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微小レーザセンサが爆発物検出感度を高める

July, 23, 2014, Berkeley--UC Berkeley機械工学Xiang Zhang教授の研究チームは、光ベースプラズモンセンサの感度を著しく向上させる方法見いだし、微小濃度の爆発物でも検出できると言う。研究チームによると、テロリストの間で人気のある検出困難な爆発物でも検出できる。研究成果は、Nature Nanotechnologyに発表されている。
 研究チームは、センサを様々な爆発物でテストした。2,4ジニトルトルエン(DNT)、硝酸アンモニウム、ニトロベンゼンなど。デバイス、大気中化学物質をそれぞれ濃度0.67ppb、0.4ppb、4.2ppmで検出することに成功した。ppbとは、フットボールフィールドでの1枚の草の葉に相当する。
 論文の共著者、北京大学物理学助教授、Ren-Min Ma氏によると、この技術では、ハンドヘルド機器の爆発物検出チップが、爆発物の微小分子の空気中での微量気体を検出することができる。
 センサは、踏査されていない地雷に対するアラームとして開発することも可能。国連によると、地雷の犠牲者は年間15000~20000人。ほとんどが子供、女性、高齢者。
 ラボ実験で使われたナノスケールプラズモンセンサは、市場にある他の爆発物検出器よりも遙かに小さい。一種の半導体、硫化カドミウムでできており、中央にフッ化マグネシウム層を持つ銀シート上に置いている。
 デバイスの設計では、研究チームはたくさんの爆発物、特にニトロ化合物、例えばDNTなど、その他よく知られた類似のもの、TNTの化学組成を活用した。研究チームによると、不安定なニトロ基だけが化学物質を爆発物にするのではなく、それらは電子欠損という特性がある。この性質が、半導体の自然な表面欠陥を持つ分子の相互作用を高める。デバイスは、この相互作用の結果として起こる光信号において強度の高まりを検出することにより機能する。
 「爆発物の電子欠損が高ければ高いほど、その半導体センサとの相互作用は強くなる」とZhang研究室の前Ph.D学生、現東京大学化学准教授、Sadao Ota氏は指摘している。
 こうしたことから、研究チームは、このプラズモンレーザセンサが四塩酸ペンタエリストリトール(PETN)を検出できると考えている。PETNは、テロリスト好みの爆発性化合物。少量で強い威力があり、しかもそれはプラスチックなので、起爆装置に接続されていなければX線から逃れられる。
 「PETNは、DNTよりもニトロ官能基が多く、電子欠損が多いことが実験で分かった。したがってわれわれのデバイスの感度はDNTよりも遙かに感度が高いはずだ」(Ma氏)。
 そのセンサは、表面プラズモンセンサ技術の最新の成果である。これは現在、医療分野で病気の初期段階でバイオマーカー検出に使われている。
 光学センサの感度を向上することは従来、回折限界が障害になっていた。電磁波と表面プラズモン、金属表面の振動電子とを結びつけることで、研究者たちは光をナノサイズの空間に押し込んだが、光が金属表面で散逸するので、閉じ込めたエネルギーを維持することが課題となっていた。
 この新しいデバイスは、Zhang氏の研究室の表面プラズモンレーザに関する以前の成果をベースにしている。ここでは、この光の漏れを補償するのに反射器を使ってセンサ内部で表面プラズモンをあちこちに跳ね返している。音波がウイスパリングギャラリで部屋中を反射するのに似ている。それに、半導体の光利得を使う光エネルギーを増幅している。
 Zhang氏によると、増幅されたセンサは、現在使用できるパッシブな表面プラズモンセンサよりも、信号強度が遙かに強くなる。
 研究チームによると、このセンサは化学物質や爆発物の検出以外に、生物分子研究でも使える。