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東京工業大学、超狭帯域赤外放射を実現、新しい赤外光源の実現が可能

January, 21, 2022, 東京--東京工業大学 物質理工学院の森川淳子教授他の共同研究グループは、分子を誘電体層にもつ光吸収メタ表面を構築し、分子振動由来の熱放射の増強に成功した。これにより、従来の熱放射デバイスをはるかに超える超狭帯域赤外放射材料を確立した。今後は赤外センサの有効な光源や放射冷却材料としての展開が大いに期待される。

研究内容
金属薄膜―誘電体―金属ナノ構造からなる材料は、光吸収メタ表面あるいはプラズモン完全吸収帯と呼ばれ、金属薄膜とナノ構造が特定の波長の光と共鳴して光を吸収する。この時、誘電体層に強い電場の局在が発生する。この局在電場中に分子が存在すると光-分子結合が発生し、例えば光吸収の増強などが起こる。
 また、Gustav Kirchhoffが1860年に提唱したKirchhoffの熱放射の法則によれば、光吸収効率と熱放射効率は等価であることを示していることから、光吸収の増強は熱放射の増強へとつながる。

今回誘電体層に設置する分子として、耐熱性高分子であるポリイミドを金の上に製膜し、その上部に半導体加工でナノ構造を形成させた。ポリイミドは中赤外の波長域に狭帯域で特徴的な分子固有のスペクトルを示すことが知られている。メタ表面の共鳴スペクトルとポリイミドの吸収の重なりが大きくなると、ポリイミド由来の吸収ピークが増大していき、100倍以上の吸収増強を観測することに成功した。また、2つのスペクトルの重なりが大きくなると強結合と呼ばれる現象が発現し、新たな分子固有のスペクトルが形成されることを見出した。
 このメタ表面を加熱して放射スペクトルを計測。その結果として反射吸収スペクトルと良い一致を示す放射スペクトルが得られた。この特性として、±60度の範囲でほぼ一定の放射強度を示し、250度の高温まで分子層も安定して存在し長時間にわたって一定の放射が得られることを示すことに成功した。

研究成果は、英国王立化学会の国際論文誌「Journal of Materials Chemistry C」(12月10日付)に掲載された。

研究グループ
東京工業大学 物質理工学院の森川淳子教授、サウリウス・ヨードカジス特任教授(オーストラリア スイバーン工科大学 教授、横浜国立大学 招聘特別教授)、横浜国立大学の西島喜明准教授、静岡大学の久保野敦史教授、産業技術総合研究所の劉芽久哉研究員他。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp)