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GaAs薄膜PVセル、レーザ光で68.9%の記録的変換効率

July, 7, 2021, Freiburg--フォトボルテイック(PV)デバイスは、屋根やオープンスペースで古典的なソーラセルアプリケーションの他に、レーザ光で効率的なパワー伝送にも利用できる。
 48th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,で、Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems ISEの研究者は、モノクロマティック(単色)レーザ光下のPVセルで記録的な68.9%の変換効率がいかにして達成可能かを紹介した。これには、研究チームは、GaAs製、裏面に反射、導電ミラーを適用した極薄PVセルを利用した。

PVセルは光を電気に変換する。入力光は、例えばGaAs半導体材料でできたセル構造で吸収される。吸収された光は、プラスとマイナスの電荷が解放され、電荷は次に前と後のセルコンタクトに伝導されて電気を生成する。この「光起電力効果」が特に効率的になるのは、入射光のエネルギーが、半導体材料固有の、いわゆるバンドギャツプエネルギーの直ぐ上にある時である。したがって、非常に高い効率が理論的に可能になるのは、光源としてのモノクロマティックレーザが適切な半導体化合物材料と一致しているときである。

この新しい形式のエネルギー転送、光による電力転送では、レーザエネルギーを空気または光ファイバのいずれかを介して、PVセルに供給する。その特性は、電力とモノクロマティックレーザ光の波長に一致している。ガルバノ絶縁パワーサプライを必要とする従来の銅線を介した電力伝送と比べて、光による電力伝送システムが特に有利なアプリケーションがある。例を挙げると、稲妻あるいは防爆、電磁環境両立性、あるいはワイヤレス電力伝送である。

Fraunhofer ISE研究チームは、GaAsベースIII-V半導体PVセルに858nmのレーザ光を露光させることで記録的な変換効率68.9%を達成した。これは、光の電気への変換で今日まで達成された最高効率である。この成功は、特殊な薄膜技術によって可能になった。ここでは、ソーラセル層が先ず、GaAs基板に堆積され、続いてそれが除去される。残った半導体構造の裏面にわずか数µm厚の伝導性、高反射ミラーを貼りつける。
 
「この薄膜アプローチは、効率で2つの明確な利点がある」とFraunhofer ISE研究チーム長、Dr. Henning Helmersは説明する。「まず、フォトンがセルにトラップされ、バンドギャップ近傍でフォトンエネルギーの吸収が最大化される。同時に熱化と伝送損失が最小化されるので、セルはより効率的になる。2つ目に、放射再結合により内的に追加生成されたフォトンがトラップされ,効果的にリサイクルされる。これは、実効キャリア寿命を延ばすので、さらなる電圧増加となる」。

研究グループは、金製とセラミックと銀の組合せに光学的に最適化された裏面リフレクタを持つ薄膜PVセルを調べた。後者がベストの結果を示した。n-GaAs/p-AlGaAsヘテロ構造がアブソーバとして開発された。これは、再結合により特に低い電荷キャリア損失を示している

「これは素晴らしい結果である。太陽光発電以外の産業用アプリケーション向けPVの可能性を示している」とFraunhofer ISE研究ディレクタ、Andreas Bett教授は話している。光パワー伝送には多様なアプリケーションがある。例は、ウインドタービンの構造モニタリング、高圧線のモニタリング、航空機タンクの燃料センサ、あるいはパッシブ光ネットワーク、体外からのインプラント光供給、あるいは,IoTアプリケーションのワイヤレス電力供給。
(詳細は, https://www.ise.fraunhofer.de)