、つまり「針形状」のレーザ光ビームを用いることで上述のPAM技術で被写界深度を改善する。「ビームの光学特性におけるこの変化は、PAM技術の被写界深度を改善しようとする他の試行に関わる欠陥の一部、動作が遅くなる、あるいはコンピュータ処理パワーを多く必要とするなどを回避する。。

針形状ビームは、回折光学素子(DOE)という特殊部品を利用して作製される。うわべだけ見ると、DOEは、微小なガラスシートのようだが、実際には、その表面に精密なパタンが刻み込まれた溶融シリカである。そのパタンが、イメージングに使用される光ビームを再形成する。ビームが、伝播軸に沿って鋭い点に集束しないで、代わりに細長い首に引き伸ばされる。結果的に、より広範囲の被写界深度で対象を鮮明にイメージングできる。

被写界深度の向上は、2つの方法で研究者が実証した。UVレーザを使った新鮮な臓器サンプルのイメージングとブルーレーザを使ったマウスの脳血管系の生体内イメージングである。

「この技術は、手術中に組織サンプルの研究に新たな機会を提供する。これによりガン細胞の完全除去、正常細胞の最大限の保存が可能になる。将来、手術室への移転は、研究の自然な道である」とWangは説明している。
(詳細は、https://www.caltech.edu/)