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アップサイクルプラスチックで活気づくクローズドループAM

June, 30, 2022, Oak Ridge--米国エネルギー省オークリッジ国立研究所(ORNL)の研究者は、捨てられたプラスチックを3Dプリンティングで再利用し、価値を付加するアップサイクリングアプローチを開発した。直ぐに適用でき、スケーラブルな方法は、世界的にプラスチック廃棄物を減らし、プラスチック製造に関係するCarbon放出を削減するクローズドループ戦略を導入する。

Science Advancesに発表された研究成果は、汎用プラスチックを産業用3Dプリンティング法に適合する、より堅牢な材料にアップサイクルするための簡単なプロセスを説明している。

チームは、自動車部品からテニスボール、LEGOブロックまで、日常生活製品に利用されている一般的な熱可塑性材料、共重合樹脂(ABS)をアップグレードした。ABSは、溶融フィラメント製造(FFF)の一般的な供給材料であり、3Dプリンティングに最も広範に使われているものの一つである。アップサイクルバージョンは、強化された強度、強靱さ、化学耐性を自慢にしており、FFFに魅力的なる。標準的なABSでは達成できないような、新しい、より高性能のアプリケーションに適合する。

ポリマアップサイクリングは、世界的に増加を続けるプラスチック廃棄物の蓄積という問題への対処で重要な役割を果たす。約4億トンのプラスチック廃棄物が毎年生まれており、主に使い捨てであり、最終的に埋め立てられる。世界的に、プラスチック廃棄物の10%以下がリサイクルされている。

「れわれは、リサイクリングに関連するコスト増と材料特性劣化という問題を克服する基本的な発見を必要としている。われわれの目標は、プラスチック廃棄物を再利用して、新しいプラスチックを生成する代わりにもっと価値のある材料作る、簡単に採用できる戦略を開発することだった」とORNLケミカルサイエンス部、論文の主筆、Tomonori Saitoは、コメントしている。

チームは積層造形に的を絞った。これは、従来の製法よりもリソース効率が高く、役に立つ、鋳造や一体成型では製造が難しい複雑な3D構造を達成できる。FFFは、この産業では最大シェアを構成し、グローバル市場の約70%である。

「FFFのために優れた特性の新しいリサイクル材料を開発することは、プラスチック製造に大きな影響を与え、AM機能を拡張するチャンスとなる」とORNLのSungjin Kimはコメントしている。

FFFプリンティングは、3D構造のスレッドを形成するために加熱されたノズルから押出できる材料を必要とする。つまり、ロープを渦巻くように層ごとに構築する。熱に反応する熱可塑性プラスチック材料として、ABSは、そのプロセスによく適合している。簡単に流れ、素早く硬化して、強力な剛構造になるからである。しかし、スレッドがスタックして結合する仕方には本質的な弱点がある。優れた特性を備えた新しい原材料の開発は、FFFにとって高いパフォーマンスのアプリケーションを促進するが、これらは設計が難しかった。

チームは、ABSの化学組成をvitrimer、つまり熱可塑性プラスチックの加工可能性およびリサイクル性を、一般にFFFには適合していないエポキシのような熱硬化性のメカノケミカル特性と統合する一種のポリマに変換する化学を「クリック」した。その合成物は、広く利用されている医療用化合物を使用する。これは、熱硬化によりマイルドな条件下、シングルステップで混合される。

結果は、アップサイクルABSは、強化された耐溶剤性とともに、標準ABSの約二倍の強靭さと強度を示している。

研究者は、カブトムシの翅をモデルにした複雑な3Dプリントされた形状構造の材料の優れた圧縮強度を実証した。

「耐溶剤性は、価値の付加であった。われわれが、リサイクリングシナリオで一般に出会う混合、分類されていないプラスチック廃棄物から改良ABSを簡単に分離できるからである」(Saito)。

チームは、様々な溶剤で混合プラスチック廃棄物を溶かした。各実験でアップサイクルABSは、その構造を維持した。それに対して、ABSを含む全ての他のプラスチックは完全に溶けた。

Kimによると、アプローチは非常に用途が広い。「リカバーアップサイクルABSは、FFFに何度も再利用可能である。特性の損失は極めて少ない。それは混合および標準ABSとの統合も可能であり、ブレンドとして直接プリントも可能である」。

マルチパスアプローチにより、標準、アップサイクル、あるいはブレンドABSのどんな組み合わせも含む混合ABS廃棄物のリサイクルとアップサイクルの両方が可能になる。全てがFFFに適合しており、プリンティングに先立つ分離は不要であるが、広い製造アプリケーション向けに有用な材料の選別目的では簡単に分離することができる。

「この取組は、潜在的に価値と性能が高い製造プラスチック製品のクローズドループを実証している。これには、AMの最も利用しやすい領域の1つで既存のプラスチック廃棄物だけを利用する」(Saito)。
(詳細は、https://www.ornl.gov)