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MEMSセンサでモノリシック集積のためにレーザベースSi結晶化

December, 1, 2022, Aachen--微小電気機械システム(MEMS)は、センサとしての実力を10億回も発揮している、スマートカー、携帯電話、ミニインスリンポンプなどである。
 これらMEMSを将来、さらに強力にするためにFraunhoferILTの研究チームは、Fraunhofer ISIT よびISTとともに、CMOS適合堆積、レーザ結晶化プロセスを開発した。他の一般的なプロセスと違い、この新しいプロセスは、配線やハンダ結合の必要性をなくしている。これは、大幅にコンポーネントのサイズを縮小し、センサのパフォーマンスを強化する利点である。

われわれは、安全で信頼できる自動車走行をMEMSセンサに負っている。センサが、多くの自動車操作の重要なパラメタを記録するからである。MEMSセンサが、エアバッグ、アンチロックブレーキ、横滑り防止機構など、多くの車輌システムを制御することを可能にしている。加速度などを計測するためにMEMS慣性センサもスマートフォンなどのコンシューマ製品に数十億組み込まれている。MEMSセンサユニットが、これらのタスクを信頼度よく、安全に実行できるように、シリコンキャリアユニット(ウエファ)上の電子のASICと統合される。

しかし、温度に敏感なCMOSトランジスタと集積回路付近の周囲温度が450℃を上回るかも知れないので、結晶化シリコン製のMEMSセンサは、従来の高い製造温度のために、先ず分離して製造される。次に、それらを配線とハンダ接続、あるいはウエファボンディングプロセスにより回路と接続する。「しかし、従来のインタコネクション技術は、比較的大きなスペースを必要とし、MEMSのさらなる微小化を阻んでいる」とFraunhofer ILT、薄膜加工グループのFlorian Fuchsは、言う。このため、結晶シリコンでできたMEMSは、ASICに直接構築できない。製造プロセスにおける温度不適合性のために、センサのさらなる微小化とパフォーマンス強化は困難である。

敏感なシリコン層の穏やかな結晶化
 従来の接合技術を使う代わりにFraunhofer ILTは、レーザベースプロセスを利用している。これは、結晶シリコンMEMSセンサを温度に敏感な回路上に直接(モノリシックに)構築することができる。プロジェクトは、Fraunhofer ISTとISITによるシリコン層堆積、Fraunhofer ILTによる選択的レーザ結晶化、Fraunhofer ISITによるセンサ層の設計とマイクロエレクトリック加工に焦点を当てている。研究チームは、アモルファスシリコン層が、すでにウエファ上に450℃以下の温度で回路を保持し、高成長率で作製されていることを利用している。レーザは、このシリコン層を結晶化するだけでなく、それが含むドーパントを活性化する、したがって、適切な電気伝導性を保証する。次に、センサユニットは、古典的マイクロエレクトリック製造プロセスを使ってさらに加工される。

3空間方向で効果的な放熱
レーザ照射を使って高温でシリコンを結晶化するとき、その融点以下で、結晶化は空間的、選択的、非常に素早く起こる(ミリ秒の下の方)。この方法では、目標温度管理との関連で、そのプロセスは、層材料で機械的応力を最小化するが、下層基板の敏感なエレクトロニクスに損傷を与えない。数10µm径の集光レーザビームで、段階的に全表面をスキャンするようにミラーでガイドされ、シリコンは結晶化される。この空間的選択プロセスでは、熱は3空間方向に効果的に除去される。これは、そのプロセスと代替フォトニックプロセスと違うところである。例えばフラッシュ露光(フラッシュランプ)。ここでは、加工されるエリアが非常に大きいので、熱は、1方向へ放熱される。

「エネルギーは、少量で素早く導入されるので、下層の回路の破壊閾値よりも実際には上の温度で、レーザ加工によりシリコンの固体相結晶化を達成する。局所的加工時間が短いので、回路は、それでも損傷を受けることはない」とFraunhofer ILT、薄膜加工グループ長、Dr. Christian Vedderは説明している。新開発のレーザ工程は、シリコン層の電気抵抗を4桁以上も下げ、0.05 Ω*cmの値に落とした。10µm厚の層では、この値は、シート抵抗50 Ω/sqに相当する。容量加速度センサのための典型的な指構造のMEMSセンサは、これらの層から作製可能である。

モノリシックMEMS集積の利点
「結晶シリコン層は、ASICウエファのCMOS適合条件下で製造できるので、われわれはMEMS-IC集積の新たな可能性を開いている。もはやCMOS製造プロセスを変更する必要がないからである」とFraunhofer ILT研究者、Fuchsは話している。プロセスの制約が除去されるので、MEMSとICは、独立に開発できる。したがって、開発時間とコストを大幅に削減できる。集積密度増に加えて、そのプロセスは、配線接続やボンドパッドを除去するので予想される寄生干渉変数低下、電磁干渉場に対するシールド改善につながる。これは、信号品質やセンサのドリフト挙動へプラスの効果を与える。

自動車産業、医療技術、消防署向けに興味深いアプリケーション
 ここで得た知見は、複数の方向で拡大、開発できる。例えば、多様な層厚、あるい他の添加材料の様々なセンサタイプの特殊要件にそのプロセスを適用する。「われわれのチームが製品のために開発したプロセスを生産的な方法で利用する産業ユーザを探している」(Fuchs)。

微小化と組み合わせて改善された性能の展望によりMEMS技術は、今日のMEMSシステムではまだ達成できないような他の分野のアプリケーション領域にも魅力的になる。1つの考えられるアプリケーションは、自動運転分野である。そこでは、非常に高精度の加速度センサが、トネル内あるいは駐車ガレージ内でGPS信号受信ギャップをブリッジできる。そのプロセスは、医療技術にも興味深い可能性をもつ。例えば、温度センサをヘッドフォーンに組み込み、得られたデータを利用して患者をモニタする、あるいはパンデミックと闘う。加えて、微小化された、高精度加速度MEMSセンサは、火災ビル内の消防士の正確な位置把握に役立ち、緊急事態要員の安全性向上に役立つ。

(詳細は、https://www.ilt.fraunhofer.de)