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Fraunhofer ENAS、スマートフォン用微小分光計を開発

July, 12, 2021, Chemntz--偽薬を認識。自分で水サンプルをテスト。空気品質をチェック。将来、こういうことの全てがスマートフォンを使って、迅速、コスト効果よく、直接的にできるようになる。そのプロセスは、Fraunhofer Institute for Electronic Nano Systems ENASの分光計を使って可能になる。重量は、わずか1グラム。従来技術を使って、1ユーロ程度でこのコンポーネントを量産することを目的にしている。

Webサイトは、薬局よりも遙かに低コストで薬を提供することがある。地元の店で買った薬が期待通りの品質であることは確認できるが、オンライン安売り品は、効果がないものをつかまされたり、異なる構成の偽造品かどうかを疑うことがよくある。将来、Fraunhofer ENASの研究者が現在、開発しているチップ分光計を使用し、われわれは迅速かつ簡単に発見できるようになる。Fraunhofer ENASマルチデバイス集積部長、Dr. Alexander Weißは「われわれの赤外分光計は、重量がわずか1g程度、1ユーロ以下のコストで製造する予定である。これは、例えばスマートフォンに組み込める」と説明している。比較のために現在、赤外分光計は数kg、製造コストは数千ユーロ。可搬デバイスはわずかに軽いが、それらは量産に適していない。コストとサイズに関して、また操作と結果の分析に関してだ。量産市場における他の重要な要件、その技術は、過渡に複雑であってはならない、つまり、操作しやすいこと、それに製法は、量産に適していなければならない。

様々なアプリケーション
潜在的なアプリケーションは、偽薬に限られない。「われわれの分光計は、あらゆる種類の用途に役立つ。人や動物用に食品の成熟、あるいは微生物繁殖の評価、インテリアや車輌の空気品質計測、効果的な天候制御あるいは空気、水または食材の汚染物質検出」。従来の赤外分光計と同様、この分光計は、赤外範囲の光を放出することでこれを実行する。様々な波長の光は、チューナブルフィルタで分割され、集積導波路によりディテクタに誘導される。ナノ構造のグレーティングがピルから反射される光をバンドルし、テストのために、集積導波路に送られる。空気品質がテストされる場合、光は平坦面に集積された特別な吸収セルに入る。どの波長で、どの程度の光がディテクタに届くかをプロットすると、フィンガープリントと同様、各サンプルで異なる特性のスペクトルが得られる。様々な成分をもつ偽薬は、したがって元の薬の成分とは異なるスペクトルを持つ。

しかし、研究チームは、どのように分光計のサイズを縮小できたのだろうか。劇的に縮小し、しかもなお同じ汎用機能を達成するのはどうしてか。「従来の分光計は、多かれ少なかれ、個別の十分に集積されたコンポーネントで構成されている。一方、われわれの場合は、ビームガイダンス、個々の波長の分離、検出機能を1つの面に集積した。したがって、われわれは、これをインプレイン分光計と呼んでいる」とWeißは説明している。

使いやすく、安価に製造
その分光計が、例えばスマートフォンに組み込めるなら、われわれは、サイズ以外についても考慮しなければならない。操作は簡単、直感的でなければならない、ユーザに明確な評価を提供しなければならない。研究チームは、すでにコンセプトを開発している。スマートラーニングアルゴリズムである。「多くの人々がその技術を使うと、システムは素早く学習する」とWeißは言う。ユーザは、スマートフォンを取り出して、特別なアプリで分光計をスタートさせるだけでよい。それを薬剤の1つにかざせばよい。また、計測プロセスを通じてガイドする指示を見ることもできる。分光計は、自動的にスペクトルを生成し、ソフトウエアが、それを予め専門家がデータベースに入れた参照スペクトルと比較する。そのシステムを使う人が多ければ多いほど、比較のための可能性はますます大きくなる。ユーザは、結果を見るだけ、例えば「元の薬剤」を見るだけでよい。もう1つの限界点は、分光計の製造コスト。研究チームは、最初からこれも頭に入れていた。「われわれは、従来のマイクロシステム技術を使って安価に量産できるように分光計を設計した。メーカーは、大規模製造ラインで標準的なプロセスを使うことができる」とWeißは言う。

研究チームは、すでに最初の分光計チップを作製し、概念実証を準備した。多くのさまざまな特性評価が議題に予定されている。個々のコンポーネントは、予想通りに動くか。導波路に結合される光は、規定通りに転送されるか。これらの特性評価に必要な装置は、ドイツマイクロエレクトロニクス研究ファブが資金を提供している。これらの研究が予定通りに進むと、分光計は、二年程度で量産されることになる。
(詳細は、https://www.enas.fraunhofer.de)