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ロチェスタ大学、光回路として有望なプラズモニックナノワイヤ

September, 10, 2014, Rochester--材料の新たな組合せで、同じ微細ワイヤに沿って電気と光を効率的に伝えることができる。これはデジタル情報を光の速度で伝送できるコンピュータチップ作製に向けて一歩前進と言える成果である。
 ロチェスタ大学とチューリッヒのスイス連邦工科大学の光学・材料研究チームは、銀のナノワイヤと二硫化モリブデン(MoS2)単層で構成される基本モデル回路をOSAのOptica誌に発表した。
 研究チームは、ナノワイヤの表面で「プラズモン」と言われている電磁波を励起するためにレーザを使い、ワイヤ遠端でMoS2片が強く発光することを確認した。反対方向へ行くと励起された電子は緩和するので、電子はワイヤに集められてプラズモンに戻る、放射光は同じ波長だった。
 「プラズモンとナノフォトニックICに利用できる原子厚の材料との間に明白なナノスケールの光と材料との相互作用を確認した」とロチェスタ大学量子物理学、量子オプティクス准教授、Nick Vamivakas氏はコメントしている。
 同大学院生、論文の筆頭著者、Kenneth Goodfellow氏によると、一般に残りのエネルギーの約1/3はプラズモンがワイヤに沿って移動する数µm毎に失われるが、同氏は「周回後も十分なエネルギーが残っていることに驚いた」と言う。
 フォトニックデバイスは電子デバイスよりも遙かに高速であるが、光を集光するデバイスが電子回路ほどに微細化できないので、かなり大きくなる。この新しい成果は、非常に小さなサイズで光を導波し、信号強度を維持すると言う点で期待できる。
 グラフェンの発見以来、研究者たちは2D材料の世界の活用を急速に進めてきた。こうした材料はバルク形態では分からないように独自の特性を備えている。
 グラフェンと同様にMoS2は弱い力で相互接続した層でできているので、簡単に分離できる。バルクMoS2では、シリコンやGaAsなど従来の半導体と同じように電子とフォトンが相互作用する。MoS2は層が薄くなるにしたがい、電子とフォトン間のエネルギー転移が一段と効率的になる。MoS2の望ましいフォトニック特性の要点は、エネルギーバンドギャップの構造にある。その材料の層数が少なくなるにつれて、バンドギャップは間接から直接に移行し、これによって電子がフォトンを放出することで簡単にエネルギーバンドを移動することができる。グラフェンは、バンドギャップがないので、光放出では非効率である。
 同じ集積回路上でエレクトロニクスとフォトニクスを統合すると、モバイル技術のパフォーマンスと効率が飛躍的に向上する。研究チームによると、次のステップはLEDで初期段階の回路を実証することになる。