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NIST、水素処理ファイバでUVレーザビームに対処

August, 14, 2014, Gaithersburg--研究者は、水素が光ファイバのパフォーマンスを変えることを何年も前から知っており、伝送や光学デバイスにおけるレーザ光生成にさえこの知見を用いることがあった。NISTの研究チームは、この水素「処置」を実用ファイバに施し、安定した、ハイパワーUVレーザ光を数100時間伝送する光ファイバを造った。研究チームは、この水素処理ファイバが、量子コンピューティング実験における論理動作でエラーを低減すると見ている。
 光ファイバは一般にUV光を伝送することできない。短波長の光はファイバ中の添加物や不純物と相互作用し、いわゆる「感光」損傷を起こしビーム強度が著しく低下するからである。水素分子が、この損傷に対処することが示されている。
 NISTの研究チームは、空洞の格子で囲まれた溶融シリカからなるソリッドコアの2種類のファイバをテストした。この空洞は、伝搬されるレーザビームの形状を維持する結晶構造を形成している。ファイバに、標準大気圧の100倍の水素ガスを4~6日間注入。水素がファイバコアに拡散した後、数日間ファイバにUVレーザを照射して硬化した。
 NISTの研究チームは、そのファイバにUVレーザ光を通してテストした。313nm波長で125mWの出力でも、ファイバには、全く感光損傷が生じなかった。これは、研究グループの量子コンピューティング実験が必要とするビーム強度の数倍のレベルである。水素注入とUV光による硬化の組合せにより、この種の損傷に対して長期的な耐性が生まれるようである、と論文は指摘している。また、伝搬されるレーザ光の損失も極めて少ない。
 比較のために、NISTの研究チームは水素処理していないファイバもテストした。313nm波長、100mWの光伝送は4時間でゼロになり、水素処理の効果が確認された。
 研究チームによると、水素処理したファイバ、幅広い範囲の赤外、可視光、UV光の伝送に使える。イオンをトラップするためにレーザ光を伝搬すると、そのファイバは迷光やレーザビームポインティングの変動を抑制し、離れた光テーブル間でUV光伝搬に使える、と論文は指摘している。