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光インタコネクトを簡単に作れる新しいポリマ材料

April, 22, 2022, Tucson--アリゾナ大学の研究者は、新しいポリマ材料を開発した。ボードレベル回路あるいは光ファイバでチップベースフォトニックコンポーネントを接続するのに必要な光リンクの作製に理想的である。ポリマは、フォトニックチップと電気PCBの光ベースに相当する光プリント回路ボード(PCB)間のインタコネクトを簡単に作るために使える。

「研究チームが可能にしたこれら新しい材料とプロセスは、Siフォトニクスベースの強力な新しいフォトニックモジュールにつながる。また、それらは光センシングにも有用であり、AR/VR向けのホログラフィックディスプレイの実現にも役立つ」とアリゾナ大学、研究チームリーダー、Robert Norwoodは説明している。

シリコンフォトニクス(SiPh)技術により光ベースのコンポーネントが、微小なチップに集積できるようになっている。SiPhデバイスの基本的構成要素の多くが実証されているが、これらのコンポーネトを接続してより複雑なシステムを作る光接続を作製する必要がある。

Optical Materials Expressで、研究チームは、新しいポリマ材料を報告している。特徴は、UV光で調整できる屈折率と低光損失。これらの材料によりシングルモード光インタコネクトを乾燥塗膜材料に直接プリント可能になる。使うのはローコスト、高スループットリソグラフィシステムで、これはチップベースフォトニックコンポーネントを造るために使われるCMOS製造技術に適合している。

「この技術は、光インタコネクトの製造をより実用的にする。これは、インターネット、特にデータセンタをより効率的にする。対応する電気インタコネクトと比較すると光インタコネクトは、発熱を低減しながらデータスループットを増やす。これは、消費電力や冷却要件を下げる」とNorwoodは説明している。

光で配線を置き換える
研究チームは、研究者が以前に開発したS-BOCとして知られるビニルチオフェンノールポリマ材料系について詳細に説明している。その材料は、UV照射で変更できる屈折率を持つ。新しい研究では、チームは、S-BOCを部分的にフッ素化し、その光効率を改善した。新しい材料系は、FS-BOCと呼ばれ、多くの他の光インタコネクト材料と比べて光伝搬損失は低い。

「この材料でわれわれは、SmartPrintと言うプロセスを使って、様々な光PCB素子間、イオン交換(IOX)ガラス導波路などに直接光インタコネクトを描き込む。IOXガラス導波路は、われわれの協力者、コーニング(Corning Incorporated)のLars Brusbergが提供したものである。

SmartPrintプロセスを実行するために、FS-BOC膜は、フォトニックコンポーネントに直接適用される。機械的アライメントは一切不要。その光インタコネクトが、マスクレスリソグラフィシステムで作製されるからである。これは、コンポーネントを見てどこにインタコネクトが必要であるかを計算し、次に光露光を使ってポリマに光インタコネクトを描き込む。一時的にポリマ膜を90℃に加熱すること以外、追加加工は一切不要。製造アプローチがマスクレスであり、パタンの掻き込みは、新たなフォトマスクを作ることなく変更可能だからである。

コネクションの実現
新しい材料を実証するために、チームは、それらを直接IOXガラス導波路アレイに堆積した。これは、集積フォトニックデバイスに一般に使われているものである。次に、チームは、光が1つのIOX導波路から出て進行するのに必要な結合機能をプリント。光は、1つの導波路から出て新たに作製されたポリマインタコネクトに伝播し、次に、最初のIOX導波路に隣接する第2のIOX導波路に入る。

研究チームによると、そのポリマ光インタコネクトは良好に機能し、伝搬損失、結合損失とも低かった。つまり、インタコネクト内、あるいは他のコンポーネントとの間の光伝搬損失が非常に小さかった。

研究チームは現在、その材料の屈折率コントラストと高温パフォーマンスの改善に取り組んでいる。「より高い屈折率コントラストは、製造バラツキに対する材料の耐性を高め、一方、高温パフォーマンスは、インタコネクトが200℃を超える、ハンダリフロープロセスに耐えるために必要と考えられる。