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人工ニューロンとフォトニック回路を結合

April, 18, 2022, Wien--量子メムリスタは、人工知能(AI)と量子コンピューティングの間の失われた環である。

近年、AIはユビキタスになっている、スピーチ翻訳、画像認識、医療診断など。同時に量子技術は、世界最大のスーパーコンピュータの範囲を遙かに超えるコンピュータパワーを実証している。
 ウィーン大学(University of Vienna)の物理学者は、新しいデバイス、量子メムリスタを実証した。これは2つの世界を結びつけ、前例のない能力を解放する。National Research Council (CNR) とイタリアのPolitecnico di Milanoの協力で行われた実験は、単一のフォトンで動作する集積量子プロセッサで実現された。研究成果は、”Nature Photonics”に発表された。

全てのAIアプリケーションの中心には、ニューラルネットワークという数学的モデルが存在する。これらのモデルは、ヒトの脳の生体構造、相互接続されたノードからヒントを得たものである。われわれの脳が、常にニューロン間の接続を再配置することで学習するように、ニューラルネットワークは、その内部構造を調整することで数学的にトレーニングできる。最終的に、それらは人間レベルのタスクができるようになる。人の顔認識、診断のための医療画像の解釈、自動車の運転でさえできる。ニューラルネットワークに関わる計算ができるデバイスの集積は、素早く、効率よく、学術と産業の両方で、主要な研究焦点となった。

その分野の大きな変革をもたらすものの1つは、2008年のメムリスタの発見だった。このデバイスは、過去の電流の記憶に応じて、その抵抗を変える。したがって、その名はメモリー・レジスタ、つまりメムリスタである。その発見から直ちに、研究者は(多くの他のアプリケーションの中で)メムリスタの独特の挙動が、神経シナプスの挙動に驚くほど似ていることに気づいた。したがってメムリスタは、ニューロモルフィック(神経形態学的)アーキテクチャの基本的な構成要素になった。

研究チームは、メムリスタと同じ挙動をするデバイスを設計できること、同時に量子状態に作用し、量子情報をエンコードし転送できることを証明した。言い換えると、量子メムリスタである。そのようなデバイスの実現は、挑戦的である。メムリスタのダイナミクスが、一般的な量子の挙動と相反する傾向があるからだ。

シングルフォトン、つまり光の単一量子粒子を使い、2つまたはそれ以上のパスの重ね合わせで同時に伝播する、その独特の能力を活用することで、物理学者は、その課題を克服した。実験では、シングルフォトンが、ガラス基板にレーザで描いた導波路に沿って伝播し複数のパスの重ね合わせでガイドされる。これらのパスの1つは、デバイスを通るフォトンの流れを計測するために使われる、また複雑な電子フィードバックスキームで、この量が他方の出力で伝送を変調し、したがつて、所望のメムリスタ挙動の達成となる。量子メムリスタの実証だけでなく、研究者は、量子メムリスタによる光ネットワークを使って、古典的および量子的タスクの両方で学習できることを示すシミュレーションを提供しており、量子メムリスタが、AIと量子コンピューティングの間の失われた環であることを示唆している。

「人工知能内の量子リソースの全潜在力を解放することは、量子物理学とコンピュータサイエンスにおける現在の研究の最大課題の1つである」と”Nature Photonics”論文の筆頭著者の一人、Michele Spagnoloは言う。ウィーン大学、Philip Waltherグループは、量子リソースを利用し、量子コンピテーションからスキームを借用することで、ロボットの学習が速くなることを最近実証した。新しい成果は、量子人工知能が現実になる未来への一歩前進である。
(詳細は、https://medienportal.univie.ac.at)