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Science/Research 詳細

THz帯で動作する、超高精度・広帯域の小型周波数カウンタを開発

July, 30, 2021, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、半導体超格子ハーモニックミキサを用いたテラヘルツ波用の周波数計測システムを開発し、電波の上限帯域を網羅する0.1 THz~2.8 THzという広帯域において精度16桁の計測を実現した。今回の開発により、小型・室温下で動作する広帯域・高精度なテラヘルツ周波数カウンタが実現したことになる。
 開発された技術は、未開拓周波数領域と呼ばれてきたテラヘルツ帯を次世代情報通信基盤Beyond 5G / 6Gにおける新たな電波資源として利活用するための計量標準技術。今後、Beyond 5G / 6G時代における電波産業などの様々なニーズに対応し、この技術をNICTで提供している周波数標準器の較正サービスに活用していく予定である。

開発成果
NICTは、テラヘルツ波の計量標準技術として、半導体超格子ハーモニックミキサを用いたテラヘルツ周波数カウンタを開発し、4オクターブを超える広帯域0.1 THz~2.8 THzにおいて精度16桁の計測を実現した。
 今回、超格子構造を持つ半導体ハーモニックミキサをキーデバイスとして採用することで、入力したマイクロ波帯の局部発振器信号を基にテラヘルツ基準を等間隔に多数生成し、それらを広範囲に分布した「精密な目盛り」にしてテラヘルツ波の周波数測定を実現した。従来システムで装置の小型化と運用コスト削減の障壁になっていた超短パルスレーザが不要となっただけでなく、原子時計からのマイクロ波標準信号を直接入力して使えるため、堅牢でより信頼性の高いテラヘルツ周波数の較正も可能になった。
 今回、テラヘルツ周波数カウンタの測定性能は、従来は不可避であった被測定テラヘルツ発振器の雑音に影響されないように設計・構築した評価系を使って確認した。その結果、このカウンタ1台だけで電波法で定義された電波の上限帯域を幅広く網羅しつつ、計測精度が16桁に到達することを実証した。これは、1 THzの電波周波数を100μHz(1 THzの1016分の1)以下の精度で決定できることに相当する。これらの性能は、小型かつ室温動作するテラヘルツ周波数カウンタの動作帯域幅と計測精度として、共に世界トップの性能である。

研究成果は、2021年7月19日(月)に、計量学分野のトップジャーナルである国際学会誌Metrologiaに掲載された。

(詳細は、https://www.nict.go.jp)