コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

既存の方法よりも8倍安価、20倍高速、角膜潰瘍の診断と処置法の開発

May, 2, 2022, Tucson--アリゾナ大学、バイオメディカルエンジニアリング&光学教授、DK Kangは、今日のゴールドスタンダードよりも8階安価、20倍高速となる角膜潰瘍を診断、処置する方法を開発している。

眼の感染は、農村の農業社会では一般的である。農作業中に起こる角膜の擦過傷が、感染してキズになり、さらに潰瘍となりうる。これら角膜潰瘍は、失明や視覚障害の原因である。Lancet Global Health発行のデータによると、毎年世界で430万人の患者が出ている。

これら潰瘍の既存診断法は、高価で、侵襲的、時間がかかる。また農村地域の生活者が常に利用できる分けではない。

アリゾナ大学の研究者は、代替法に取り組んでいる。国立眼病研究所からの100万ドルの助成金の支援を得てポータブルデバイス作製に取り組んでいる。

アリゾナ大学のバイオメディカルエンジニア、光科学准教授、Dongkyun “DK” Kangは、同大学のBIO5 Instituteのメンバーと共に、スマートフォン共焦点顕微鏡を開発してきた。他方で、UKのマンチェスタ大学のシニア講師、Jaya Chidambaramは、インドの患者の角膜潰瘍の診断に共焦点顕微鏡を試していた。

Chidambaramは、Kangの研究を知り、同氏のローコスト、ポータブル技術が角膜イメージングに適用できるかどうかを知るために接触した。診断を高速化し、より手頃な価格に、また農村社会で利用できるようにするためである。両者は、ポータブル生体共焦点検眼鏡(PICO)を作製するコンセプトで協力した。

侵襲的イメージングを超えて
角膜潰瘍のための一次診断ツールは、スリットランプである。通常の眼の検査で使用されるデバイスで、光スリットを照射する。眼科医は、患者の眼の上で前後にそれを動かして問題を探す。しかし、かなり経験を積んだ眼科医でもスリットランプ試験だけから感染源を決められないことがよくある。今日のゴールドスタンダードは、微生物学的試験である。これは、角膜から、少しの部分を削り取り、それを数週間培養する。

Kangによると、それは理想的ではない。

「その種の検査は、低リソースの設定では、常に利用できるわけではない。潰瘍が急性である場合、1~2週間待つ間にさらに進行することがよくある。言うまでもなく、それは患者には侵襲的で苦痛をともなうプロセスである」

Chidambaramの臨床試験は、患者の眼の画像を撮るためにインビボ共焦点顕微鏡を使う必要があった。この方法は、マイクロバイオロジカル研究に比べると高速、正確、侵襲性が少ないが、欠点がある。共焦点顕微鏡は高価であり、可搬性がなく、角膜に直接接触する必要がある。その方法は、同日に結果を出すが、すでに炎症した患者の眼に顕微鏡が触れる実際のイメージングは、約30分かかる。

Kangとチームを組むことで、Chidambaramは、これらの課題の一部克服を期待している。

より広いエリアを高速スキャン
 現在、利用されている共焦点顕微鏡は、レーザ集束光で一度に1点だけを照射することで高分解能、高コントラストを達成している。レーザは、情報を集めるために各点を動き回り、全てのデータを統合して、それをデジタル化して非常に詳細な画像を作り出す。この高レベル分解能は重要であるが、要求される機械精度は多大な時間がかかる。医者は、画像の比較的小さなエリアを捉えられるだけである。デバイスが患者の眼に接しているときに眼の動きは、実際上、避けられないので、医者が、再度スキャンしなければならないエリアがあり、そのプロセスは、一層長くなる。また高価である。共焦点顕微鏡は、75000ドルにもなり、農村のクリニックでは、その利用は極めて限られる。

KangとChidambaramが取り組んでいる技術のカギは、それが点ごとではなく、ライン毎、つまり2Dでスキャンする点にある。PICOデバイスは、回折格子を利用して、光源を多色波長に分散する、プリズムを透過する光と同じことが起こる。回折は、1Dの点ではなく、2Dラインを照射する。したがって、遙かに大きな眼の領域が、画像品質を犠牲にすることなく、一度にスキャンできる。

「われわれは、その回折法を使ってスキャンし、組織の全エリアで画像を照射する。何も機械的にスキャンする必要がない。これによりスピードは20倍、コストは1/8になる」(Kang)

Kangの推定では、その方法は約2分かかる。ビームは、それほどの慎重な機械精度で動く必要がないので、一度で眼のより広い領域を簡単にスキャンできる。また、その全てが、直接角膜に接触すること泣なく行えるので、患者にとってリスクも不快も減る。デバイスはポータブルであるので、医者はデバイスを直接患者に適用して直ちに結果が得られる。患者は病院や診察室に出かける必要がない。

「PICOは、標準角膜イメージングツールとして採用されると強く信じている。幅広いヘルスケア設定で、それを利用できることで、世界的にアイケアが改善される」とKangはコメントしいる。
(詳細は、https://news.arizona.edu/)