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量子コンピュータのシンプルデザイン

January, 13, 2022, Stanford--スタンフォード大学の研究者は、単一原子を使ってフォトンを操作する比較的簡素な量子コンピュータの設計が、現在、利用可能なコンポ ーネントで構築できる、と発表している。

今日の量子コンピュータは、構築が複雑、拡張が困難、動作には星間空間よりも極低温にしなければならない。この課題により研究者を、フォトン、光粒子を使って動作する量子コンピュータの構築可能性の探究に向かわせた。フォトンは、ある場所から別の場所に簡単に情報を運ぶことができる、またフォトニック量子コンピュータは、室温で動作する。したがってこのアプローチは、有望である。しかし、フォトンで個々の「論理ゲート」の作製に成功したとしても、多数のゲートを作り、それらを高信頼に接続して複雑な計算を実施するのは難しい。

スタンフォード大学の研究チームは、Opticaで、直ぐに利用できるコンポーネントを使ってフォトニック量子コンピュータの簡素な設計を提案している。提案の設計は、レーザを使ってシングルアトム(単一原子)を操作する。すると、次に、「量子テレポーテーション」という現象によりフォトンの状態を変更できる。原子は、リセットされ、多くの量子ゲートに再利用可能であるので、多数の個別物理ゲートを構築する必要がなくなり、量子コンピュータを構築する複雑さが大幅に低減される。

「通常、この種の量子コンピュータを構築しようとすると、潜在的に数千の量子エミッタが必要になり、その全てを完全に見分けることができない。また、それらを巨大なフォトニック回路に組み込むことになる。このようなデザインに対して、われわれは、一握りの比較的簡素なコンポーネントを必要とするだけである。また、マシンのサイズは、走らせたい量子プログラムのサイズを増やさない」と論文の筆頭著者、応用物理学のPh.D候補、Ben Bartlettは説明している。

この非常にシンプルな設計では、数個のコンポーネントが必要なだけである。光ファイバケーブル、ビームスプリッタ、光スイッチペアと光キャビティ。

幸い、これらのコンポーネントはすでに存在しており、商用入手可能である。それらは継続的に改善されている。それらは、量子コンピュータ以外のアプリケーションで現在、使用されているからである。例えば、通信会社は、長年、光ファイバケーブルや光スイッチの改善に取り組んでいる。

「われわれがここで提案していることは、人々が、これらのコンポーネントの改善に投入してきた取り組みと投資に立脚することである。それらは、量子コンピュテーション向けでは、特別に新しいコンポーネントではない」とシニアオーサ、Shanhui Fanは、話している。

新しい設計
研究チームのデザインは、2つの主要部分からなる。ストレージリングと散乱ユニットである。ストレージリングは、通常のコンピュータのメモリと同じように機能する。これは、リングを周回する多数のフォトンを保有するファイバオプティックループである。古典的コンピュータで情報を蓄積するbitsと類似であるが、このシステムでは、各フォトンは、量子ビット、“qubit.”を表す。ストレージリングを周回するフォトンの方向は、qubitの値を決める、1ビットのように、0または1になる。さらに、フォトンは、同時に2つの状態で存在するので、個別フォトンは、同時に双方向に流れることができる、これは、同時に0と1の組合せが存在する値を表す。

 研究チームは、フォトンをストレージリングから散乱ユニットに向かわせることによりフォトンを操作できる。そこでは、フォトンは、シングルアトムを含むキャビティに進んで行く。そのフォトンは、次に、その原子と相互作用し、その2つが「エンタングル」する、これは2つの粒子が、どんなに離れていても、相互に影響し合う量子現象である。次に、そのフォトンは、ストレージリングに戻り、さらにレーザが原子の状態を変える。その原子とフォトンはエンタングルしているので、原子の操作は、それと対になっているフォトンに影響する。

「原子の状態を計測することで、オペレーションをフォトンにテレポートできる。したがって、われわれは1つの制御可能な原子qubitが必要なだけであり、われわれはそれをプロキシとして使って、間接的に他のフォトニックqubitsの全てを操作することができる」。

いかなる量子論理ゲートも原子で実行される一連のオペレーションにコンパイルできるので、原理的に、唯一の制御可能な原子qubitを使って、どんなサイズの量子プログラムでも走らせることができる。プログラムを走らせるには、コードは、一連の動作に変換される。これは、フォトンを散乱ユニットに向かわせ、原子qubitを操作する。原子とフォトンの相互作用の仕方を制御できるので、同じデバイスが多くの異なる量子プログラムを走らせることができる。

「多くのフォトニック量子コンピュータにとって、ゲートはフォトンを通過させる物理的構造である。したがって、走っているプログラムを変えたいなら、そのハードウエアを物理的に再構成することになる。この場合では、ハードウエアを変える必要はないので、マシーンに異なるセットの指示を出すだけでよい」とBartlettは説明している。

(詳細は、https://news.stanford.edu/)