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微小インジェクトセンサ、手術/インプラントなしで脳活動をモニタ

July, 27, 2021, Santa Cruz--UCSC研究チームは、身体に注入して光を使い非侵襲的に脳活動を追跡するナノスケールセンサを開発した。そのアプローチは、いずれ脳を研究し、手術、インプラントデバイスなしで、患者の脳機能を評価する新しい方法となる。

UCSCのBaskin工学部、Ali Yanik研究室は、NeuroSWARMという技術をOSA Optical Sensors and Sensing Congressで報告した。

「NeuroSWARMは、思考(脳の信号)を遠隔計測可能な信号に変換できる、高精度の脳と機械のインタフェース。これにより身体障害に苦しむ人々は、効果的に外部世界と相互作用し、ウエアラブル外骨格技術を制御して、身体の限界を克服できる。また、神経疾患の初期の特徴も取り出すことができる」とYanikは説明している。

そのアプローチは、ウイルス粒子に匹敵するサイズのシステム・オン・ナノ粒子プローブを使って脳内の電気活動をモニタする新しい方法を提供する。ニューロンは、電気信号を使って情報を相互にやり取りするので、これらの信号は、思考、記憶、動きにとって極めて重要になる。脳の電気活動をトラッキングする確立された方法は多いが、ほとんどが手術を必要とする、あるいは頭蓋を貫通して直接ニューロンと相互作用するデバイスをインプラントする必要がある。

研究チームは、その新技術をNeuroSWARM(Neurophotonic Solution-dispersible Wireless Activity Reporters for Massively Multiplexed Measurements)と名付けた。

そのアプローチは、電気信号を光信号に変換する人工のエレクトロプラズモニックナノ粒子を脳に導入する必要がある。これにより脳活動が、体外から光ディテクタで追跡可能となる。

そのナノ粒子は、エレクトロクロミックロードポリ(3,4—エチレンジオキシチオフエン)の薄い層を持つ63nm径の酸化シリコンコア、および5nm厚の金コーティングで構成されている。そのコーティングによりそれらが血液脳関門を超えるので、血流あるいは脳脊髄液に直接ナノ粒子を注入できる。

脳では、そのナノセンサは、電界の局所的変化に非常に高感度である。実験室のテストでは、NeuroSWARMの体外特性は、1000を上回るSNRを生み出すことができた。これは、単一ニューロンが発火する際に生成される電気信号の検出に適した感度レベルである。

「われわれは、電気生理学的信号の光検出に、エレクトロクロミックポリマ(e.g., PEDOT:PSS)の利用を先駆的に開発した。外部電界で可逆的に変調できる光学特性を持つことが知られているエレクトロクロミック材料は、スマートグラス/ミラーアプリケーションで通常に利用されている」(Yanik)。

NeuroSWARMは、逆操作ナノスケールのエレクトロクロミックにロードされたプラズモンアンテナと考えることができる。既知の電圧を印加する代わりに、その光学特性が、近傍のスパイキング起電セルによって変調される。したがって、NeuroSWARMは、単一のナノ粒子デバイスで遠隔で生体電気信号を検知できる。それは、ナノスケールサイズに、ワイヤレス給電、電気生理学的信号検出、データブロードキャスティングを詰め込んでいる。

NeuroSWARM粒子で生成される光信号は、波長1000-1700nmの近赤外光を使って脳の外から検出できる。そのナノ粒子は、電源や配線不要で、無期限に機能することが可能。

他の研究者は、電界に反応するように設計された量子ドットを使って類似のアプローチを研究していた。その2つの技術を比較して、NeuroSWARMが、4桁大きな光信号を生成することを研究チームは確認した。量子ドットは、同等の信号を生成するために、10倍高い光強度、100倍多くのプローブを必要とした。

「われわれは、この斬新な技術の初期段階にあるに過ぎないが、優れた基盤に基づいて前進する。次の目標は、動物で実験を始めることである」とYanikはコメントしている。

(詳細は、OSA Optical Sensors and Sensing Congress)