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顕微鏡CCTV、マラリア侵入の秘密を解明

October, 1, 2021, Parkville--最先端のビデオ顕微鏡によりWEHI研究者は、病気の重要な段階、マラリア原虫が赤血球にどのように侵入するかの分子的詳細を見ることができた。

研究チームは、ラティス光シート顕微鏡(LLSM)を使って、赤血球に侵入する個々の寄生虫の高解像度ビデオを撮影した。この研究は、マラリア原虫生物学について極めて重要な新情報を提供するものであり、切望されている新しい抗マラリア薬の開発に応用できる可能性がある。
 研究成果は、Natrue Communicationsに発表された。

致命的な寄生虫に注目
マラリアは蚊が媒介する病気であり、毎年、世界で40万人が犠牲になっている。マラリアの重篤な症状の多くは、感染した人の赤血球にプラスモジウム原虫の侵入、成長によって起こる、とWEHIのダイナミックイメージングセンタ長、Dr Rogersは説明している。

「寄生虫が赤血球にどのように侵入するかを正確に細部を理解することで、マラリアの寄生虫のライフサイクルのこの段階を阻止する新たな方法を解明し、切望されている新しい治療法につながる可能性がある」と同氏は話している。

「ラティス光シート顕微鏡(LLSM)を使って、マラリア原虫が赤血球に侵入した時に起こる複雑な細胞と分子の変化を追跡した。史上初めて高解像度、リアルタイム、ダイナミックにマラリア原虫の行動を捉えた」。

Evelyによると、その研究は、マラリア原虫の侵入について以前には分かっていなかった多くの側面を明らかにした。

「われわれが記録したビデオは、マラリア原虫が赤血球に付着した時にプッシュプル相互作用を示している。次に、閉じられたチャンバー、つまり液胞に入り、そこで成長、繁殖する。液胞が害虫由来か、ホストセル由来かどうかについて長い間論争があった。われわれの研究が、この問題を解決した。それが赤血球の膜から作られることを明らかにしたのである」と同氏は説明している。

ほとんどの抗マラリア治療とワクチンは、マラリアと赤血球の最初の結合を標的にしている。

「これらのプロセスをさらに詳細に可視化することで、われわれの研究は、いくつかの方法で、新しい抗マラリア治療の開発に行き着く。例えば、寄生虫の液胞が赤血球膜の成分に依存することが分かっているので、寄生虫のライフサイクルを阻止するための薬でこれらの成分を標的にできるかも知れない。ホスト主導アプローチは、マラリア原虫が急速に薬剤耐性を発展させる傾向をバイパスする1つの方法になりうる」とDr Rogersは話している。

「LLSMは、潜在的な新薬に阻止される寄生虫侵入の特別な段階を観察するための応用可能性もある。現在、追跡に非常に関心が高い領域である」。

細胞の新たな見方
LLSMは, 最先端のイメージング技術である。これにより研究者は、前例のない詳細さ、リアルタイムで細胞や臓器を可視化することができる。Dr Geogheganによると、LLSMは、細胞の研究方法を変えた。

「過去においては、実験のための顕微鏡の選択は、妥協だった。低解像度ビデオか、遙かに高精度の静画像。ビデオは、形状の変化や動きなどの動的プロセスを明らかにした。静画像は、細胞や分子がどのように機能するかについて、より詳細な情報を提供する」(Geoghegan)。

「LLSMによりわれわれは、細胞の高解像度ビデオを撮ることができるようになった。これは、生物学研究の多くの分野にとって革命的であった。われわれは、WEHIでLLSMをカスタム作製した。オーストラリアでは、この技術の初のバージョンである。この画期的顕微鏡によりわれわれは、このマラリア研究を含め、多くの研究分野で進歩を可能にした。これを達成するためにわれわれは、物理学、工学、生物学の専門家による学際的チームを編成した。また、この現在の研究の成果は、われわれのアプローチの正当性を証明している」(Geoghegan)。
(詳細は、https://www.wehi.edu.au)