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水素研究強化のために設計された新しいレーザベース測定器

October, 7, 2022, Washington--ルレオ工科大学(Luleå University of Technology)の研究チームは、超高速レーザを使って水素の温度と濃度を精密測定する分析機器を開発した。この新しいアプローチは、宇宙船や航空機で使用するための、よりグリーンな水素ベース燃料の研究の前進に役立つ。

「この機器は、拡散、混合、エネルギー移送、化学反応などの動的プロセスをプローブする強力な機能を提供する。これらのプロセスを理解することは、より環境に優しい推進エンジン開発の基盤である」とルレオ工科大学、研究チームリーダー、Alexis Bohlinはコメントしている。

Optics Expressに発表された論文で、Bohlinと、デルフト工科大学(Delft University of Technology)、アムステルダム自由大学(Vrije Universiteit Amsterdam,)のチームは、水素を研究するために新しいコヒレントラマン分光計について説明している。それを可能にするセットアップは、短パルスレーザからのブロードバンド光を幅広い波長を含む極短スーパーコンティニウムパルスに変換するものである。

研究チームは、このスーパーコンティニウム生成が同じタイプの厚い光学ウインドウの背後で行われることを実証した。光学ウインドウは、水素ベースのエンジンの研究のために使用する高圧チャンバーにあるもの。これは重要である。超広帯域励起生成のための他の方法は、この種の光学ウインドウがなければ機能しないからである。

光をとりいれる
再生可能水素リッチ燃料で動く航空宇宙エンジンの開発に大きな関心が寄せられている。持続可能性だけでなく、このような燃料は、達成可能な最高の比推力、エンジンにおける化学反応がどのように効率的に推力を生み出すかの基準となる。しかし、水素ベースの化学的推進システムを高信頼にするのは極めて難しい。これは、水素リッチ燃料の反応性増加が、燃料の混合燃焼特性を大幅に変えるからである。これは、フレーム温度の増加と点火遅延時間の短縮となる。また、ロケットエンジンにおける燃焼は一般に制御が非常に難しい。宇宙飛行中に超高圧と高温に直面するからである。

「サステイナブル打ち上げと航空宇宙推進システムの技術進歩は、実験とモデリングの間のコヒレント相互作用に依存している。しかし、そのモデルを検証するための信頼度の高い定量的データ生成に関しては、まだいくつかの課題が存在する」(Bohlin)。

障害の1つは、実験が通常、閉じられた空間で行われることである。光学ウインドウを通じた光信号の入出伝送が制約を受ける。このウインドウのために、コヒレントラマン分光学に必要なスーパーコンティニウムパルスが、ガラスを透過すると伸びる。この問題を克服するために研究チームは、厚い光学ウインドウを通してフェムト秒パルスレーザを伝送する方法を開発し、次にレーザ誘起フィラメンテーションというプロセスを使ってそれを、反対側でコヒレントのままのスーパーコンティニウムパルスに転送した。

水素炎の研究
新しい測定器を実証するために研究チームは、スーパーコンティニウム生成に理想的な特性を備えたフェムト秒レーザビームを設定した。チームは、次に、それを使って、水素分子を励起し、その回転遷移を計測することでコヒレントラマン分光法を行った。チームは、幅広い範囲の温度と濃度で水素ガスのロバストな計測を実証し、水素リッチ燃料を燃やしたときに見られるものと同じ、水素/空気の拡散フレームも分析した。

研究チームは、その計測器を使って乱流水素炎の詳細な分析を行っている。燃焼プロセスについて新たな発見を目指している。その方法を研究、ロケットエンジンのテストに採用する目的で研究チームは、その技術の限界を探求しており、わずかに加圧された密閉ハウジングで水素炎によりそれをテストすることを考えている。