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NIST、可視光を片方向に通す新メタマテリアルを開発

July, 9, 2014, Gaithersburg--メタマテリアルとして知られる光を曲げる構造には、拡大を続けるその力の範囲にまだ知られていない特徴がある。NISTの研究チームは、銀、ガラス、クロムのナノ構造を作製した。
 近年、マイクロ波や赤外光を片方向のみに透過させるナノ構造の材料が設計されている。このような構造は光通信用途でも使える可能性がある。例えば、光信号を分けたり統合したりするフォトニックチップと統合することも可能だ。しかし、これまでに可視光の片方向伝搬を達成した研究はない。これは、既存のデバイスが可視光の短波長を操作できるほどに小さなスケールで製造できないためである。
 このような障害を回避するためにNISTの研究者、Ting Xu氏とHenri Lezed氏は、光を操作する2つのナノ構造を組み合わせた。これは、銀とガラスシート、金属格子を非常に背内間隔で交互に積み上げた多層ブロックとなっている。
 銀-ガラス構造は、「ハイパーボリック」メタマテリアルの例。これは、光の波が進む方向によって光の扱いを変えることができる。この構造の層はわずか数十ナノメートル厚であるので、このブロックは外からの可視光に対しては不透明である。しかし、光は、非常に狭い範囲の角度で、材料内部では伝搬できる。
 Xu氏とLezec氏は、ハイパーボリックメタマテリアルブロックを造るためにNIST NanoFabユーザファシリティで薄膜蒸着技術を利用した。コンピュータシミュレーションにしたがい、二酸化ケイ素ガラスと銀とで造る20層の極薄交替層からそのブロックを作製。外部の光を層状材料に誘導するために、研究チームはブロックに、一連のクロム格子を加えた。これらの格子は、赤と緑の入力光を曲げてブロック内で伝搬するように、狭いサブ波長の間隔を持っている。ブロックの反対側には、光を構造から元の方向とは違う方向に跳ね返すように別の格子を取り付けている。
 第2の格子は光を材料から退けるが、その間隔は第1の格子の間隔とはわずかに違っている。その結果、反対方向の格子は入力光を曲げすぎるか、あるいは銀-ガラス層内部で伝搬しないように曲げる。その構造をテストした結果、光は逆方向に対して順方向には30倍程度透過することが分かった。これは、これまで可視光で達成したものの中で最高の対比である。
 既存の方法を用いて造られる材料を組み合わせることが片方向への可視光伝搬達成の重要な点だった。銀-ガラスのナノ構造がなかったなら、格子は現在の技術で可能なよりももっと精巧に製造し調整しなければならなかっただろう、と研究チームはコメントしている。「この3段階の工程は実際に製造の制約を緩和するものである」とLezec氏は言う。
 将来的には、この新しい構造はフォトニックチップに集積できる。これにより、電気の代わりに光で情報処理ができるようになる。このデバイスは、バイオセンシング用途で微小な粒子の検出にも使用できると考えられる。
(詳細は、www.nist.gov)