コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

超弾性を持つ3Dプリント形状記憶合金を開発

June, 9, 2022, College Station--レーザ粉末床溶融、3Dプリンティング技術は、製造業、特に複雑な形状のニッケル-チタン形状記憶合金の製造で可能性がある。この製造技術は、バイオメディカルや航空宇宙分野のアプリケーションには魅力的であるが、ニッケル-チタン形状記憶合金を使う特殊なアプリケーションに必要な超弾性を示すことは滅多になかった。3Dプリンティングプロセス中に材料に加わる変化、欠陥形成が原因で、3Dプリントされたニッケル-チタンに超弾性が現れなかったからである。

Texas A&M Universityの研究者は先頃、レーザ粉末床溶融により形状記憶合金を作製することで優れた張力超弾性を紹介した。これは、3Dプリンティング文献に報告されている最大超弾性を約2倍にしたものである。

この研究は、Acta Materialia誌に掲載された。

ニッケル-チタン形状記憶合金には、様々アプリケーションがある。熱あるい加えられた応力が除去されるとそれらが元の形状の戻ることができるからである。したがって、バイオメディカルや航空宇宙分野で、ステント、インプラント、手術器具、航空機の翼で利用できる。しかし、これらの材料を開発し、適切に製造するには、機能特性を特徴づけ、マイクロ構造を検査するために広範な研究が必要になる。

「形状記憶合金は、それの高温形状を記憶できるスマート材料である。それらは多くの方法で利用できるが、形状記憶合金を複雑な形状に製造するには、材料が確実に所望の特性を示すように微調整が必要である」と材料科学・工学部、論文の筆頭著者、Dr. Lei Xueは言う。

レーザ粉末床溶融は、ニッケル-チタン形状記憶合金を効果的、効率的に作る積層造形技術であり、素早い製造、プロトタイピングのパスを提供している。この技術は、ポリマ3Dプリンティングと同様、レーザを使って金属あるいは合金粉末を層ごとに溶融する。層ごとのプロセスは、利点がある。従来の製造では不可能な複雑な形状のパーツを作れるからである。

「3Dプリンタを使い、われわれは基板上に粉末を広げ、次にレーザを使って粉末を溶融し、1枚の完全層を形成する。この層形成を繰り返し、所望の構造が形成されるまで同じまたは異なるパタンをスキャニングする」(Xue)。

残念ながら、ほとんどのニッケル-チタン材料は、現在のレーザ粉末床溶融プロセスに耐えられない、大きな熱勾配や酸化による脆弱性が原因で多孔性、反り、あるいは層間剥離となることがよくある。加えて、レーザは、プリント中の蒸発により材料の組成を変える。

この問題に対処するために研究チームは、以前の研究で作製した最適化フレームワークを利用した。これは、欠陥のない構造や特殊な材料特性を達成するために最適プロセスパラメタを決めることができる。

このフレームワークで、また組成の変化や改善されたパラメタで、研究チームはニッケル-チタン部品を作製した。それらは一貫して、プリントされた条件(製造後の熱処理なし)で室温で6%の張力超弾性を示した。

3Dプリンティングで増強超弾性形状記憶合金を作製できるとは、その材料が適用された変形への対処可能性が増したということである。これらの優れた材料を開発するために3Dプリンティングを利用することは、製造プロセスのコストと時間の削減になる。

将来的に研究者は、バイオメディカルや航空宇宙アプリケーションで、その発見がプリントされたニッケル-チタン形状記憶合金の利用増につながる期待している。

「この研究は、所望の機械的、機能的特性を備えたニッケル-チタン形状記憶合金のプリント方法のガイドとして役立つ。われわれが結晶学的構造とマイクロ構造を調整できれば、これらの形状記憶合金が利用できるアプリケーションはもっと多くなる」とXueは話している。

(詳細は、https://engineering.tamu.edu)