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Science/Research 詳細

量子操作で蛍光検出効率100倍に成功

August, 17, 2021, 東京--量子科学技術研究開発機構量子生命・医学部門量子生命科学研究所次世代量子センサーグループの五十嵐龍治グループリーダー、柳瑶美博士研究員、神長輝一研究員らは、群馬大学(学長 石崎泰樹)の花泉修教授、加田渉准教授らと共同で、細胞イメージングや極微量ウイルス検出などへの活用が期待される蛍光ナノダイヤモンドの検出効率を大幅に向上する新規イメージング手法の開発に成功した。

 蛍光を用いた生体イメージング技術は生命現象の解明に広く用いられている。また、ウイルス検査などの臨床検査等においても、蛍光検出は重要な基礎技術。しかし、自家蛍光など望ましくない位置にも発光が観察される「背景光」の存在により、偽陽性などの誤った結果がもたらされる場合がある。
 研究グループは、窒素-空孔中心(NVセンター))と呼ばれる原子配列の乱れを含むナノサイズの蛍光ダイヤモンド(蛍光ナノダイヤモンド)を蛍光試薬として使用し、レーザ光による量子操作を行いながら蛍光検出することで、背景光の影響を排除した超高感度蛍光イメージング技術を開発しました(特願2021-104440、104441(日本))。一般的な蛍光イメージングと比較して、高い背景光排除効果を発揮し、信号/背景光比(SBR値)にして100倍以上の性能向上に成功した。

 今回開発した手法の活用により、細胞内にわずかしか存在しない分子であっても特異的かつ高感度に検出することが可能。これまで観察できなかった少数分子の機能の解明や、病態に及ぼす影響の解析に役立つと考えられる。また、ウイルスを超高感度で検出する技術として近年注目される「量子診断プラットフォーム」にも、この技術をそのまま利用でき、ウイルス感染症の早期・迅速診断技術としての社会実装も期待できる。
研究成果はこの分野においてインパクトの大きい論文が数多く発表されている米国化学会発行の「ACS Nano」のオンライン版に2021年8月3日(火曜日)に掲載された。
(詳細は、https://www.qst.go.jp)