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OIST、塩素が次世代太陽電池に果たす役割を原子レベルで解明

November, 9, 2021, 沖縄--沖縄科学技術大学院大学(OIST)のヤビン・チー教授が率いるエネルギー材料と表面科学ユニットの研究チームは、は、金属ハライドペロブスカイトと呼ばれる結晶材料を用いた新しいタイプの次世代太陽電池において、光吸収層の表面にある原子を画像化した。

英国の科学誌Energy & Environmental Science誌に掲載された研究成果によって、電力と安定性を向上させる塩素が、ペロブスカイト材料にどのように組み込まれているかが明らかになり、太陽光発電技術の分野における長年の謎が解き明かされた。

現在、ペロブスカイト太陽電池には、効率、スケールアップ、安定性などで課題があり、実用化には至っていない。ジャムシェイド博士は、高温、多湿、紫外線によってペロブスカイト材料が劣化し、光エネルギーを電力に変換する能力が低下すると説明している。

この10年あまりの間、研究者たちはこれらの課題の解決策を探った。
 ペロブスカイト太陽電池を改良する方法の一つとして、ドーパント(ペロブスカイト結晶層を作る過程で添加される微量の化学物質)の使用が挙げられる。

そのようなドーパントの1つに塩素がある。塩素は、ペロブスカイト太陽電池の寿命を延ばし、電力変換効率を高めることがわかっている。しかし、このドーパントがどのように作用するかは、これまで謎に包まれていた。
 研究では、研究チームが金属ハライドペロブスカイトであるヨウ化鉛メチルアンモニウムに塩素を添加した薄膜を作製したことで、同論争に決着がついた。研究チームは、最先端の走査型トンネル顕微鏡を用いてペロブスカイト層の表面を画像化した。
 研究チームは、純粋なヨウ化鉛メチルアンモニウムのペロブスカイト膜では見られなかった暗いくぼみが表面にあることを発見。
 共同研究者の中国の蘇州大学のWanjian Yin教授とZhendong Guo博士の理論計算の結果、ペロブスカイト結晶構造のこの暗いくぼみの部分では、ヨウ素よりもサイズの小さな塩素がゆるく結合したヨウ素に置き換わったことを示していると結論づけた。
 研究チームはまた、この暗いくぼみがペロブスカイト膜の結晶粒界付近で多く生じていることも発見。
ペロブスカイト層は均一な結晶格子ではなく、さまざまな結晶粒で構成されている。ペロブスカイトが本質的に不安定なのは、この粒界と呼ばれる結晶粒間に生じる亀裂によるものである。

「紫外線、温度、水分による劣化のほとんどは、この粒界で発生する。この粒界ではイオンの結合が非常に緩いためである」(ジャムシェイド博士)。

研究チームは、粒界の周りには塩素がより多く存在するため、表面のくぼみが少なく、材料の安定性と効率が向上したのではないかと考えている。

特筆すべきは、塩素の蒸着時間を変えてペロブスカイト膜内の塩素濃度を変化させると、材料の表面構造や電子物性も変化したという点。

蒸着時間が最短のときには、ペロブスカイト材料の表面に塩素が検出されなかったのに対し、最長のときには、塩素によってペロブスカイト上にイオンの層が1層追加され、電子物性が大きく変化した。

研究チームは、表面の塩素濃度が最適の約14.8%となる中間の蒸着時間、いわばスイートスポットを見つけ出すことに成功した。この塩素濃度で、ペロブスカイト材料は高い安定性を得ることができた。

次のステップとして、研究チームはこの最適濃度で塩素を添加したペロブスカイト層を含む太陽電池全体を製造する予定である。
(詳細は、https://www.oist.jp)