コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

ハイパワーレーザのジッタを静める光イノベーション

August, 19, 2021, Berkeley--エネルギー省ローレンスバークリー国立研究所のBerkeley Lab Laser Accelerator (BELLA)センタは、革新的な光学システムを開発、テストした。これは前例のない正確さでハイパワーレーザの位置と指向角を精密計測、制御する。ビームを遮断したり、乱すことはない。新しいシステムは、科学界のユーザがハイパワーレーザを最大限利用する際に役立つ。

実験検証作業を行ったのは、UC Berkeley、博士課程候補、Fumika Isono。研究成果は、Cambridge University Press journal、High Power Laser Science and Engineeringに発表された。

「これは計測と制御における大きな前進であり、世界中のハイパワーレーザファシリティに利益をもたらす」とBELLAセンタの一部、Berkeley Lab’s Accelerator Technology and Applied Physics (ATAP)ディビジョンディレクタ、Cameron Geddesはコメントしている。

乱れない計測
要求の厳しいアプリケーションのユーザは、レーザビームが微小な規模で動き回ることを知っている。これは、最も制御されたラボ環境でさえも振動や変動性に反応して起こる。

「数µmでもターゲットを外すと、驚くべき科学と背景ノイズへの不要な付加との差になり得る」とIsonoは指摘している。

1/1000°以下の指向角オフセットが、同様に不要な複雑さになる。そこで、診断センサやフィードバックシステムが登場するのである。

これらのパラメタを正確かつビームを邪魔しないように計測するには、要領がある。従来の方法は、そのパルスを妨害することでビームパワーを著しく弱らせる(それは、いずれにせよ、高強度、ハイパワーレーザには難しい)、あるいはまた、供給されたビームを正確に計測しないので、不正確さに悩まされる。BELLA Centerの革新的アプローチは、主ビームをローパワーにした正確なコピーをスプリットし、モニタリングする必要がある。これは、ビームラインの特別設計最終光学部品の裏面から反射される。

この新しいアプローチの中核は、3つの主要な特徴を持つレーザアーキテクチャである。まず、それは1秒に5個のハイパワーパルスと1000のローパワーパルスを同時に供給する。すべてが同じパスをたどる。二番目に、ビームライン設計は、ハイパワーとローパワーがサイズとビームの開きで一致するように最適化されている。最後に、それは、表と裏の両面に特殊被覆を施した革新的な楔形リフレクタで反射ビームラインミラーの一つを置き換える。

主ビームのほぼ全てが、オプティク表面から反射されるが、それ以外の場合大した影響をうけることはなない。恐らく入力パワーの1%、ビームのほんの少しが前面を透過し、裏面で反射される。この「証拠ビーム」は、後続のオプティクスが何であれ、主ビームとほぼ並行に透過、伝播する。計測装置の簡単な設置には十分な分岐である。最終結果が証拠ビームであり、指向角と横方向の位置はが主ビームのそれらと強く相関している。

Isonoによると、結果値は「主レーザビームと干渉せず、極めて正確である」。

BELLA Centerにとっての利点
近未来の目標は、レーザの横方向の位置と指向角の能動安定化のためにフィードバックシステムの一部としてこの診断を使うこと。BELLA Centerで100テラワットレーザで予備研究は前途有望だった。ローパワー1kHzレーザパルストレインを能動安定化することでハイパワー5Hzレーザのジッタを除去する展望をマニュスクリプトは明らかにしている。レーザビームの振動や動きは、数10Hz規模で起こることが観察された。つまり実用的なフィードバックシステムの範囲内である。高出力レーザビーム供給の位置と角度の5倍の改善が見込める。

レーザプラズマ粒子加速器(LPAs)の開発は、BELLA Centerの主要ミッションであり、このイノベーションの潜在的な利点を裏付けている。LPAsは、荷電粒子を急速に加速する超高電界を生成する、これは広範なアプリケーションに、次世代のよりコンパクト、手頃な価格の加速器を約束するものである。LPAsは、細い中空管、「キャピラリ」内で加速するので、改善された駆動レーザビームの位置と指向角の制御から大きな恩恵を受ける。

BELLA Centerで、即時のアプリケーションの一つは、レーザ駆動プラズマ加速器(LPA)を利用して、自由電子レーザ(FEL)に電子ビームを供給すること。可視光よりも遙かに高エネルギー、短波長で、高輝度フォトンパルスを生成する装置。

「アンジュレータ、FELの中核にある磁気アレイは、電子ビーム受入に非常に厳しい要件を課す、つまりLPA駆動レーザ指向角および横方向変動に直接関係している」とIsonoは説明している。

提案のkBELLA、ハイパワーとkHz繰り返しレートを統合する次世代レーザシステムは、もう1つの見込のあるアプリケーション。

世界中のレーザ研究所からの関心が見込める。Bella Centerディレクタ、Eric Esareyによると、この研究は、レーザプラズマ加速に限定されない。「ハイパワーレーザ界の特別な要求に対処する。すなわち、大きな干渉なしで、ハイパワーパルスの相関ローパワーコピーを証明している。ハイパワーレーザが、ある程度の精度でなんらかのアプリケーションに供給される必要があるところでは、どこであろうと、この診断は大きな違いを生む。レーザ粒子衝突実験、あるいは、キャピラリ、あるいは小滴など、レーザとミクロン精度のターゲットとの相互作用が考えられる。 
(詳細は、https://newscenter.lbl.gov)