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Science/Research 詳細

バーゼル大学、マンガンは発光体になり、太陽光をより持続可能にする

August, 12, 2021, Basel--バーゼル大学の研究者は、太陽光を他のエネルギー形態に変換するためのより持続可能な発光材料と触媒の製造を探求する過程で重要なマイルストーンを達成した。安価な金属マンガンをベースにして研究チームは、有望な特性を持つ新しい種類の化合物を開発した。これまでは、主に貴金属化合物の特性だった。

スマートフォンのスクリーンや人工光合成のふめの触媒、例えば太陽光から燃料を生成する、これらは非常に稀な金属を含んでいることが多い。例えば、イリジウムは、OLEDsに使用されており、金あるいはプラチナよりも稀である。太陽電池に用いられているルビジウムも、稀な安定元素の一つである。これらの金属は、その希少性により、非常に高価であるだけでなく、化合物の多くは毒性でもある。

バーゼル大学のOlver Wenger教授と博士課程学生、Patrick Herrは、発光マンガン化合物の製造に初めて成功した。その化合物では、光照射によりルテニウム、イリジウム化合物と同じ反応が起こる。研究成果は、Nature Chemistryに発表された。マンガンを使用する利点は、その元素が、地球の中核にイリジウムよりも90万倍多く存在すること、また毒性が弱く、何倍も安価であること。

高速光化学
 現在、新しいマンガン化合物は、発光効率に関して、イリジウム化合物よりも性能が劣る。しかし、光駆動反応は、エネルギーおよび電子遷移反応など人工光合成で必要であり、高速に起こる。これは、その新しい化合物の特別な構造によるものである。これにより、マンガンから、その直接の結合物に対して光照射により即時電荷移動となる。この化合物設計原理は、すでにある種の太陽電池で利用されているが、これまでところ、主に貴金属化合物の特徴であり、貴金属ではない銅ベースの化合物の場合もある。

不要な振動を阻止
光エネルギー吸収は、通常、貴金属化合物と比べると安価な金属でできた化合物では歪が大きくなる。その結果、化合物は振動を始め、吸収された光エネルギーの大部分が失われる。研究チームは、特注の分子成分を化合物に組み込み、マンガンを厳しい環境に置くことでこれらの歪と振動を抑制することができた。この設計原理は、結果としての化合物の安定性と、分解過程に対する抵抗を高める。

Wengerによると、今日まで、溶液中、室温で光り、これら特別な反応特性をもつマンガンによる分子化合物の開発に成功したものはいなかった。
「Patrick Herrと関係するポスドク研究者は、実際に、この点でブレイクスルーを達成した。それは、貴金属の領域以外に新たな機会を開くものである」。
 今後の研究プロジェクトでは、研究チームは、新しいマンガン化合物の発光特性を改善し、それを太陽電池で使用するために適切な半導体材料に固定する考えである。他の可能な改良には、マンガン化合物の水溶性変種が含まれる。これは、ガンの治療で使われる光線力学療法で、ルビジウム、イリジウムの代わりに使われる可能性がある。
(詳細は、https://www.unibas.ch/)